2022年5月に設立された「アパテックモーターズ」の大熊CAR。このEV、製造は中国メーカーが担っているのだが、なんと福島県大熊町に工場を新設し製造を開始するという。軽自動車サイズで日本でのウケも良さそうな大熊CARの全貌に迫る!!
※本稿は2023年3月のものです
文/加藤博人、写真/加藤博人、加藤久美子
初出:『ベストカー』2023年4月26日号
サクラも戦々恐々!? 月9800円でEVに乗れちゃう!! 中国の軽EVがコスパ最強説
■福島県大熊町でEVを生産?
アパテックモーターズ「大熊CAR」。ちょっとしかめっ面だけど、どこか可愛らしくて愛嬌あるフロントマスクが目を引く。日本や欧米メーカーではなかなか見ないデザインだが、今後は街中で見る機会が増えるのだろうか
東日本大震災から12年、廃炉作業が進む福島第一原子力発電所を擁する福島県大熊町は復興の道を歩んでいる。
その大熊町で3月12日、地域創生や復興に関する取り組みを紹介する「みんなで作ろうおおくま学園祭2023」が開催され、そこで展示された小型EVが注目を集めた。
その名は「大熊CAR」、東京都品川区五反田に本社を置く「アパテックモーターズ」が手がけている。
■地名を冠した小型EV、月額は9800円!?
着脱式の樹脂製ボンネットを持って満面の笑みを浮かべるのはアパテックモーターズの孫峰・代表取締役社長だ
2022年5月に設立された同社は「生産設備を持たない製造業」を意味する「ファブレスメーカー」で、EVの商品企画やデザイン、販売だけでなく、充電インフラの整備などを事業内容とする。
「大熊CAR」は同社が手がけた第一弾EVで、中国メーカーが開発・製造する車両の供給を受け日本向けに改修、販売する形をとる。だが、この小型EVで驚くべき点はそこではない。
アパテックモーターズによれば、「大熊CAR」は日本で製造を行う予定とのこと。そしてその工場を大熊町に建設するというのだから、なんとも信じがたい話だ。
生産を開始するまでは中国からの輸入となるが、すでに工場は建設準備段階にあり、もし実現するとなれば、「日産製フォルクスワーゲン・サンタナ」以来の「海外メーカー開発・日本生産の自動車」となるのではないだろうか。
展示された個体は基本的に中国で販売されているモデルだが、実際の日本向け仕様はボディの全幅を縮めた「軽規格EV」になるとのこと。
驚くのはその価格で、採算度外視の「月額9800円」でリース予定だ。すでに大手通販サイトの協力会社より500台ほど配送用小型EVとして先行予約も受けている。
■低価格だが装備は充実!
中国仕様車で日本のナンバーも取得完了(福島で展示された車両とは別個体)。日本仕様車の本格販売時にはボディ幅を縮め軽自動車枠で販売する予定だという
気になるスペックだが、バッテリーは日本製を含む数種類となる予定で、現時点で公表されている航続距離(NEDC方式)は200kmだ。
車両重量は795kgで、サスペンションは前・マクファーソンストラットの後・5リンクを採用する。徹底的なコストダウンのために手動サイドブレーキの採用、始動方法も物理キーを差し込んで回す方式で、古風なクルマ好きのマインドをつかむ要素にあふれているとも言える。
とはいえ、電動パワステにパワーウィンドウ、リモコンキー、タイヤ空気圧センサーなどの現代的な装備はしっかりと搭載するし、前後3点式シートベルトやエアバッグ、低速時衝突回避警報、ABS、そして後席用ISOFIXも備えているので、安全面も抜かりはない。
だが、乗り心地をはじめ、ドアの閉まり具合や充電口の造形、そしてリアゲートの開けにくさにはどうしても安さを感じた。アパテックモーターズは顧客の声を聞いて改善するとしており、実際に市場で投入された暁にはどんどん洗練されていくはず。これは期待大だ。
●大熊CAR・諸元表
・全長×全幅×全高:3380×1499×1610mm
・車両重量:795kg
・最低地上高:150mm
・モーター:永久磁石同期電動機
・バッテリー:リチウム電池
・最高出力:46ps
・最大トルク:10.4kgm
・駆動形式:RR
・サスペンション:F)ストラット式 R)5リンク式
・一充電航続可能距離(NEDC値):200km
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みんなのコメント
自動車産業も必ず同じ道を辿るだろう!
そうやって勢力伸ばして日本勢は負けると思うんだ。
普通に凄いと思ったけどなー。