『AUTOCAR』ができるまで
本誌AUTOCARは、英国で紙の雑誌を発行している。創刊は1895年にさかのぼり、「世界最古の自動車雑誌」であることを誇りにしている。創刊以来、我々の焦点は変わらないが、雑誌を作るプロセスは大きく変わった。
【画像】紙媒体の雑誌ができるまで【英国AUTOCAR誌の「製造工程」を写真で見る】 全8枚
週刊誌として5日間で70ページ以上を埋めるのは大変な作業だ。待望の新型車発表や試乗会のように、かなり前からカレンダーに書き込まれているものもあるが、急な取材が入ることもある。いずれにせよ、記事は各セクションの担当編集者のブリーフに従って執筆されていく。記者には文字数、画像の大まかなアイデア、提出期限などが依頼される。
期限厳守だが、仕事量は記事の内容によってまったく異なる。クルマの試乗を例にとれば、午後に田園地帯をドライブするような簡単な仕事もあれば、何日もかけて移動し、ハンドルを握り、写真撮影をしてから、キーボードに向かうこともある。
ライターは落ち着ける時間と場所を見つけ、原稿を準備できたら編集者に渡す。そして、制作チームがそれを出版物として仕上げる準備を整えていく。
画像選び イメージCG作成も
まず表紙で使われる画像は、社内カメラマンが撮影した写真やピクチャー・ライブラリー、企業のプレスサイトなどから写真編集者のベン・サムメレル=ユードが厳選し、構成する。
また、水晶玉を覗くように自動車業界の未来を占い、イメージスケッチ(レンダリングCG)を描くこともある。サムメレル=ユードは自身のイラストレーションの才能を活かし、まだ見ぬ新型車を非常に細かく描写してしまう。
彼はこう説明する。「ニュース編集者のフェリックス・ペイジが、概要をシンプルに説明してくれるんです。最近のコンセプトカーや各ブランドのデザイン言語を見て、それから現行車のプロポーションを見る。それが一番シンプルな方法です。一方、(昨年)11月8日にスクープしたトヨタ・セリカの復活のように、もっと未来的なものの場合は、その形をもう一度考えてゼロから描く。アウトラインを描いて、グリルの形もぼんやりと描いて、それを埋めていく。新型A6なら目隠しをしたままでもできますよ」
現代のクルマ、特にドイツ車の場合は均質性があるため、スケッチは比較的簡単だという。「ロシア人形みたいなものですよ」と冗談めかして言う。ボルボEX30、ロータス・エメヤ、ダチア・ダスターなどもそうだ。
すべては時間との戦い
その後、デザイン作業の次の段階に入る。アート・エディターのサラ・エズギュル、ジュニア・デザイナーのタラ・トゥーヒー、グループ・アート・エディターのスティーブン・ホプキンス(愛称「ホッポ」)は、サムメレル=ユードから提供された画像とストーリー構成を基に、ページレイアウトに取りかかる。
エズギュルは、サムメレル=ユード、関連セクションの編集者、そして編集長のサミー・シャーとの間で循環的な話し合いが行われることで、すべての作業が素早く「進化」していくと述べている。
エズギュルは現在デザイン中の特集を指してこう話す。「原稿はWordに書いてあるんですが、4ページになるはずです。写真がなかったので、先ほどベンに頼んで探してもらいました。今日、デザインについて考えた結果、見開き2ページの方がいいと思ったので、サミーと話し合い、セクション編集者に変更を承認してもらったんです」
「レイアウトして、ベンと写真について話し合いながら、ストーリーを読み、ページ上でどう見せるべきかの感覚をつかんでいきます」
刻々と迫る時間のプレッシャーの中で、全員が協調して仕事をするためにも、編集と制作の間を行ったり来たりすることは不可欠である。時計の針の音がこれほど威圧的に感じられることはほとんどない。
毎号のページ数と制作時間を考えると、毎週の締め切りに間に合わせるために各ページに割ける時間は平均して30分強。これは理想的な状況下での話であり、実際には機材トラブルや交通機関の乱れ、パンデミックなど、さまざまな要素が仕事に支障をきたす。これに加えて、ウェブ版の更新や管理もしなければならない。
内容が決まり次第、印刷会社へ
このように混沌とした状況に秩序をもたらすのがシャー編集長の仕事であり、ページの並べ順を指示し、仕上がりを見守る。
「各作業にどれくらいの時間がかかるか、予定より遅れているのか進んでいるのかがわかるくらい、長い間一緒に仕事をしてきました」とシャーは言う。出来上がったページのデータは、複数のセクションに分けて印刷所に送られるが、提出期限ギリギリになって一大ニュースが飛び込むこともある。
「印刷会社は少し余裕を持たせてくれますが、他の印刷物との兼ね合いもあるので、数分以上遅れると電話が鳴り始めます。とはいえ大きなネタを逃したくはないので、編集者と話し合い、判断することになります」
