電動化でGクラスが得たもの
1979年にNATO向けの軍用車両をベースに、民間用のクロスカントリービークルとして発売した「ゲレンデヴァーゲン」の誕生以来、連綿と続く改良を施し、その類稀なる堅牢さと突き詰められたオフロード性能に加え、グランドツアラーとしてのオンロード性能を磨き上げ、「究極の高級オフローダー」という唯一無二のポジションを確立したメルセデス・ベンツのGクラス。そのGクラスにも、ついに電動化の波が押し寄せた。
ついにGクラスにも完全電動化モデルが登場! メルセデス・ベンツ「G 580 with EQ テクノロジー」で高級オフローダー界に殴り込み
ハイブリッドなどという折衷案ではなく、100%電気自動車のBEVとしてGクラスに新たな価値観をもたらし、ラインアップに加わったのが今春ワールドプレミアされた「G 580 with EQ テクノロジー」だ。
それから約半年、2024年10月24日から「G 580 with EQ テクノロジー エディション1」として日本でも注文が開始された。
そこで、電動化により実現した新機能を中心に、初代ゲレンデヴァーゲンの誕生から45年という長い歴史のなかでも、最大級といっても過言ではないエポックメイキングな電気自動車「G 580 with EQ テクノロジー」について解説していきたい。
エクステリア
一目見てGクラスだとわかるスクエアボディはそのままに、G 580は後端が持ち上がったボンネットフードとリヤホイールアーチにエアカーテンを備えるなど、随所にこれがEVモデルであることを伝えている。
テールゲートに備わるボックスは、標準車の場合はスペアタイヤが中に収納されているが、G 580の場合は充電ケーブルや工具などを収納するためのスペースとしてあてがわれる。そのため、外観形状そのものも標準車とは異なり、やや縦長な印象だ。
今回導入されるG 580は、AMGラインパッケージが標準装備となるほか、ナイトパッケージやエディション1専用のブラック塗装20インチAMGホイール、ブルーのブレーキキャリパーなどの多くのエディション1専用装備が装着され、購入意欲を刺激する。
インテリア
インテリアの基本デザインは標準車のものを踏襲するが、デフロック機能のスイッチ周辺はG 580専用に再設計され、後述するG-TURNやG-STEERINGの起動スイッチがレイアウトされ、ひと目でこれがEVモデルであることを識別できる。
ナッパレザーを贅沢に奢ったシートやダッシュボードはもちろんだが、随所にエディション1だけのブルーステッチが施され、先進テクノロジーを融合させた究極の高級オフローダーの内装にふさわしい仕上げとなっている。無論、車格に見合った快適装備も抜かりなしだ。
しかし、Gクラス初の電気自動車「G 580 with EQテクノロジー エディション1」の真価は、それら豪華な仕立てのエクステリアやインテリアの類ではない。なぜなら、電動化によりもたらされた技術革新があまりにも大きく、従来のGクラスでも十分に高かったオフロード性能がさらに進化したからだ。
メルセデス・ベンツ初の4輪独立モーターがGクラスに革命をもたらした
このG 580は、メルセデスの電気自動車では初となる4輪独立式モーターを搭載しており、バッテリーのみで駆動する電気自動車(BEV)でありながら、同社のG 63に搭載されているV8エンジンを超えるパフォーマンスを発揮するとされている。
4輪独立式モーターは永久磁石同期モーターが採用され、各輪のホイール近くに配置されている。1モーターあたりの出力は108kW。それをラダーフレームの前後アクスルにふたつずつ組み込み、システムトータルで432kW(587馬力)/1164Nmを発揮する。綿密な制御によって各輪の出力は適切にコントロールされ、Gクラスが元来持つコントローラブルなオフロード性能を一層引き上げている。
バッテリー
バッテリーは116kWhの大容量リチウムイオンバッテリーを搭載。合計216個のセルを12のモジュールに収めたモジュラーデザインが採用された。高効率な同期モーターの採用と相まって、WLTCモードの一充電航続距離は530kmに達する。オートモード以外に4段階の回生レベルが選択可能な回生ブレーキも、この重量級オフローダーからは想像できない良好な航続距離の実現に貢献している。
