■これぞ、究極の完全自動運転
「ロボレース」という言葉を聞いたことがありますか。これはロボットによるレースではなく、完全自動運転車のレースのことです。こう聞くと、ドライバーがいないクルマによる競争がおこなわれるのはまだ先の話だろうと思う人が多いはずです。
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ところが現実は、2021年にフルシーズン化するために最終準備段階に入っているといいます。いったい、どういうことなのでしょうか。
筆者(桃田健史)はロボレースカーの実車を前に、詳しい話をロボレース主催者である英国人関係者らに直接聞いてみました。
まず、どんなマシンなのか。初号機は、まるでSF映画の世界そのままのようなボディデザイン。全長は4メートル近くあり、かなり大きく感じます。車体構造としてはF1のようなフォーミュラカーに近い発想で作られました。
パワートレインは、四輪それぞれにモーターを持つEV(電気自動車)です。最高速度や加速性能について詳しいスペックは公表していませんが、時速200kmは確実に出る設計です。
完全自動運転用の機材としては、前輪周辺の前後に4つのレーザーレーダー(通称ライダー)があるほか、車両後方と車両周辺にカメラがあり、さらにGPSによる位置情報を得て走行します。
コースを試走することでコースレイアウトを地図化して、その情報をベースに各種センサーが自車位置を確認する仕組みです。
また、画像認識技術については、アメリカのエヌヴィディア社の半導体技術を使い、車両内の走行データはマイクロソフトが提供するクラウドシステム「アジュール」で解析します。
この初号機は2018年7月、英国で開催されている伝統のレーシングカーイベント「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」で初披露されました。
もちろん、展示したのではなく、実際に完全自動の無人状態で、しかも時速100km近いスピードで複雑なコースを見事に完走しています。
続く2019年は、「シーズン・アルファ」と称して、ルマン24時間など向けに開発されたレーシングカーをベースとした第二試験車を使ったデモレースをおこなっています。
ロボレース主催者の本拠地は英国にありますが、レーシングカーメーカーから車両6台を買い取り、完全自動運転車に改造したのです。
ドライバーが乗って手動運転することも可能で、完全自動運転への切り替えをドライバー自身が体験することができます。
例えば、ロボレースがレースコースを20周する場合、10周目から15周目までは完全自動から手動運転に切り替えることをルールで決めるなど、さまざまなことが考えられます。
こうした「シーズン・アルファ」での試みをもとにして、2020年はより本格的なレースとして「シーズン・ベータ」、さらに2021年に正式シリーズとして世界展開するといいます。
マシンは車体とモーターなどのハードウエアは共通化して、チームはソフトウエアをどのようにプログラミングするかを競います。
■テレビ放送もまもなく開始? ロボレースの未来とは
では、ロボレースへの参加費用はいくらでしょうか。ロボレースのシニア・パートナーシップ開発マネージャーのポール・アンドリュー氏によると「契約条項は各種ある」と説明します。
たとえば、現在実施されている「シーズン・アルファ」の場合、参加チームは4つ。そのうち民間企業は1社で残りはドイツ、イタリア、オーストリアの大学です。
大学の場合、研究室との共同開発という名目での契約となり、ロボレース側のスポンサーなどが開発費用のかなりの部分を負担しているようです。そのほか、自動車メーカーからのオファーも当然あります。
アンドリュー氏によると、「フォルクスワーゲンと4か月間に渡って、実車をつかった共同研究をおこないました」とのこと。ロボレース側は車両を提供し、フォルクスワーゲン側はソフトウエアエンジニアがさまざまな試みをしたそうです。
このほかには「日本の自動車メーカーからもコンタクトされていて、今後について協議しています」(アンドリュー氏)とのことです。
ロボレースはけっして夢物語ではなく、再来年には世界向けのテレビ中継が始まるとみられます。最近流行しているeスポーツと連動するような、新しいモータースポーツの世界がやって来そうです。
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