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プジョー リフターに乗りながら、いにしえの「多用途大衆車」を振りかえる【プジョー今昔ストーリー/その5】

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プジョー リフターに乗りながら、いにしえの「多用途大衆車」を振りかえる【プジョー今昔ストーリー/その5】

「温故知新」の逆というわけではないが、最新のプジョー車に乗りながら、古(いにしえ)のプジョー車に思いを馳せてみたい。今回は、日本でも人気のリフターから、過去の商用車などを振りかえってみたい。(タイトル画像は、上が1970年代の204をベースにしたパネルバン、下がリフター)

商用車ベースだが、高級志向な仕立てを施されたリフター
リフターは、商用車版のパルトネールと車体を共用するMPVモデルで、SUV的な性格も与えられている。プラットフォームは308などと共通の「EMP2」を使用しているが、商用車に対応した車体なので容積率を重視した四角く背の高いボディを持つ。

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乗ってみると、よく走る。交通量の少ない田舎道でフランスの道を気どってペースを上げみても、一般的な商用車のような安っぽさはなく、快適に走れる。ボディ剛性もしっかりしている。もっとも、ほかの純乗用のプジョー車と比較してしまうと、やはり乗り味の点で及ばないと思ったのも事実ではあるが・・・。

ボディサイズは全長4405×全幅1850×全高1880mmとけっこう大きく、比較的大径な17インチのタイヤ&ホイールだったことも影響していそうだが、じわっとロールするようなプジョー マジックの乗り味は、とくに感じられなかった。

ただ、短い試乗時間の中で、大きなうねりのある路面でサスペンションがグッと沈みこんだときに「これだ!」と思わせるしなやかさはあった。長く乗っていれば印象は変わるかもしれない。プジョーらしい乗り味を期待しすぎなければ、ワインディングロードを快調に走り、ディーゼルエンジン(130ps/300Nm)搭載によるパワーも十分にある。

リフターの内装は意外にシックだ。助手席/後席のつくりはMPVにふさわしく、使い勝手重視で仕立てられており、ダッシュボードも実用重視で比較的シンプルだ。しかし銅色のメタリックに塗られたパネル類から、ちょっとした高級志向が感じられる。また、日本仕様では他の乗用車と同様にアイシンAW製の8速ATを備え、i-コクピットの小径ハンドルにはしっかりシフト操作用のパドルが奢られている。

高級志向については同じ車体を持つシトロエン ベルランゴと差別化する狙いもあるが、それがプジョー ブランドの立ち位置ということなのだろう。タフなSUVルックであっても、シティ派でもあるわけだ。

多用途大衆車をつくってこなかったプジョー
リフターは、その兄弟車であり商用車のパルトネールから数えると3代目にあたる。パルトネール/リフターを語る際に、まず言及されるのがシトロエン版の姉妹車ベルランゴで、そちらのほうが元祖的存在である。

もっとも、ベルランゴを語るとき必ず引き合いに出されるのがルノーのカングーであり、早くから日本に導入されておなじみの存在である。しかもカングーはルーツをたどるとルノー4のフルゴネット(小型貨物)にさかのぼり、さらにその先駆者はベルランゴのルーツである2CVのフルゴネットである。

プジョーには、この系統のモデルが過去にはなかった。2CVやルノー4のような、フランス特有の農家の生活で重宝されるような多用途大衆車をプジョーはあまり開発してこなかった。そもそもプジョーは、伝統的に商用車の存在感があまりない印象がある。

もちろん過去にはトラックを戦争中につくったり、戦後は早くから前輪駆動のキャブオーバー車をつくったりしてはいるのだが、印象が薄い。プジョーには乗用車のワゴンボディを流用したバンタイプの商用車はあったが、それはどの自動車メーカーでもやっていた。

プジョーは、どこかブルジョア的なイメージがある。たとえば、戦後に中級モデルに特化していた頃は保守的だが高品質で、中産階級御用達のクルマなどと言われた。ドイツのメルセデスほどの高級志向ではないが、これに近い感じがあり、そう例えられることもあった。ちなみにフランス語の「ブルジョワ(Bourgeois)」という言葉は広義で「都市住民」のことであり、まあ言ってみればシティ派なのである。

プジョーとダイムラーには歴史的な縁があった
プジョーの本拠地モンベリアールは、ダイムラーの本拠地シュツットガルトと距離的に近い。国は違えど、属する地方(州)でいえば国境を挟んで隣接しており、その距離を日本に例えると東京と名古屋ほども離れていないのだ。当然、歴史的・文化的にドイツ圏と通ずるものがあり、フランスでは珍しくカトリックではなくプロテスタントが普及している地方である。

プロテスタントといえば、禁欲的で勤勉な姿勢が資本主義の発展に影響を与えたという有名な説がある。プジョーは資本主義黎明期にこの地で鉄製品づくりの事業に乗り出し、やがて次の新たな重要産業となる自動車生産に展開したのだった。プジョーは地に足のついた堅実さを持ち、あまり享楽的になりすぎないイメージはこういった風土的な影響もありそうである。

距離的に近いだけでなく、プジョーとダイムラーに歴史的な縁がある。ダイムラーが19世紀末にガソリンエンジンを発明したが、そのエンジンでクルマをいち早く商業生産化したのがプジョーだった。ダイムラーは当初エンジンそのものの製造を重視しており、また当時のドイツで自動車に対して禁止的な政策を行っていたことから、エンジンの販売先としてフランスの事業家と交渉を持った。

よく知られるように、パナール・ルヴァッソールとプジョーがこれに対応して、事実上世界最初の「自動車メーカー」となったのである。プジョーは、車体づくりに関して当初から優れた技術力を発揮した。そういった伝統は、老舗の最新作リフターにも受け継がれているようである。(文:武田 隆)

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みんなのコメント

2件
  • 日本車にもこんなモデルがあったらいいのにな〜
  • 伝統的に商用車の存在感があまりない印象があるって……てめぇが勝手に決め付けてるだけじゃん。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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