快適で日常的に乗れるグランドツアラー
text:John Evans(ジョン・エバンス)
translation:KENJI Nakajima(中嶋健治)
1994年、AUTOCARはポルシェ968クラブスポーツを高く評価した。装備品を省略して50kgの減量化を図り、シャシーは標準の968より引き締められたていた。甘美なハンドリングマシンだった。
当時は長期テスト車として、数ヶ月を掛けてじっくり試乗したが、返却の日が残念でならなかった。そんな素敵なポルシェ968クラブスポーツ(CS)を、今なら幸運にも3万ポンド(399万円)以下で購入できる。
968のベースは、先代に当たるポルシェ944。924から続く、フロントエンジン・リアドライブのプラットフォームを用い、1992年に登場した。
ポルシェは当初、944 S3として開発を進めていた。だが、944とはだいぶ異なるモデルへ進化すると判断し、968の車名が与えられた。事実、944 S2と968とで共有する部品は、20%程度しかない。
1992年に発売された968には、2+2のクーペと、2シーターのコンバーチブルがラインナップ。エンジンはアルミニウム製の3.0L 4気筒で、6速MTを介して後輪を駆動する。
ポルシェ製のヴァリオカムと呼ばれる可変バルブタイミング機構と、モトロニック・フュエル・インジェクションを採用。最高出力240psを発生し、0-100km/h加速は6.5秒でこなした。
オプションでデュアルモード付きティプトロニックATも選べたが、0-100km/h加速は7.9秒へ落ちる。しかし968が追求したのは、直線性能ではなかった。
何よりも、快適で運転の楽しいグランドツアラーが目指された。日常的に使用できる、高い信頼性も備えている。もっとも、走行性能を磨いたクラブスポーツの場合、快適性は多少おろそかにはなっていたが。
近年は目にしていないと話す専門店も
1993年に登場した968CSには、電動ミラーとパワーウインドウ、集中ドアロック、リアハッチのリリースレーバーなどが備わらない。リアシートも省かれ、2シーターだ。フロントシートは軽量なレカロシートに置き換わり、着座位置は20mm下がっている。
CSは、サーキットではその真価を証明できたが、ショールームでは968の価値を存分に伝えることができなかった。売り上げは伸びなかったのだ。
軽量化された968は、ポルシェブランドに期待する一部のドライバーへは受けた。低く、軽く、走りに特化した968。週末のサーキット走行に完璧でありながら、平日の通勤でも充分快適に乗れる。
さらに968スポーツが、1994年の終わりに登場する。人気は今でも高く、一部では最高の968だと評価する人もいる。CSを買えない人の声が中心ではあるけれど。
すでに工場をラインオフしてから、一番新しいクルマでも25年が経っている。いま968を探すならグレードではなく、整備記録がしっかり残っている、メカニズムの調子が良くサビのない車両が良い。
まだ充分に魅力的な968が残っている。車両価格は、英国なら1万2000ポンド(159万円)から1万9000ポンド(252万円)の間くらいが良いだろう。価値も見直されており、しっかり整備を受けた968が、再び市場に増えつつある。
英国の中古車市場では、ポルシェ968の流通量はまだ少ない。日本も同様だ。英国のポルシェ専門店では、ここ数年間は968を目にしていない、と話す人も少なくなかった。
968は希少だが、ファンの間での評価も高い。興味があるなら、状態の良いクルマを発見したら、すぐに手を打った方が良いだろう。
不具合を起こしやすいポイント
エンジン
タイミングベルトとウォーターポンプ、バランサーシャフト・ベルト、タイミングベルト・テンショナーガイドが一緒に交換されていることを確かめる。4年毎の交換が推奨。
フロント・エンジンシールからのオイル漏れや、燃料パイプのサビにも注意する。電動冷却ファンの動作も確かめたい。リレーは200ポンド(2万6000円)ほど。
トランスミッション
リアデフのピニオンベアリングから、異音や振動がないか確かめる。
MTの場合、クラッチの交換費用は高い。ATの場合、フルード交換が定期的に行われているか確認する。キックダウン・スイッチなどが不調になることがある。
タイヤとサスペンション、ブレーキ
