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収納オタクかつ絶妙ハンドリングでフレンチネスを極めたプジョー・リフターを上陸直前チェック!

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収納オタクかつ絶妙ハンドリングでフレンチネスを極めたプジョー・リフターを上陸直前チェック!

ソリューションとしてのダイレクト感というか、目的に対する解答の率直さは、ドイツ車のそれとフランス車では異なる。前者が結果重視でスペック値となって見えやすいところに表れるのに対し、後者は目的を達せられるのは当たり前ながら、解として美しくシンプルでないと不十分、そんな節がある。A地点からB地点までアウトバーン的発想で、できるだけ速く快適に移動を済ませる術にかけて右に出るものがない、それがドイツ車なら、B地点に着くことはもちろん、移動そのものを愉しむことを目的とするのがフランス車といえる。では愉しむために何が要るか?

その回答のひとつが、仔細まで練り込まれた専用収納の数々に、痛快でファンな走りを組み合わせ、何を載せてどこまで行くかということにかかわる自在感を最大化したパッケージ。それがプジョー・リフターだ。

6リッター越え! 大排気量エンジンの快楽に身を委ねよう

プジョー リフター|PEUGEOT RIFETR

リフターのボディサイズは全長4403mm、全幅1848mm、全高1878mm。ホイールベースは2780mmとなる。価格は336万円から。

それにしても、欧州で商用車のベストセラーであるシトロエン・ベルランゴと兄弟モデルであるにも関わらず、プジョーはリフターを最初から乗用車だと言い張る。以前の初試乗の時も触れたが、308や5008らと共通で、近年の乗用車プラットフォームとして出色の出来映えを誇るEMP2に準拠しつつ、1.5リッターディーゼルのBlueHDI 130ps・300NmにアイシンAW製の8速ATという、PSAグループの最新パワートレインを載せたリフターは、内容的に商用車らしからぬところはある。今や大きくなったとはいえ、初代はBセグベースの商用車から始まったルノー・カングーの競合モデルだなんて、とんでもない・・・・という態度なのだ。

確かに、商用車の高い実用性を自家用車のアクティブ&ラージ用途に転じた「ワーク・スタイル」的なカングーと、リフターの潜在的ユーザーはカブらないのかもしれない。あくまで商用車オリジンにこだわる人は、むしろベルランゴの方が気になるだろうし、ミニバン以上の積載力とモジュール性に、SUVクロスオーバー的な冒険感をも加えたマルチ・パーパス・ヴィークル(MPV)というリフターの欲張りな成り立ちは、外観だけでなくプジョーお得意のi-コクピットにも表れている。この車体でこのステアリング、というところに違和感を覚える人は、ほぼ同じ内容ながらステアリングが並通りの径となるベルランゴがベターなのだろう。

プジョー リフター|PEUGEOT RIFETR

通常時の荷室容量はトノーカバー下で597リットル。後席をすべて倒せば最大2126リットルまで拡大し、現行プジョーで最大容量1862リットルの5008をはるかに上回る。

練りに練られた圧巻の収納ワザ今回は日本上陸直前のタイミングということで晩秋のパリ近郊、できるだけ日本版に近い仕様で試乗してみた。とはいえ本国のこと、1.5リッターのBlueHDi130というパワーユニットは同じながら、トランスミッションは8速ATではなく、6速MTだった。内装や収納についてはローンチ・エディションと同じとのことだったが、まずは収納スペースをひとつひとつチェックしていくだけで面白い。

プジョー リフター|PEUGEOT RIFETR試乗日の朝は小雨だったが、ほぼ正方形のリアハッチゲートを跳ね上げると、立ったまま使える巨大な雨宿りスペースが現れた。ジョルジュ・ブラッサンスの「傘」という、通り雨に遭った女性に傘で雨宿りを申し出て、そのスペースを「小さなパラダイスの片隅」と形容する唄をふと思い出した。ボディパネルは全体的にかなり素っ気ないプレス加工なのだが、武骨ながらもちょっと古典的なフランス式ギャラントリー(本来はレディファースト的なもてなし術)の気が感じられたのだ。そんな情緒は本来、大の男3名では望むべくもないのだが、貸出書類にサインするには役立った。

それにしても荷室容量は後列シートを畳まない状態で、シェルフカバーの下の容量だけでも775リットル。荷室の床の奥行だけで1m以上ある。本国では7シーターも用意されるが、日本仕様はひとまず5シーターとなった。シェルフは中段で上下2段に仕切れて、ガラスハッチ開閉でアクセスすることもできる。その開閉ボタンはリアのナンバープレート灯の少し右に配されている。

プジョー リフター|PEUGEOT RIFETR

パノラナミックルーフにも様々な収納スペースを確保している。写真のバッグインルーフでは14リットルの容量。

ついで荷室容量の拡張性だが、後席シートのヘッドレストから後ろ上方のスペースまで加えれば1355リットルで、フルフラットにこそならないが、後席シートを3座とも倒せば3000リットル、床の奥行は1880mmにもなる。助手席まで倒せば2700mmもある。スキーや自転車、サーフボードも楽々といったサイズ感のみならず、荷物の固定フックも床上に出っ張らずに低められているので、使い勝手はすこぶるよさそうだ。

ところがリフターの凄味は、単なる「広いスペース」自慢ではないところ。その好例が荷室上方に設えられた、耐荷重10kgまでの「吊り収納」だ。これは荷室側からは下にチルトダウンして開く格好で、後列シートからはスライド棚としてアクセスできる。帽子や自転車のヘルメット&グローブといった小物類をしまうのに向くだろう。

