EQS並にスムーズなドライブトレイン
プロトタイプへの同乗が許されたメルセデス・ベンツEQE。全長がEQSより短い分、車内空間も限られてはいる。それでも現行のEクラスと比べれば、着座位置は65mm高く、車内長は84mm長く、遥かに広い。特にリアシート側のゆとりは、印象的なほど。
【画像】開発中 メルセデス・ベンツEQE 350 欧州で競合する純EVの上級サルーンと比較 全107枚
荷室は430L。EQSより180L、Eクラスより20L小さい。リアシートの背もたれは可倒式で、トランクスルーとすることで大きな荷物も載せることは可能だ。
ボンネットはそれなりに長いが、内側には大きな微粒子フィルターが積まれている。ボンネットは固定式で、荷室空間はない。フロントガラスのウオッシャー液は、左のフロントフェンダーに用意された補充口から注げる。
さて、EQEの運転と行きたいところだが、今回はプロトタイプで許されなかった。それでも、発見できたことは少なくない。
まず電動のドライブトレインは、EQS並みにスムーズ。最新のラグジュアリー純EVの基準でいっても、EQEは極めて静かで滑らかだ。リアの駆動用モーターは、強い負荷が掛かった時に、僅かにささやく程度。
同乗したEQEは後輪駆動の350で、20インチのアルミホイールにスタッドレスタイヤが組まれていたが、ロードノイズも極めて小さかった。流れるようなフォルムのおかげで、風切り音も静かだ。
アウトバーンで高速域まで確かめることは許されなかったが、少なくとも強風のなかで一般道を走行した限り、ボディから低く共鳴するような音も聞こえなかった。オプションの、二重ガラスを装備していた効果も大きいだろう。
車重2450kgにシングルモーターでも鋭い加速
突出した洗練性は、剛性が高いボディ構造も貢献している。基本的にはEQSと設計は近いものの、スチール材の使用割合が大きく、ねじり剛性はEクラスを大きく上回るという。
サスペンションは、前後ともにマルチリンク式のスチールコイル。オプションでエアサスを組むことができる。試乗したプロトタイプにも搭載されていた。
パフォーマンス重視のEQEも控えているが、350はより実用的な航続距離へ重点が置かれている。開発責任者のオリバー・レッカー氏が説明する。
「EQEの350は、ラインナップの入り口です。動力性能と経済性をバランスさせています。さらに強力で高速なモデルが登場することは、周知の事実だと思いますが」
ドライバーが引き出せるトルクは、ドライブモードによって変化する。経済的なコンフォート・モードでは、最大トルクの80%に制限される。スリッパリーでは50%、スポーツ・モードでは90%、スポーツ+を選ぶと100%の53.9kg-mを発揮できる。
アクセルペダルを踏むと瞬間的にトルクが立ち上がり、後輪駆動のEQE 350は即座に発進する。車重2450kgの4ドアサルーンにシングルモーターでも、スポーツ+を選んだ時の加速はかなり鋭い。最高速度は210km/hでリミッターが掛かる。
メルセデス・ベンツによれば、0-100km/h加速は5.6秒だというから、Eクラスの450 4マティック相当だといえる。四輪駆動のテスラ・モデルS ロングレンジの場合、0-100km/h加速は4.1秒、後輪駆動のポルシェ・タイカンは5.4秒だ。
低い重心位置で機敏に身をこなす
回生ブレーキの強さは、EQSと同様にステアリングホイール裏にあるパドルで、D+とD、D−の3段階から調整できる。D+では、アクセルペダルから右足を浮かせても流れるように惰性走行するが、D−ではブレーキを掛けたように急激に減速する。
その中間がD。従来のエンジンブレーキと同じ減速感が与えられ、緩やかに速度が落ちていく。
大きな駆動用バッテリーをフロア下に詰め込んでいるため、重心位置は低い。EQEはEクラスより安定感が高く、路面へしっかり追従して走る印象を受けた。レッカーがスポーツ+でコーナーを攻め込むと、タイトに食らいつくように感じられた。
EQEはボディサイズが大きく、車重もかさむ。それでも走りに妥協はなく、とても機敏に身をこなす。姿勢制御にも優れ、横方向の負荷が増大すると同時に、抑制されたロールも徐々に増えていく。
操縦性は、直感的で反応の予想がしやすく、常に落ち着いている様子。アダプティブダンパーと、オプションのエアサスペンションの処理からも感じ取れる。
同乗した350には、オプションとなる四輪操舵も装備されていた。システムには2段階あり、1つは最大4.5度、もう一方は最大10度までリアタイヤの向きが変わる。後者なら、Cクラス並みの最小回転半径が得られるという。
従来モデルを凌駕する訴求力
ダンパーの設定は硬めで、ホイールベースが短いため、乗り心地の質感はEQSほど平穏ではない。それでも、印象的なしなやかさと安定感を実現させていた。タイヤは265/50と295/40という20インチながら、車内にはほとんど衝撃も伝わってこなかった。
大きなうねりや橋桁の継ぎ目などを通過すると、流石に揺れは伝わるものの、ツギハギ部分や舗装が剥がれた穴などは、巧みに均せる。この足さばきは、モデルSより大幅に上質だと感じる部分。長距離移動も極めて快適にこなせそうだ。
具体的なEQEの印象は、実際にステアリングホイールを握ってからとしたいが、第一印象のインパクトは間違いなく強かった。製造品質や走行時の洗練性、動的能力や乗り心地、インテリアの雰囲気など、その訴求力は従来モデルを凌駕している。
内燃エンジンのEクラスだけではない。テスラ・モデルSに対してもそうだ。
後輪駆動の350はエントリーグレードということで、圧倒させるほどのパフォーマンスは備えていないかもしれない。といっても、加速力は充分以上。大きな駆動用バッテリーと高度な回生ブレーキのおかげで、航続距離はクラス最高水準でもある。
メルセデス・ベンツEQEの競争力は間違いなく高いはず。自宅に充電器があれば、充足度の高いラグジュアリー・サルーンになるのではないだろうか。運転できる日が、今から楽しみでならない。
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みんなのコメント
ぬるっとしたデザインが・・・。
もっと、きりっとシャープになればなぁ・・・。