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【トライデントの完全復活】マセラティMC20へ試乗 自社開発の3.0L V6 630ps 後編

掲載 更新 2
【トライデントの完全復活】マセラティMC20へ試乗 自社開発の3.0L V6 630ps 後編

最高出力630ps、最大トルク74.2kg-m

text:Greg Kable(グレッグ・ケーブル)

【画像】マセラティMC20とMC12 覇権を争うライバル・スーパーカー 全112枚

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)


マセラティらしく、MC20の3.0L V6ツインターボ・エンジンはパワフル。1L当たり210psという高出力型で、最高出力は630ps/7500rpmを実現した。最大トルクは74.2kg-m/3000-5500rpmがうたわれる。

トランスミッションは、トレメク社製の8速デュアルクラッチAT。最新のシボレー・コルベットと同じユニットとなり、ステアリングホイールにシフトパドルが備わる。リミテッドスリップ・デフも装備する。

ドライビングモードの設定は、GTとスポーツ、コルサ、ウェットの4段階。ロータリー・コントローラーですぐに切り替えられる。

MC20のエンジンは、偽りなく特別。GTモードを選び4000rpm以下で運転していても、充足感は半端ない。トルクが極めて太く、フレキシブルなクルージングを楽しめる。それでいて、スポーツ・モードを選べば8000rpm目掛けて痛快に吹け上がる。

高度な点火システムが、優れた応答性と柔軟性を生んでいる。ドライバーが求めれば、強大な瞬発力も引き出せる。低いギアを選べば、弾けるような中間加速と、爽快な高回転域での味わいを引き出せる。

パワーデリバリーはリニア。回せば回すほど、見返りが得られる。最高の内燃エンジンの1基に選べそうだ。

1つ引っかかったのが、トランスミッション。シフトアップは、ハーフスロットルでもフルスロットルでも見事。だがシフトダウン時は滑らかさが足りず、ATモードでは不自然な場面があるようだ。注意していれば感じる、という程度だが。

少し穏やかな状態が最高の体験

筆者としては、サウンドはもう少し興奮度を追加したい。合成音なしで、聴き応えのあるリアルな音響を実現している。しかし、MC20のほかのスリリングさには並んでいないと思う。

素晴らしい走りを披露するだけに、刺激的なアフターファイヤーなど、もっと心も震える聴覚体験が欲しくなってしまう。スポーツ・モードのエグゾーストノートはメロディアスだが、さらに調整することもできたのではないだろうか。

ターボチャージャーの響きと、ウェイストゲートのホイッスルは気持ちいい。もう1段階、濃い個性があればと思う。

直線パフォーマンスは、間違いなくトップクラス。後輪駆動のロードカーでありながら、0-100km/h加速は3秒を切る。ローンチ・コントロールを用いたスタートダッシュは極めて鋭い。

トラクションも圧倒的で、160km/hを超える速度域まであっという間。マセラティによれば、0-200km/h加速も9秒以内でこなすという。最高速度は326km/h。MC12より3km/hだけ低い。

MC20は息を呑むほど速いが、少し穏やかな状態が最高の体験を与えてくれる。太いトルクを活かし、高めのギアで中回転域を扱える。GTモードで遅い車列に追いついたら、シフトダウンし、素早くアクセルペダルを踏み込むだけで追い越しは完了だ。

マセラティは、サーキットでの走行会だけでなく、日常的な運転にも対応できるモデルとしてMC20を開発したと主張する。確かに、乗り心地はその考えを反映しているようだ。モデナの舗装が荒れた田舎道で、実感することができた。

サスペンションもステアリングも抜群

ドライブモードごとに2段階の減衰力特性が選べ、滑らかとまではいえないものの、しなやかなオンロード品質を得ている。小さな隆起部分などのいなし方は、とても印象的。大きなコブの衝撃吸収性も高い。

サスペンションは、前後ともにダブルウイッシュボーン式。安定性と姿勢制御とを、不備なく両立させている。

電動機械式を採用するステアリングも抜群。ロックトゥロックは2.2回転で、適度に軽く扱いやすい。操舵感は常に一定で、純粋な手応えが伝わってくる。サスペンションの負荷も感じ取れ、コーナリング時のグリップレベルを判断しやすい。

ブレーキング時のダイブはほぼなく、旋回時の姿勢もフラット。重心は低く、慣性も低い。繊細なステアリングでマセラティを正確に導ける。リアの秀でたグリップ力は、コーナー出口の強烈な脱出加速を生み出す。

難しいところはまったくない。MC20との一体感は、相当に濃い。

一層MC20へ惹き込まれるのは、サーキット。ブリヂストンが専用に開発したという、フロント245/35 ZR20、リア305/30 ZR20というタイヤは、滑らかな舗装でさらにその真価を発揮する。

コルサ・モードを選択すると、明確にステアリングやアクセル、8速DCT、ダンパーの特性が変化。それでいて、運転しやすさという距離の近さは変わらない。

高速コーナーを本気でプッシュしていくと、アンダーステアの気配がある。しかしエイペックスを目指すラインへ、簡単に修正できる。シャシーはアクセルペダルの操作に敏感。リアタイヤの働き次第で、ノーズを内側に巻き込んでいける。

今後のトライデントに強い期待を抱かせる

MC20の反応は漸進的で信頼でき、驚くほど意思疎通がしやすい。自由にも振り回せる。630psもあるミドシップ・スーパーカーの印象として、こんな表現につながるとは想像していなかった。

ブレーキはカーボンセラミックで、ディスク径はフロントが330mm、リアが350mm。キャリパーはフロントに6ポッド、リアに4ポッドが組まれる。ペダルの踏み始めはやや硬さが目立つが、温度の上昇とともに制動力も増していく。

ペダル操作で制動力の強さは調整しやすく、日常的な運転も充分に賄えそうだ。

スーパーカー・カテゴリーへの復活を、MC20で果たしたマセラティ。サルーンやSUVが中心だった期間を経て、われわれを唸らせる、過去の栄光を見事に映し出すようなモデルが誕生した。

フェラーリやランボルギーニ、マクラーレンなど、ミドシップ・スーパーカーの覇権争いに、マセラティは秀逸なMC20で挑む。ブランドとして、パフォーマンスの新基準に到達したことは間違いないだろう。スタイリングも特別感が強い。

グループPSAとFCAとの合弁企業、ステランティス傘下のプレミアムブランドとして、盤石な可能性を感じさせる。今後のトライデントに、強い期待を抱かせてくれる1台だ。

マセラティMC20(欧州仕様)のスペック

英国価格:18万7230ポンド(2808万円)
全長:4669mm
全幅:1965mm
全高:1221mm
最高速度:326km/h
0-100km/h加速:2.9秒
燃費:8.7km/L
CO2排出量:262g/km
乾燥重量:1475kg
パワートレイン:V型6気筒3000ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:630ps/7500rpm
最大トルク:74.2kg-m/3000-5500rpm
ギアボックス:8速デュアルクラッチ・オートマティック

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みんなのコメント

2件
  • アルファもそうだけど自社開発のとか言っておいてフェラーリのエンジンの流用とか多いよね。
  • 最近のスーパーカーにしては、良心的な価格設定。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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