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【販売目標たったの600台】トヨタ・グランエースの存在意義 「無くてはならない」理由を試乗で探る

掲載 更新 6
【販売目標たったの600台】トヨタ・グランエースの存在意義 「無くてはならない」理由を試乗で探る

日本のニーズが汲まれたグランエース

text:Toshifumi Watanabe(渡辺敏史)

【画像】グランエースが気になるなら……「箱」な人気車【3選】 全84枚

photo:Satoshi Kamimura(神村 聖)

19年にフルモデルチェンジが施された300系ハイエースは、ASEANや中南米、アフリカなどで販売される国際戦略商用車だ。

日本はサイズや積載性の関係で200系が継続販売されているが、そう遠くない先に、この300系を土台に車格を整えた新型が投入されるものと思われる。

ただし、セミボンネット型を採りながら4ナンバーに収めると荷室容量が減ることになるわけで、キャブオーバー型にアレンジされるかなどの詳細は定かではない。

300系ハイエースは仕向地のニーズに合わせて貨物用やコミューター用など様々なアレンジが可能だ。

そして、その内外装をショーファードリブン向けに架装したモデルとしてマジェスティがタイ向けとして、グランビアがオーストラリア、台湾向けとして販売されている。

いずれもその広大な空間を6~10人乗りとして用いており、VIPなどの送迎にも対応する設えだ。

日本で販売されるグランエースは、このマジェスティやグランビアと同じコンセプトで開発された。

内外装はほぼ共通だが、シートアレンジなどは日本のニーズが汲まれて、アルファード&ヴェルファイアやハイエースワゴンとの差別化が図られている。

生産はハイエースなどの生産を担うトヨタ車体のいなべ工場が担当。年間販売目標は600台というから、トヨタのシェアに対すればかなり少数の見立てということになるだろう。

なぜ日本でグランエースを売るのか。

グランエース、日本で売られる理由は

トヨタがなぜ日本でグランエースを売るのか。

1つは高まるインバウンド需要への対応があったと想像できる。4~5名のゲストを人数分のXXL級スーツケースと共に送迎するというニーズを考えると、アルファード&ヴェルファイアには文字通り荷が重い。

一方でハイエースワゴンは10人の乗車定員に拘りすぎていて、相応の賓客を迎えるには席間に余裕がない。

どちらにもできない芸当を持つグランエースに少ないながらもニーズがあると踏んだのだろう。

おわかりの通り、そのピークはトヨタが最高位のスポンサーとなっている今年の東京オリンピック&パラリンピックにあったわけだが、コロナ禍の中、オリパラは延期となり、玄関口である国際空港は閑古鳥だ。

観光業は送迎車どころではないという中で、グランエースにとっても出鼻をくじかれた形となっている。それもあってか、東京にいてさえこのクルマをみる機会は相当少ない。

とはいえ、時が経てばインバウンドは確実に戻ってくるわけで、建設やリニューアルのラッシュが続く続いたハイクラスのホテルや旅館、もしくはハイヤー会社や企業の社用など、グランエースの趣旨にフィットするニーズも増えてくるだろう。

或いはトヨタは殆ど頭数として勘定していないだろうが、現物に触れる機会が増えるにつれ、個人需要も生まれてくるのかもしれない。

シンプルなグランエースのグレード構成

グランエースのグレード構成はシートレイアウトで区別されており、走行性能や前席周りの装備面での差異はない。

基準グレードにあたるGが4列シート/8人乗りであるのに対して、プレミアムは3列シート/6人乗りとなる。

今回の試乗に供したのはプレミアムの側で、後部にはアルファード&ヴェルファイアの上位グレードに採用されるエグゼクティブパワーシートをベースにした独立座席が等しく4脚並べられる。

ちなみにGの場合は、このエグゼクティブパワーシートが2脚、マニュアルのキャプテンシートが2脚、そして最後列には6:4可倒のベンチシートが並べられるかたちとなる。

エンジン/トランスミッションは1種類

エンジンはランクル・プラドにも搭載される1GD-FTV型直噴ディーゼルターボのみ。2.8L 4気筒のそれは、177ps/45.9kg-mを発揮する。

ミッションは6速AT、駆動方式はFRのみと至ってシンプルだ。

グランエースの先進運転支援システム

ADAS(先進運転支援システム)系はプリクラッシュセーフティやレーンキープアシスト、ブラインドスポットモニターやリアクロストラフィックブレーキなとほぼフルスペックとなるが、レーダークルーズコントロールについては手動式サイドブレーキのため、30km/h以下の追従機能はない。

視界周りもパノラミックビューカメラやデジタルルームミラーなどで死角確認をしっかり補完している。

また、アップル・カープレイやアンドロイド・オートに対応する8インチのディスプレイオーディオも備わるなど、法人需要前提の割に装備面は相当充実しているという印象だ。

グランエースに試乗した印象は?