一方で、むき出しの岩が露出するようなラフな道を走行するような場面で、果たしてG 580のバッテリーモジュールは大丈夫なのだろうかと不安に感じるだろうが、そこは心配無用のようだ。
G 580のバッテリーは、カーボンファイバーを含むさまざまな素材を組み合わせた厚さ26mmの頑丈なアンダーボディパネルで守られ、50を超えるスチールボルトによって最大4mm厚のスチール製ラダーフレームに締結されている。
また、ねじり剛性に優れたケースに収めることで、泥や水の侵入を防いでおり対策は万全だ。これらの対策により、結果的に車両の低重心化と車体剛性が大幅に向上。さらに、最大渡河水深は標準車のG 450 dを150mm上まわる850mmを実現させたとメルセデスは主張する。
これら万全を期したバッテリーやモーターが、Gクラスに新たな機能をもたらせた。それがG 580を選ぶ最大の理由になるかもしれない。それは、G-TURNでありG-STEERING、オフロードクロールといったもので、ネーミングだけではどのような機能か想像しがたいため、順に説明したいと思う。
G-TURN
G-TURNはオフロードの未舗装路等で最大2回転まで旋回可能な革新的な新機能。例えば前方に障害物が現れて、それ以上先に進めなくなった場合、左右の車輪を逆回転させることで左右いずれかの方向に自在に方向転換できる。つまり、停止状態で「まわれ右(左)」ができてしまうということだ。
ただし、この機能は公道では使用できず、使用環境は私有地やクローズドのオフロードコースといった場所に限定される。
G-STEERING
G-STEERINGは、狭く険しいオフロードなどを走行する際、大幅に回転半径を縮小してくれる機能だ。各輪のモーター駆動トルクを個別に制御することで、作動速度25km/hの状況下で後輪軸を中心に旋回することができるようになる。G-TURNと同様に、4輪独立モーターを搭載しているからこそできる芸当だ。
これにより、タイトなコーナーでもステアリングを切り返すことなく曲がることができてしまう。こちらの機能も公道で使用することはできないが、トレイルを趣味とするオフローダーには堪らない機能といえそうだ。
オフロードクロール機能
オフロードクロール機能は、悪路を低速で走行する際に有効なクルーズコントロール機能だ。地形を問わず約2km/hをキープするモードから、平坦路と急坂では人が歩く程度の速度を維持し、10~20%の勾配を下る際には最大14km/hまで可変しながら進むモード、またそれよりも早く上り、下りは勾配に応じて車速を抑制するモードと、3段階のクロール機能が搭載されている。
これによりドライバーはアクセル・ブレーキ操作から解放され、足場の悪い進路の安全確認とステアリング操作に集中することができる。この綿密な制御も4輪独立モーターがなせる業だ。
そのほかにも、360度カメラの映像をもとに、車両のフロントおよび側面下部の路面イメージを仮想的に表示する「トランスペアレントボンネット」や、オフロード走行に求められる機能や情報を視覚的に表示する「オフロードコックピット」、オンロードからオフロードまでさまざまなシチュエーションに最適化された走行モードに切り替えが可能な「DYNAMIC SELECT」が搭載されている。
また、内燃エンジンを搭載する標準車と同様に、ローレンジモードを備えているだけでなく、トルクベクタリングを用いることでディファレンシャルロックと同様の効果を生み出す「仮想ディファレンシャルロック」を備えている。
電気自動車であってもGクラスらしくオフロード性能は一切妥協がなく、むしろ電動化による副次的効果で標準車より性能を高めているあたりに、メルセデスベンツの相当な気概を感じる次第だ。
「G 580 with EQテクノロジー エディション1」は、ステアリング位置が左右から選択できて、どちらも車両本体価格は税込み2635万円となっている。
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みんなのコメント
私がベンツの株主だったら経営陣を吊るし上げにするくらい無駄な車。