タイにおいて2023年3月20日~4月2日の期間、第44回バンコク国際モーターショーが開催されました。開催場所はバンコクの北に位置するノンタブリ県にあるインパクト・チャレンジャーホールという場所です。ノンタブリ県はバンコク郡には属していませんが、バンコク首都圏の中にあります。元々はバンコク郡内で開催されていたので、この名前が今も息づいています。
3月20日はVIPデーという設定で、入場できるのはVIPパスが発行された人とプレスだけです。VIPとはまさに上客のことで、高価なクルマの購入や多くの台数を購入する客が対象です。日本のモーターショーではこのような日程の設定はありません。2019年に開催された東京モーターショーを例にすると、開場初日と2日目の午前中までがプレスデー、2日目午後が式典などのオフィシャルデーと特別招待日(障がい者の方など)、3日目が販売枚数限定のプレビューデーで4日目からが一般公開でした。
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スクーターはほとんどが電動だった。 トヨタはJPNタクシーを展示した。 三菱自動車XRTコンセプトアンベール。
タイのモーターショーでVIPデーが設定されているのは、日本のモーターショーとは違って「クルマを売買する」ショーだからです。日本のモーターショーは基本的にその場で売買契約を結んだりすることはできません。もちろん、少数生産のクルマなどについては例外的に非公式で商談が行われることもあるでしょうが、表立って売買契約を結ぶようなことはありません。しかし、タイのモーターショーは販売を行うことが前提となっています。VIPデーではハイブランドのブースに少数のお客が訪れ、談笑している姿をよく見かけます。筆者はタイ語がわかるわけではないので、詳細は不明ですが、買いそうだなあ……という雰囲気が伝わってきます。
VIPデーはそうしたお客とプレスだけなので、かなりゆったりと時間が流れます。多くのモーターショーでは、そのモーターショーでアンベール(初公開)するクルマは、プレスデーのプレスカンファレンス時間まで秘密にされますが、タイのモーターショーではVIPデーに一度見せて、プレスデーに向けてふたたびベールを纏わせることがあります。これは上客に目当てのクルマを見せたり、特別扱いするためです。
2日目のプレスデーは少し様子が変わります。各ブースではプレスカンファレンスが開催され、そこに主催者グループが訪れます。主催者グループはプレスカンファレンスのスケジュールに従って、次のカンファレンスというように移動していきます。タイではモーターショーで売れるクルマが多いので、各メーカーともに主催者に礼を尽くすというような感じでの対応となっています。
さて、いよいよ本番となる一般公開日です。一般公開日は日本のモーターショーと大きく異なる部分があります。それはステージ裏に設けられた商談スペースです。前述のようにタイのモーターショーではクルマが売られるので、ショーの会場で商談して契約書にサインをします。商談スペースには飲み物や軽食も用意されていて、お客をもてなしながら商談ができるようになっています。
モーターショーの入場者はのべ160万人程度といいますから、日本のモーターショーよりもずっと多い人数です。そして驚くべきは、そのうちチケットを購入して入場するのは30万人程度と少ないのです。入場料は100バーツ(400円弱)とリーズナブルなので、入場料を払いたくないということまでにはなりません。ただ、入場料を払わずとも、多くの入場者はメーカーや販売店などが配るチケットで入場できてしまうのです。
トヨタの商談コーナー。
とはいえ、このモーターショーでどれくらいの人がクルマを買うのでしょう? 主催者発表によれば2023年のバンコク国際モーターショーで販売された自動車は前年比34.5%増の4万2885台となっています。2022年のタイの新車販売台数は約85万台でしたので、会期中の11日間(VIPデーとプレスデーを含めば13日間)で、1年の販売台数の0.5%を販売してしまうのです。1年のうちの0.5%を11~13日間でと考えるとさほどではありませんが、それがたった1カ所の会場で売れてしまうのですからその勢いのすごさは目を見張るものです。そのため、各メーカーや販売店はこの日のために、タイ国内からトップセールスを集結させて対応しています。
また、日本のモーターショーでは新車やコンセプトカー、参考出品車などが展示されるだけですが、バンコク国際モーターショーではユーズドカーショーも併催されていて、中古車の販売も行われています。中古車はホール外側のオープンスペースに置かれていて、ごく普通に売られているのがかえって不思議な印象でした。
またユーズドカーショーの近くには、フードコートもあってさまざまなな食事をリーズナブルに楽しむことができます。会場を出たところにもフードコートはあるのですが、いずれもクーポン制を取っています。クーポン制というのは、デポジットとして一定の金額を入金したカードで支払いをするもので、カードの残金は利用後に払い戻す方式で、タイではショッピングセンターのフードコートなどでもこうした方式が採られていることが多く見られます。
タイは王制で現在の国王はラーマ10世で2016年に即位しています。モーターショーの会場には王室のクルマを紹介するコーナーが設けられていました。歴代の国王が使用したクルマの写真などが展示されていたのですが、実車も1台展示されていました。
ショー会場には国王を賛美するコーナーが設置されていた。 王室で使われてきた歴代のクルマが紹介されている。
展示されていたのはジープワゴニアで、このワゴニアはアメリカに送ってレストアを施しています。日本のモーターショーでもかつて使われた御料車や上皇陛下など皇族が運転したクルマなどを展示すれば人気のコーナーになるだろうなあと思った次第です。
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