プジョー リフター|PEUGEOT RIFETR

リアシート頭上に設置されたリアシーリングボックス。リアシートからもリアゲートからも出し入れでき、容量は広めの60リッター。

ほかにも後列シートの頭上には、コード類などを入れられそうなカバー付き収納、同じくカバー付きで前列シートとそれ以降を仕切る、ドッグネット用の穴がある。目線の高さに目を移しても、前列シート背面に折り畳み式テーブルがあるし、センターコンソール後端のエアコン吹き出し口には、収納ポケットとUSBコンセントが備わる。

プジョー リフター|PEUGEOT RIFETR

11.8リットルを収納可能なグローブボックス。本来エアバッグが備わる場所だがルーフ上に移動させることによって実現した。

もうひとつ、後席シートの居住性についてだが、3座それぞれが独立しているものの前後スライド機能はない。サイドウインドウは全開にはできないものの8割方は下ろせるし、ロールシェードが備わる点は長距離行が快適になるディティールといえる。

プジョー リフター|PEUGEOT RIFETRしかしあらゆる諸元仕様の中でも、収納スペースこそが主役という、リフターのハイライトは天井だ。プジョー・シトロエンお得意のパノラミックサンルーフを縦に2分割するように、半透明の天井トレイが設けられているのだ。この14リッターの半透明トレイとT字型を作るように、前列シート頭上にはさらに18リッターのシェルフが組み込まれている。後者は不透明なので書類なども収まるだろうが、シェード開閉と連動して採光や明るさにも関わる半透明トレイは、何を置くかインテリアのセンスが問われそうだ。

プジョー リフター|PEUGEOT RIFETR

インテリアは最新のi-Cockpitを踏襲。8インチのタッチパネルとステアリング上から確認できるヘッドアップディスプレイを搭載し、良好な視認性を誇る。

そしてようやく前列シートとダッシュボード回りだが、ハードプラスチックとはいえ、カッパーとグレーのツートンによる内装は温かみがある。それにセンターコンソールのスライドカバー×2は、商用車ではありえない高級感すら漂わせる。メーターパネルの手前と奥、インフォテインメントスクリーンの奥にまでトレイやポケットが設けられ、ドリンク用ポケットもダッシュボードの両脇とセンターコンソール上の3カ所。偏執的といっていい充実ぶりだ。これだけの収納を使いこなすのは、どんなライフスタイルかと、想像をたくましくさせられる。

プジョー リフター|PEUGEOT RIFETR外観のボディパネルのシンプルさとは裏腹に、リフターが商用車じみていない理由は、モダンなチェック柄のツイードウール風のファブリック内装と、艶消しのカッパー色使いに依るところが大きい。これらがジャージのような化学繊維っぽさ丸出しの生地だと、途端に居心地の悪い、安っぽい空間になるのだ。

プジョー リフター|PEUGEOT RIFETR乗るとよくわかるMPVとしての出来栄え日本仕様では本来、ダイアル式のシフトセレクターとなるが、今回は6速MTで操ってみた。4405x1850x1890mmの車格に、車重は1.4トン少々。低回転域から300Nmを発生するトルクで引っ張り上げるのに、難はない。むしろ乗員や荷物を載せた時を考えれば、長距離燃費を抜きにしてもディーゼルはやはり最高の選択肢だ。

プジョー リフター|PEUGEOT RIFETR昨今のSUV人気の影響か、着座位置はかなり高くグラスエリアも広いので、視界というか見晴らしはよい。わりとアップライト気味のドライビング・ポジションにプジョーの小径ステアリングはミスマッチのようにも映るかもしれない。だが、平面的なボディパネルのおかげで掴みやすい車両感覚を、少ない動作で正確に操れる楽しさの方が優る。縦方向の揺れやハーシュネスについては鷹揚だが、フロントノーズのステアリング操舵に対する反応という横方向への動きは機敏という、EMP2プラットフォームの長所をリフターはきっちり受けついでいる。いわばパッと見のイメージにはほど遠い、低重心ゆえのフロント接地の安定感とハンドリングの正確さ、そしてしなやかな乗り心地は、確かに商用車離れした何か、なのだ。ちなみにエンジンルームを覗き込んでみると、嵩上げされたボディとは逆に、思い切り下方に1.5リッターディーゼルが鎮座していた。

プジョー リフター|PEUGEOT RIFETR

搭載するエンジンは1.5リッターの直列4気筒ディーゼルターボ。最高出力130ps、最大トルク300Nmを発揮する。

また試乗車は17インチホイール仕様で215/60R17のグッドイヤー・エフィシェント・グリップ・パフォーマンスを履いていたが、日本仕様では16インチホイールでよりハイトの高い215/65R16となる。乗り心地はさらに柔らかく快適になることが予想される。

荷室が広いだけでなく、細々したところまで練り込まれた収納スペシャリストぶり、そしてあくまで乗用車として練り込まれた動的質感。フランス的な商用車でなく、MPV(マルチ・パーパス・ヴィークル)として主張するリフターのキャラは、乗るとより腑に落ちるものとなる。ローンチ・エディションの車両価格は336万円と、かなり高級ではあるが、意外と替わりのいない1台であることは間違いない。

プジョー リフター|PEUGEOT RIFETR文・南陽一浩 写真・王女―・シトロエン・ジャポン 編集・iconic

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