日本独自の規格である軽自動車。この規格に合わせて様々なユニークスモールカーがこれまで誕生してきた。そんなユニーク軽の話題となるとスポーツ系に目が行きがちだが、それ以外にもユニーク軽は多くある。そんな中から三菱のiに注目してみよう。
文:西川昇吾/写真:三菱
N-BOXより先に誕生した”高級な軽自動車”!! 超個性的な[三菱i]が1代限りで消えた衝撃のワケ
■「i(アイ)」ってどんなクルマ?
2006年に登場した三菱 i。見た目も個性的だが、なによりの特徴はミドシップレイアウトの採用だった
2006年に登場した三菱 i。5ドアハッチバックで全高が1600mmとやや高めなのは、当時の軽自動車のオーソドックスなパッケージと言えた。しかし、全体的に丸みのあるフォルムに大きく傾斜したフロンドガラス、長いホイールベースなど一目で見て他の軽自動車とは異なった出で立ちであった。
メカニズムで何よりも特徴的であったのはミドシップレイアウトを採用したことであった。これは走りの良さとゆとりのある車内空間両立のためだ。
iのコンセプトは「新時代を切り拓く革新的なプレミアムスモール」。そのため、それまでの軽自動車で課題とされていた「デザインと居住性」「居住性と衝突安全性」これらの同時実現が難しかったテーマを実現するためにミドシップレイアウトが採用されたのだ。
冒頭で述べた独特のデザインもミドシップレイアウトと独自コンセプトによるもの。特徴的なワンモーションフォルムに、ボディ四隅にタイヤが配置され安定感のある仕上がり。2550mmという普通車のコンパクトカー並みのホイールベースは、2024年現在でも軽史上最長だ。
■ミドシップレイアウトはあらゆる面で有利に
ミドシップレイアウトは運動性能の向上に貢献するなど、多くの恩恵をもたらした
ミドシップレイアウトを採用したことの利点は各種性能面にも生きている。
リアシート後方、リアシートとリアタイヤの間にエンジンを搭載することにより、優れた操縦安定性や上質な乗り心地、そして軽快なハンドリングなど走る、曲がる、止まるの基本性能を軽自動車としては高い次元で実現。
特に長いホイールベースは直進安定性に寄与していて、軽自動車とは思えないほどビシッとまっすぐ走り、高速巡行が楽なクルマであった。
また、ミドシップレイアウトにすることでフロント部分に余裕ができ、衝突吸収ゾーンを効果的に設けられて、衝突安全性能にゆとりをもたらした。そして、ロングホイールベースを実現することで、室内空間も広く取ることが出来たのだ。
走ってヨシ、室内に入ってヨシ、そしてもしもの事故の時の安全性も高いというパッケージをミドシップレイアウトで実現したのだ。
■なんで1代で終了?
弱点は価格の高額化。「プレミアムスモール」を標榜しているので高額化はしかたがないが、高額化するなら利便性の向上を期待するユーザーのニーズにマッチしていなかった
これだけ走りも室内空間も優れていれば売れそうな感触もするが、現実はそうもいかなかった。その理由は値段と軽自動車に対する需要のミスマッチがある。
販売当初のiの価格は128万1000~161万7000円。軽自動車のベンチマーク的な存在であるワゴンRの同時期モデルの価格が81万9000~133万350円。
「プレミアムスモール」を目指したわけだから、価格が高くなるのは致し方無いが、軽自動車のプレミアム路線というのはどうもヒットに恵まれない。安定性や乗り心地の上質さなど、走りの良さでプレミアムを極めても軽自動車に求められる需要ではないということだ。
近年の軽自動車はスライドドアと高くて広々とした室内空間を有するスーパーハイト軽が主流となっているが、これらのモデルは高くても比較的販売は良好と言える。
値段が高い軽自動車は売れないという訳ではない。軽自動車で価格を高くするのであれば、ある程度の乗り心地や走りの良さも必要であるが、それ以上に室内空間や電動スライドドアを始めとした利便性が重要になってくるということだろう。
新しい軽自動車の形を模索したi。独自コンセプトから来るメカニズムは今見ても面白いと感じるものがある。
【画像ギャラリー】多種多様な軽自動車における「もうひとつの進化」の可能性!? 軽の歴史に足跡を残した三菱 i(16枚)
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でも、iミーヴに進化したし、光岡雷駆になり、シトロエンCゼロの名前で海外でも正規販売された。
1代だが長寿だった。