シャーは記事校正においても重要な役割を担っている。副編集長のクリス・カルマー、特別寄稿者のピーター・マクセーン、ティム・ディクソンとともに、ルールに忠実に書かれているか、読み応えがあるか、AUTOCARらしさがあるか、法的に問題がないか、内容が正確かどうかを確認する。その後、画像のキャプションと見出しが追加される。
同時に、外部チームが各ページの画像を仕上げる。道路標識などの細部が見出しや他のページとぶつからないようにし、必要に応じて色調補正や画像の明暗を調整する。
その後、各記事はシニア・エディターに送られ、校正される。「完成したページは少なくとも3回は読まれます。担当した副編集長、校正する編集者、そして最後にわたしかクリスが目を通します。ページはどんどん更新されていくため、片目で常に時計を見ているような状態であっても、最終版にはしっかりと目を通すことが重要なのです」とシャーは言う。
一方、エズギュルが1ページずつ承認し、複写作業をチェックし、すべてを確認する。
ランドローバー数台分の重さの紙
最終的に、ページは雑誌のセクションにまとめられ、PDF形式でロンドンのAUTOCAR本社からウォルバーハンプトンの印刷会社、ウィリアム・ギボンズ&サンズに送られる。
データが印刷会社に到着するとすぐに(通常は金曜日の昼過ぎ)、印刷版にセットされる。見開きの上側に4枚、下側に4枚の刷版がある。2人の印刷オペレーター(1人はページの上半分、もう1人は下半分)が、正しいカラーフォーマットで正しくセットされているかをダブルチェックする。「スタート」ボタンを押すと、まず光沢のある表紙が印刷され、次に試乗記で構成される中間セクションが印刷される。
ページがラインから出てくるとき、オペレーターは印刷機にプログラムされた色と一致しているか、また何か問題がないかをチェックする。印刷とチェック作業は、毎週末に何万回も繰り返される。
印刷の材料は膨大で、表紙に使われる紙だけでもアリエル・アトム1台分の重さがある。さらに中面に使われる5トンを加えると、『AUTOCAR』各号の総印刷部数はランドローバー・ディフェンダー2台分よりも重くなる。年間100万部以上の印刷を合わせると、超音速旅客機コンコルド3機分、280トン以上になる。
月曜日の朝までにすべてを印刷する。その後、半完成コピーがシニア・マネージャーのもとに運ばれ、正しい順序で正しく印刷されているか再確認される。
月曜早朝に出荷 読者の手元へ
そして許可が下りると、丹念に縫い合わされ、表紙が取り付けられ、サイズに合わせてトリミングされる。品質管理のため、1000部につき数部が抜かれる。
毎週月曜日の午前3時頃には印刷物が完成する。
その後、小売販売用と購読者用の2つのバッチに分けられる。前者はパレットに積まれ、午前4時の集荷に備えてコベントリーの配送拠点に向かう。一方、購読者向けはバーミンガムに運ばれ、月曜日の午後に郵送される。そして店頭に並ぶか、郵便受けに投函され、読者の手に渡るのだ。
このように、雑誌の印刷工程は膨大で、しかも容赦がない。今度自動車雑誌を読むときは、たゆまぬ努力を続けている多くの人々に思いを馳せてみてほしい。
ウェブサイト版ができるまで
ウェブ版の作業工程は、紙媒体とは多少異なる。ネタから記事が出来上がるまで、すべて1人の人間から迅速に行われることもあるが、ほとんどの場合、複数の人を経由する。
ウェブ版の主力となるニュース記事は、フェリックス・ペイジから送られてきて、デジタル編集者のわたしの下でSEO対策が行われる。その後、別の記者の手に渡り、副編集長に送られる。最後に、インターネット上の読者に向けて発信される。
速報性のあるニュースは展開が早く、副編集長が承認すれば即座に掲載できる。
雑誌とウェブ版はどちらも絶え間なくコンテンツを供給していく必要があるが、その方法はまったく異なる。紙媒体は今日ここにあり、明日には消えてしまう(登録すればデジタルアーカイブは閲覧可能)のに対し、インターネットに掲載される記事は永遠に生き続ける。
レビュー、解説、特集など、ニュース以外のものは常に最新かつ正確な情報を提供する必要がある。
この種の記事は複数の情報源をベースに作られるが、クルマのレビューは雑誌記者が書く。もし、リゾート地で高級車を運転している記者をうらやましいと思ったときは、彼らが厳しい締め切りに追われ、正しいフォーマットで書かなければメールの着信音が鳴り止まないということを思い出してほしい。
(翻訳者注:本稿はAUTOCAR英国編集部の記事作成・校正・印刷プロセスを紹介するものです。日本語版のAUTOCAR JAPANのものとは異なります)
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