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ヤマハのスーパースポーツバイク「YZF-R1」 MotoGPで培った技術は最初に「YZF-R1」へ

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ヤマハのスーパースポーツバイク「YZF-R1」 MotoGPで培った技術は最初に「YZF-R1」へ

■オフロード車開発から花形のYZF-R1開発チームへ

 ヤマハが誇るスーパースポーツ「YZF-R1」が登場してから20年が経過しました。現行モデルが登場したのは2015年のことですが、もちろん毎年のように改良が加えられています。ではその最新版、つまり2018年モデルはなにが変わり、どうなったのか? そのあたりをプロジェクトリーダーに直撃してみました。

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――現在、YZF-R1/R1Mのプロジェクトリーダーを務めるのが平野啓典さんですが、そもそもこのモデルにはいつ頃から関わっていらっしゃるのでしょう?

 平野啓典プロジェクトリーダー(以下、平野PL):2011年からです。年式で言えば2012年モデルの1KBと呼ばれるモデルの車体を担当し、それ以前はYZシリーズに携わっていました。

――YZということはオフロード用の競技マシンですよね。オフロードからオンロードへ、競技専用車両から一般公道用車両へとその変化はかなり大きかったのではありませんか?

 平野PL:最初に担当を言い渡された時は驚いて固まりました。で、その後、事の重大さに身震いするという(笑) YZF-R1の開発チームと言えばヤマハの中でも花形で、その時すでに大きなブランドになっていましたからね。そういう意味ではYZシリーズもオフロードのひとつのブランドと言えますが、あまりに畑が違うというか、YZF-R1のことは自分からは違う山のような感覚で見ていました。

――平野さんがYZF-R1に関わるようになってほどなく、2015年モデルで全面的に刷新され、その時は車体設計のチーフとして運動性や操作性の向上に関与されていたかと。プロジェクトリーダーという立場になられたのはいつですか?

 平野PL:2017年モデルからです。この時は主にユーロ4(2017年秋から始まった排出ガス規制のひとつ)に対応するための改良が中心で、規制をクリアしながらもいかにドライバビリティを向上させるか、そこに尽力しました。もちろんライバルの手前、スペックは落とせませんから、いろいろ手を加えました。

■地味でマニアックでも、さらによくするために改良するのがYZF-R1の歴史

――2018年モデルで変わった点を教えてください。

 平野PL:最も大きな変更はクイックシフトです。従来はシフトアップの時にのみ機能していましたが、今回からシフトダウンの時もクラッチレバーの操作が必要なくなりました(20km/h・2200rpm以上※の時に使用可能 ※ギアにより若干異なります)。

――ヤマハはこれまでシフトダウン側の採用には慎重だったように思います。それを今回、盛り込むことになったのはどうしてでしょう?

 平野PL: YZF-R1は「サーキット最速」というコンセプトを掲げている通り、高い負荷が掛かる走行を前提にしています。電子制御はライダーに負担を掛けず、自然な操作をうながすためのデバイスですから、その領域でも相応の信頼性がなくてはなりません。今回、そこに確信を持てたので採用に踏み切ったというわけです。

――なるほど。確かに街中やワインディングでは機能しても、いざサーキットでアベレージスピードを上げるとギヤ抜けを起こしたり、切り換わらなかったりするクイックシフトは珍しくありません。盛り上がった気分が削がれるだけでなく、信頼性にも関わりますからね。

 平野PL:その通りです。そのため、ライダーのシフト操作を検知するセンサーの他、ペダルのゴム形状も見直しました。お菓子の「コロン」って分かります? 2017年モデルまでは、チェンジペダルの先があれと同じような円柱状をしていたのですが、2018年モデルはその先端を少し細くしているんです。これによって操作性が向上しました。かなりマニアック・・・というか地味なポイントですが(笑)、大きな問題がなくてもさらによくなるように改良する。そういう積み重ねがYZF-R1の歴史だと思います。

――変更点は他にもありますか?

 平野PL:電子制御サスペンションを装備するYZF-R1Mは、そのインターフェイスを改良しています。減衰力を自動的に、もしくは任意に強くしたり、弱くしたりできる機能は同じですが、これまではサスペンションセッティングをしようにもフロントフォーク側なのか、リアショック側なのか、その中でもリバウンド側の減衰力なのか、コンプレッション側なのか・・・・・・と専門的な知識がないと踏み込みづらかったことは否めません。

 そこでもっとシンプルに使えるように改良しました。例えばリバウンドやコンプレッションという言葉ではなく、それらを「ブレーキング(減速)」、「コーナリング(旋回)」、「アクセレーション(加速)」といった走行シーンに置き換えていることです。これによって車両がどういう状態にあり、セッティングするとどうなるのか。それがより分かりやすく、直感的な操作が可能になりました。

■今後のYZF-R1理想形は平野PLの頭の中に

――今後、YZF-R1をこうしていきたいという理想があれば教えてください。

 平野PL:それはここでは言えません(笑)でも、ライダーの五感にうったえるデザインと機能性能を追求していきたいのは確かです。ヤマハのMoto GPマシン「YZR-M1」は理想のひとつですし、そういう世界観をYZF-R1にもっと取り入れ、シンクロさせていきたいですね。

 これまでもそうでしたが、Moto GPの世界で培った技術やノウハウはまず最初にYZF-R1へ落とし込まれ、それがさらに他のモデルへと流用されていく。そうやって新しい時代を切り開くフロントランナーの役目を担っているのがこのモデルです。新しいチャレンジには必ず起点があるわけですが、そのチャンスに最も恵まれ、若手エンジニアの育成にも大きく貢献しています。

 YZF-R1に関わっている社員はみんな生粋の技術者なので、アイデアにはキリがありません。これからのモデルにも期待していてください。

■今後のYZF-R1理想形は平野PLの頭の中に

●プロフィール 平野啓典(Hirano Akinori) YZF-R1/R1M 開発プロジェクトリーダー(2017年~)

 オフロードの競技用モデル「YZ」シリーズの開発に携わった後、「YZF-R1」の車体設計を経て開発責任者に就任。同モデルの他、「YZF-R6」、「MT-10」、のプロジェクトリーダーも務める。

●スペック  エンジン 水冷4ストローク並列4気筒 排気量 998cc 最高出力 200ps/13500rpm 最大トルク 11.5kg-m/11500rpm 変速機 6段 フレーム アルミツインスパー 全長/全幅/全高 2055mm/690mm/1150mm シート高 855mm(YZF-R1) 860mm(YZF-R1M) 軸間距離 1405mm 燃料タンク容量 17リットル 装備重量 200kg(YZF-R1) 201kg(YZF-R1M) 価格 226万8000円(YZF-R1)     307万8000円(YZF-R1M)

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