キャリパーとパッドが固着していないか確かめたい。ブレーキパイプの腐食にも注意。
トレーリングアームとコントロールアーム、フロント・ウィッシュボーン・アウターボール・ジョイントなどは劣化しやすい。ショックアブソーバーの交換費用も安くはない。
ボディ
アンダートレイなどは外し、サビがないか調べる。サンルーフやテールゲートからの水漏れも確認する。水が侵入すると、シート下のECUへダメージを与えることがある。
亜鉛メッキボディだが、錆びやすい。特にリアのホイールアーチや、サスペンション・マウント周りには注意が必要。
インテリア
エアコンが付いている場合は、動作を確認する。カーペットが湿っていないかも確かめる。ドアやテールゲートのシール類は割れやすい。状態も確認しておく。
専門家の意見を聞いてみる
マーク・ピーターズ プレシジョン・ポルシェ代表
「何より確認するべきは、整備記録の内容です。整備簿の情報だけでなく、請求書の詳しい中身を見たいですね。エンジンオイルやフルードの銘柄だけでなく、ベルトやテンショナー・ガイドなど、交換部品の内容も知ることができます」
「タイミングベルトの交換も検討した方が良いでしょう。中古部品の流通量は少なく、高価な新品を用意する必要があります。その後の維持費的にも、しっかり整備されてきた968を選ぶことが重要です」
「例えば、ブレーキキャリパーが腐食し、パッドが固着することがあります。新しいキャリパーを買わずにパッドをバラして利用するなど、整備ポイントも専門店なら理解していますよ」
知っておくべきこと
ポルシェでは、ポルシェ・クラシックとして、正規部品を提供している。仮に必要な部品が手に入らないのなら、開発チームへリクエストすることで、再生産の可能性を検討してくれる。
いくら払うべき?
1万ポンド(133万円)~1万3999ポンド(185万円)
英国では968スポーツも含まれるが、走行距離はかなり多め。13万8400km走った、整備記録の揃っている1994年式968カブリオレが、1万2500ポンド(166万円)で見つかった。
1万4000ポンド(186万円)~1万6999ポンド(225万円)
整備の明細も残っている17万7000km走った1993年式カブリオレで、1万4500ポンド(192万円)。1994年式スポーツ・クーペも1万6995ポンド(225万円)で発見した。
1万7000ポンド(226万円)~1万9999ポンド(265万円)
968スポーツが増えてくる。1994年式で17万kmを走った968スポーツで、1万9850ポンド(264万円)という例も。
2万ポンド(266万円)以上
しっかり整備記録の残った、走行距離が短めのクルマが増えてくる。英国では、クラブスポーツはこの価格帯から。
英国で掘り出し物を発見
ポルシェ968クーペ 登録:1993年 走行:16万100km 価格:1万3995ポンド(185万円)
ポルシェ・ディーラーでの整備記録が揃い、サビのない968。最近新しいクラッチとショックアブソーバー、ブレーキディスク、タイミングベルトなどへ交換してある。実際に整備内容の明細を確認して間違いがなければ、契約に進みたいところ。
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みんなのコメント
それなのに944からの使い回し感が強すぎて、どうにも割高感が出て不人気だった。
CSに関してはハンドリングマシンと言うよりは、実に模範的でありながら楽しめる高次元でバランスが取られたクルマだった。
FRの楽しさとFRゆえの怖さ、こういうのをちゃんと教えてくれる。
デザインが個人的には大好きだった。
現代の基準からしたら絶対的なパワー不足とミッションがATではパワートレインとしては面白くはなかったが、やはりハンドリングと、ブレーキ、そして何よりスポーツカーに乗っている、という感じが素晴らしかった。
ただ、パワー不足のエンジンだったが、トルク感は4気筒3Lというビッグボアから来る素晴らしいものあり、気持ちは良い車。剛性感はやっぱりポルシェ。911乗りからしたら大したことないんだろうけど、おそらくほとんどの人が乗ってみればわかるさすがFRでもポルシェって車だよ。
今でも程度が良ければ乗りたいが、もうほとんど日本には履歴のわかる程度の良い車が存在しないのと、例のトルクチューブが手に入るのかどうか。