8月14~15日の週末にノックヒルで争われた2021年BTCCイギリス・ツーリングカー選手権の第5戦は、古豪ウエスト・サリー・レーシング(WSR)のコリン・ターキントン(BMW330i M-Sport)が今季2度目のポールポジション獲得から、レース1で久々の“ライト・トゥ・フラッグ”による勝利を達成。自身第2戦以来のトップチェッカーを受けると同時に、WSRにとってもBTCCでの記念すべき100勝目がもたらされることとなった。
さらにレース2では、選手権首位でこの週末に臨んだディフェンディングチャンピオンのアシュリー・サットン(インフィニティQ50BTCC/レーザー・ツールズ・レーシング)が、ファイナルラップでの逆転劇を演じて今季3勝目をマーク。続く最終ヒートはサクセスバラストに苦しみながらも、選手権リーダーに追い縋ったトム・イングラム(ヒュンダイi30ファストバックNパフォーマンス/ギンスターズ・エクセラー8・ウィズ・トレードプライズカーズ・ドットコム)が、タイトル戦線に向け意地の勝利を飾っている。
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前戦から約2週間のインターバルで開催されたBTCC第5戦は、プラクティスから雨がらみのミックスコンディションで進行する難しい勝負を予感させる状況のなか、今季から古巣に戻りBTCC復帰を果たした3冠王者ゴードン・シェドン(FK8型ホンダ・シビック・タイプR/チーム・ダイナミクス)や、エクセラー8所属の伏兵クリス・スマイリー(ヒュンダイi30ファストバックNパフォーマンス)らが、それぞれフリー走行最速を記録するなどFF勢有利の展開で進んだ。
しかしドライ路面で行われた土曜午後の予選で状況が一変。序盤からFR車両のインフィニティQ50BTCCが速さを見せ、王者の僚友であるエイデン・モファットが首位タイムを記録すると、食あたりに苦しみ体調万全とはいかないサットンもそれに続き、セッション序盤でレーザー・ツールズ・レーシングが1-2体制を築き上げる。
その後、2度の赤旗中断を挟んで「今季ここまでで、記憶にある限り最もバラスト搭載量が軽い状態」というBTCC“4冠”王者のターキントンが快走を見せ、残り5分の時点で50秒836のトップタイムを記録して暫定ポールを奪取。
前戦でキャリア初ポールシッターを経験したセナ・プロクター(FK8型ホンダ・シビック・タイプR/BTCレーシング)がフロントロウに並び、スマイリーのヒュンダイを挟んでチームメイトのジョシュ・クック(FK8型ホンダ・シビック・タイプR/BTCレーシング)も2列目4番手に。
5番手に喰い込んだジェイク・ヒル(フォード・フォーカスST/MBモータースポーツ・アクセラレーテッド・バイ・ブルー・スクエア)を挟み、サットン、モファットのインフィニティが並ぶグリッドとなった。
明けた日曜レース1となる“ラウンド13”も、トラクションに優れるNGTC規定FRの優位性を活かした元王者が、スタートから盤石のホールショットを決めてFF勢をリード。4周目にダン・ロイド(ヴォクスホール・アストラBTCC/エイドリアン・フラックス・ウィズ・パワーマックスド・レーシング)がコースオフを喫し、セーフティカー(SC)導入後のリスタートでも動じることなく後続を抑えると、プロクターとクックのBTCレーシングのホンダを従えて、ポール・トゥ・ウインで復活の今季2勝目を決めてみせた。
■レース3ではイングラムが“罠”を仕掛け今季3勝目
「FP1、FP2でセットアップを改善した効果で、今日のチームは僕に強力なマシンを用意してくれた。BMWがつねに得意なここノックヒルで、WSRに記念すべき100勝目をプレゼントできて最高の気分だ」と久々の勝利を喜ぶターキントン。
続くレース2もポールから発進したWSR不動のエースは、スマイリーのヒュンダイが5番グリッドでストールし、後続でマルチクラッシュが発生する混乱の状況に巻き込まれることもなく、SC解除後はホンダのクックとインフィニティのサットンを従えてレースを支配していく。
するとリスタート直後のヘアピンでホンダのインサイドに飛び込み、2番手浮上を果たした現役チャンピオンがBMWのテールを猛追。17周目にはヘアピンアウト側から仕掛けるなど、新たな重りを積んだBMWに対して明らかにレースペースで優位に立つ。
すると6番手争いを展開していた僚友モファットとTOYOTA GAZOO Racing UKの新エース、ロリー・ブッチャー(トヨタ・カローラGR SPORT)のクラッシュにより再びのSC導入になると、3番手以下は周回遅れの車両にフタをされたこともあり、再開後はトップ2による終盤スプリント勝負となる。
ヘアピンで幾度もディフェンスラインを取らされた首位ターキントンは、最終ラップのシケインでわずかにミスを犯し、その隙を見逃さなかったチャンピオンが前へ。27周目の劇的な逆転で首位浮上となったサットンが、ターキントンとヒルのフォードを抑え切り、選手権リードを拡大する勝利を手にした。
「彼のBMWは少し縁石から外れて不安定になった。その機会を最大限に活用したんだ。コリンのような男とレースをするのが大好きだし、お互いに敬意を払い、スペースを残しながらも“圧”を掛け続けた。彼はフルウエイトでも速かったし、2位に甘んじていたら本当に退屈だったろうね!」と逆転で今季3勝目を飾ったサットン。
しかし週末最終のレース3はリバースグリッド抽選を経て、ランキング2位につける“宿敵”イングラムがポイントリーダーと歩調を合わせるかのように躍進。スタートで3番手にジャンプアップしたヒュンダイは、故障車により再び出動のSCで2番手ジェイソン・プラト(ヴォクスホール・アストラBTCC/エイドリアン・フラックス・ウィズ・パワーマックスド・レーシング)に照準を合わせると、再開後の10周目にミスを引き出しオーバーテイク完了。
そのまま首位ステファン・ジェリー(BMW330i M-Sport/WSR)に迫ると、17周目のヘアピンでフロントを擦り付けるようにインをこじ開け勝負アリ。「前をいくBMWより最終ヘアピンのブレーキングがよかったみたいだ。それで前のラップから罠を仕掛けたんだ」というイングラムが今季3勝目を挙げ、そのヒュンダイを追っていたプロクターのシビックもBMW攻略に成功。失意のジェリーがなんとか3位表彰台を死守するリザルトとなった。
この週末によりポイントを172まで伸ばした王者サットンがランキング首位を守ることに成功。2位のイングラムが14点差で追い掛け、3位にはターキントンが浮上した。いよいよ終盤戦に向かうBTCC第6戦は、8月28~29日の週末にイギリス屈指の高速トラック、スラクストンで争われる。
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