日本の路上にいればその巨大さにちょっとたじろぐグランエースだが、国際的にみればちょっと大型のバンとしてほぼど真ん中のところにいる。

海外勢を見渡すと、日本では受注販売となっているメルセデス・ベンツVクラスのエクストラロングにサイズはほど近い。

それでも最小回転半径は5.6mと小さく、取り回しにさほど苦にならない辺りはさすがだ。

FFベースのミニバンと違ってフルフレーム構造のため、上屋に入るには高床の乗降感が伴うが、ステップやグリップはしっかりと配されているおかげで極端な窮屈さはない。

室内高はアルファードより110mm低いが、身長181cmの筆者が座っても天井の低さは感じなかった。

後ろ4席の掛け心地は等しく、左右席間が若干異なるのみだ。各々自在に電動スライドとリクライニングが可能だが、前側のシートがっつり倒してオットマンを使うような状況になると、さすがにその後ろの席は座り辛い。

もっとも、フルリクライニング状態で走ることは万一の衝突時などに余計な危険も伴うので、こういった機能は自制心をもって扱うことが重要だ。

後席にいて感心させられたのは、2列目と3列目とで乗り心地の差異が想像以上に小さかったことだ。

サスペンション全体のセットアップを柔らかめに躾けたほか、後軸側にはコイル式のトレーリングリンクを採用、周波数感応型のダンパーや制振材の多用など、音/振動関係の対策は多岐にわたっている。

また、シャシー構造の恩恵もあってか、最後列にいても不快な突き上げなどは極力封じ込められている。

床板周りの振動特性などはアルファード&ヴェルファイア以上と思わせるほどだ。

商用車ベースとは思えぬ乗り心地

後席でも感じられた静粛性の高さは、運転する側に回れば更に肌身で実感できる。

セミボンネット型ということもあってか、ディーゼルの不快なノイズは巧く遮断されており、高速巡航くらいまでの速度域では助手席や背後の席との会話にもまったく不自由はない。

さすがに最後列の席から運転席へは声を大きくあげることになるが、この車格を鑑みればリムジンのようにマイクでも繋がない限りは仕方ないだろう。

商用車出自とは思えないのは静粛性だけではなく乗り心地も然りだ。

日本で常用する速度域のライドフィールはきちんとチェックされており、ハイエースワゴンよりは確実に上、アルファード&ヴェルファイアにほど近いレベルが確保されている。

ただし、ハンドリングやスタビリティ的なところをいえば、3t超えの荷重を想定してライトトラック用タイヤを履くこともあり、ドライバーに伝わるインフォメーションが根本的に曖昧なところが気になった。

ロール量などはよく制御されているが、高速域での心理的な安心感はさすがに商用車のそれだと思ったほうがいい。

この点ではアウトバーン巡航を前提としたVクラスに優位があるが、そこは想定速度域や施しの目的がはっきりと違うクルマであることを認識すべきだろう。

むしろ日本的な法定速度内で、どこまで全ての乗員が等しく快適にいられるかに注力した、そこにグランエースの価値がある。

VIP 4人を荷物ごと束ねて平等にもてなせる1台などという選択肢は今まで日本になかったわけだ。

トヨタ・グランエース 試乗車スペック

グランエース・プレミアム

価格:650万円
全長:5300mm
全幅:1970mm
全高:1990mm
最高速度:-
0-100km/h加速:-
燃費:10.0km/L(WLTCモード)
CO2排出量:259g/km
車両重量:2740kg
パワートレイン:直列4気筒2754ccターボ
使用燃料:軽油
最高出力:177ps/3400rpm
最大トルク:46.1kg-m/1600-2400rpm
ギアボックス:6速オートマティック
乗車定員:6名

グランエースG(差分のみ)

価格:620万円
乗車定員:8名

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みんなのコメント

6件
  • 勘違いして買ってオラオラする輩出るかと思ったがいまのところいなくて良かった良かった
  • 大きさや内容を考えたり、ベンツのバンなんかと比べると、620万円って意外なほど安い。

    販売台数少ないっていうけど、東京都心じゃコンスタントに見かけるようになってる。
    ボディカラーは例外なく黒色。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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