空力特性に優れたスバルの異端児
それまでレオーネの各世代でも、セダンの派生モデルとしてクーペやハードトップは設定された。というか、もともと初代レオーネは当時の若いユーザーをターゲットとし、1971年にまずクーペを登場させ、その翌年にセダン、バンを登場させたほどだった。
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とはいえ、スバルにとって初のスペシャルティカーだったのが、1985年に登場したアルシオーネ。発売は同年6月のことで、北米市場ではそれよりわずかだけ早く、同年2月に発売された。ちなみに写真でもチラッとカタログをご紹介しているレオーネ3ドアクーペの発売は、アルシオーネより5カ月後の同年11月、そのベース車だった“オール・ニューレオーネ”のセダンとツーリングワゴンは前年の1984年の登場だった。
スバルの資料によれば“4WDの新たな方向を切り拓く高速ツーリングカーとして、世界市場に通用するクルマとすること、具体的には時速200キロで安心して走れるクルマを目指した”というのがこの初代アルシオーネだった。
プラットフォームは当時のレオーネのものを活かし、エンジンには、当初は水平対向4気筒の1.8Lターボ(EA82型)を搭載。1987年になると、スバル初の水平対向6気筒エンジンだった2.7L(ER27型)をアルシオーネ専用として搭載している。駆動方式は4WDとFFが用意され、4WDは油圧多板クラッチ方式を採用し、セレクトボタンで駆動方式が切り替えられたほか、走行条件により自動で4WDに切り替わる機能も備えていた。
先鋭的なインパクトのあるフォルムが特徴
スタイリングは、当時の3代目レオーネなどにも通じる直線基調だったが、アルシオーネでは、まさしくクサビ型といえる先鋭的なインパクトのあるフォルムが特徴だった。シャープなボディに載るキャビンは3次曲面ガラスを用いたラップラウンドウインドウで構成。航空機方式の可動式フラップでボディとツライチになるドアハンドル、スペースシップのノーズコーンをイメージした空力的フォルムのドアミラー(ハウジング)、フラッシュサーフェスホイールカバーなど、スバルらしく航空機技術をもとにした空力ボディは大きな特徴で、Cd値は0.29だった。
インテリアも“パイロットフィーリングに寄せる”の飛行機づくりの基本ポリシーに則ったもの。デザインはヘリコプターのコクピットをイメージし、メーターパネルとサテライトスイッチ、ステアリングホイールが一体で可動する方式を採用。操縦桿のような“く”の字のシフトレバーも備えた。メーターはアナログ式が標準で、エレクトロニック・インストルメントパネルはメーカーオプションで設定した。この初代アルシオーネは、輸出も含め6年間で9万8918台が生産された。
ジウジアーロによるデザインが特徴的だったアルシオーネSVX
一方で初代アルシオーネと入れ替わり“500 miles a day”をキャッチコピーに1991年にデビューしたSVXは、正式車名を“アルシオーネSVX”といい、アルシオーネの名こそ引き継いだが、メカニズムは刷新された、まったくの新機種だった。
このアルシオーネSVXで何といっても注目だったのはスタイリングだ。ショーモデルに対して75mm全幅が抑えられたものの、1770mmという当時としてはワイドなブリスターフェンダー付きのボディサイズに設定されたのは、じつはアメリカ市場からの要求に応えたもの。
そしてそのスタイリングは、イタリアのG・ジウジアーロが手がけたもの。微調整をかけて位置(高さ)の決められたミッドフレームウインドウをもつグラスtoグラスのラウンドキャノピーはG・ジウジアーロのアイデアのひとつで、量産化への難易度は非常に高いなか、スバルの技術力により実現されたもの。ガラス自体も生産技術の新開発により作られた、三次元曲面のUVガラスが使われた。なお、もともとの案ではヘッドライトはリトラクタブル式だったところを、グリルまわりのデザインとともに収斂させて量産車のデザインに落とし込まれた。Cd値は初代同様に0.29を達成していた。
インテリアは、初代アルシオーネほど前衛的ではなく、曲面で包まれた、安心感のあるデザインにまとめられていた。
搭載エンジンは、それまでの北米向け4気筒の2.2Lをベースに新開発されたボクサー6、3.3L(3318cc)のEG33型。オーバースクエアタイプでシリンダーブロックはアルミダイキャスト製、240ps/31.5kg−mの性能を発揮する。なめらかな加速とリニアなアクセルレスポンスを求めた自然吸気としていた。
さらに当時としては新しかった前後不等&可変トルク配分電子制御4WD(VTD−4WD)が組み合わせられた。サスペンションはサブフレームマウント方式の4輪ストラット、4WSも盛り込まれている。スバルによると、このアルシオーネSVXの生産台数は、5年半で輸出を含め2万4379台とのこと。今あらためて、なんて希少で贅沢なクルマだったのだろう……と思いが募る。
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みんなのコメント
これは最高の褒め言葉のつもりです。