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F22型 M2コンペをチューニング ACシュニッツァーACS2 503psに305km/h

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F22型 M2コンペをチューニング ACシュニッツァーACS2 503psに305km/h

ル・マンでの優勝経験もあるACシュニッツァー

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)BMWの多くの車種をチューニングしてきたACシュニッツァー社。その始まりは、1987年のフランクフルト・モーターショーで発表された、E32型7シリーズをベースにした「ACS7」だった。

【画像】シュニッツァーACS2とBMW M2 全97枚

だが、シュニッツァー自体はさらに1963年にまでさかのぼる。シュニッツァー・モータースポーツとして、BMW 635 CSi、E30型M3グループAなどと同様に、BMW 2002tiなどをベースにしたツーリングカー選手権に参戦していた歴史を持つ。

1999年にはBMWモータースポーツ・ワークスチームとしてV12 LMRを走らせ、総合優勝している。2012年になるとE92 M3 DTMでDTMへ復帰し、カナダ人レーサーのブルーノ・スペングラーのドライブで、タイトルを獲得している。モータースポーツでの活躍は確かなものだ。

ロードカーを初めて開発したのは1987年で、それ以来ほとんどすべてのBMWモデルに手を加えてきたACシュニッツァー。Mディビジョンが現在提供するモデルの中で最も素晴らしいハンドリングを持つクルマを、更に良くすることはできるのだろうか。素材は望外に良い、M2コンペティション。当時と違って、自由度も低いはず。

ACS2という名前は、2015年にオリジナルのBMW M2がリリースされた際のチューニング・モデルにもあてがわれていたから、目新しさはない。2019年版はM2コンペティションがベースのACS2スポーツ「Mk2」だと考えた方が良いだろう。

モディファイは良くできる部分には手が加えられ、それ以外の部分はそのままだが、2万5000ポンド(325万円)もの費用がかけられておりACS2に不足はない。ちなみに装着したいパーツはユーザーが選べる。どの程度の変化なのか、新しいACS2スポーツを確かめてみよう。

見た目だけではないチューニング

手始めにS55と呼ばれる3.0Lの直6エンジンは410psから503psへとパワーアップされ、パワー・ウエイト・レシオはM4 GTSを超える数値を獲得している。M4 GTSは高価なウォーター・インインジェクション・システムを備え、価格も12万ポンド(1560万円)に達するのだから、5110ポンド(66万円)の内容としてはかなりの戦闘力向上といえる。ちなみに、エンジンカバーの塗装をすると、490ポンド(6万円)の上乗せとなる。

2830ポンド(37万円)のスポーツエグゾーストには、もとから付いているガソリン・パティキュレート(微粒子)・フィルター(GPF)と電子制御バルブが残される。サイレンサーは小ぶりなものになり、テール周りのアピアランスを美しく仕上げている。太いマフラーカッターはマット仕上げのカーボンファイバー製。好みでクローム仕上げかダークセラミック仕上げも選べる。

スタイリングの面では、ACシュニッツァー・オリジナルのフロントスプリッターにサイドスカート、ルーフエンドとトランクリッドのリアスポイラー、リアディフューザーが追加され、すべてカーボンファイバー製となり、合わせて4635ポンド(60万円)。

トランクリッドには高くそびえるウイングも選べ、2840ポンド(27万円)。ガーニーフラップは130ポンド(2万円)となる。ACシュニッツァーは、全てが意味のあるダウンフォースを発生させるとしている。これらの明らかな仕上がりを実際に目前にすると、それぞれの価格は比較的安く思える。

6カ月の開発期間を掛けて生み出されたACシュニッツァー製のRSサスペンションは、2640ポンド(34万円)。標準のM2コンペティションとは異なり、伸縮、伸長それぞれ減衰力を手動で調整が可能で、車高も最大40mmも下げることができる。ちなみに鮮やかなサンセット・オレンジの塗装は、BMWの標準色となる。

リニアなパワー感で実感の湧かない速さ

目立つボディ・カラーも手伝っているが、BMW M2コンペティションはコンパクトなボディながら、そもそも存在感の強いクルマではある。そこへACシュニッツァーの手が加わり、その押しの強さは明確に増した。車高は明らかに低くなっており、ホイールアーチいっぱいに収まる鍛造20インチ・ホイールが、さらにスタンスを強調する。

インテリアも要所要所に手が加えられているが、好みで選ぶことができる。ロゴ入りのハンドブレーキ・カバーはそのままだが、アルミニウム製のペダルとシフトパドルは交換されている。薄い金属に軽量化のための穴が開けられ、どこかおもちゃっぽく見えるものの使い勝手は良い。

座り心地の良いシートも含めて、すべてはACシュニッツァーの工場製だ。ロールケージやハーネス、余分なアルカンターラは付いていない。

鮮烈な印象を残した514psを誇るE60型のM5もそれほど昔のクルマではない。ほぼ同じ最高出力が、ACS2にも宿っている。セグメントでいえばふたつは小さな部類のクルマだ。直6ターボが生む最大トルクは66.2kg-mに達し、E60型M5に搭載されていたV10ユニットを凌駕する。

実際加速させてみると間違いなくACS2の直線加速は速いのだが、静止状態から161km/hまで8秒でこなすほど、鋭さは感じられない。ベースとなったM2コンペティションと同様に、パワーデリバリーが極めてリニアで、ドラマチックさが薄いためだろう。

エンジンのサウンドはより深みが増し、活気に溢れ、ボリュームも増しているが、どこか鼻に掛かったような音質。回転数を上げても変化が単調なのは従来通りだが、アウトバーンの追い越し車線では躊躇なく240km/hを超える力を秘めている。320km/hも道路が空いていれば届くかもしれない。

生粋のスポーツカーへ生まれ変わった

ベースが優れたM2コンペティションだから、ハンドリングはさらに素晴らしい。リアサスペンションにはボールジョイントが採用され、M2が持っていたテールの不安定さを解消している。また、サスペンションのストロークが半分に減り、重心高が下がったことも明確にわかる。

流石にポルシェ・ケイマンGTSとの比較はできないが、オリジナルのM2コンペティションと比べれば、明確にACシュニッツァーACS2は生粋のスポーツカーといった性格が強くなっている。磨き込まれた足の速いクーペという感じは薄くなり、ピンと張り詰めた雰囲気だ。自宅からの往復も自走でこなせつつ、サーキットでの走行会用に仕上げられたような印象すらある。

中ほどの設定のダンパーは一般道にはかなり硬めで、フロントタイヤのキャンバー角も強めのネガティブ。ステアリングの操舵感は想像以上に重たいが、レスポンスは面白いほどシャープで正確だ。

乗り心地は、滑らかな路面でない限り驚くほどに悪い。速度を上げればダンパーの動きも多くなり、乗り心地は若干改善するものの、低速で走らなければならない場所ではどうしようもない。

滑らかな路面なら、ACS2は一気に輝きを増す。オリジナルよりもグリップレベルが増し、アンダーステアもずっと発生しにくくなっている。簡単に派手なテールスライドへ持ち込め、素晴らしいヨー方向の制御とバランス性が相まって、コントロールもしやすい。驚くべき繊細さでオーバーステアを味わうこともできる。

手動で変えられるダンパーの減衰力を穏やかにし、19インチホイールにダウンすれば、ACシュニッツァーらしい滑らかな乗り心地に変わるはず。リアタイヤの幅は標準と同じ265で設定されているが、懸命な判断だったといえるだろう。もし太くしていれば、クルマの備える「遊び心」はずっと影を潜めてしまったはず。

優れたベースをさらに引き立てる仕上がり

標準のM2コンペティションも素晴らしいドライバーズカーで、5万1030ポンド(663万円)という価格はバーゲンだと思える内容を備えている。そのクルマをベースにしたACS2も、すべてのモディファイ・オプションを選択しなかったとしても、価値は充分に高い。施されるチューニングにはACシュニッツァーの保証が付くだけでなく、BMW純正の保証も無効にならないという点も大きい。

興味を持った読者もいると思うが、ポルシェ718ケイマンGT4がACS2の金額で購入できるという事実には気に留めておきたい。ケイマンGT4は、ACシュニッツァーACS2ほど路上ではユニークな存在でもないし、実用性が高いわけではない。だが本来備わる秀でたダイナミクス性能は、ACS2スポーツでも届かない領域にある。

オリジナルのM2コンペティションも秀逸だが、このチューニングカーを否定するものではない。素晴らしいエンジンとサスペンションのセットアップが、M2コンペティションに8000ポンド(104万円)上乗せするだけで手に入るのだ。

純正の19インチホイールに手を付けなければ、ポルシェ911カレラS3よりも俊足な4シーターができあがるはず。アピアランスは個性的で、高速域での走りも滑らかで、サーキットでの走行会もこのまま参加できる。この内容で6万ポンド以下(780万円)なら、納得できると思う。

ACシュニッツァーACS2スポーツ・コンペティションのスペック

価格:5万1030ポンド(663万円)+2万5000ポンド(325万円・オプションによる)
全長:4461mm(標準モデル)
全幅:1854mm(標準モデル)
全高:1410mm(標準モデル)
最高速度:305km/h(予想)
0-100km/h加速:4.2秒(予想)
燃費:-
CO2排出量:-
乾燥重量:1625kg
パワートレイン:直列6気筒2963ccツインターボ
使用燃料:ガソリン
最高出力:503ps/7000rpm
最大トルク:66.2kg-m/2350-5200rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック

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