そもそもドゥカティが単気筒を造るのは約30年ぶり!
ドゥカティの単気筒エンジンと言ってオールドファンがまず思い浮かべるのは、ベベルギヤカム駆動(通称ベベルドカティ)で1960年代に登場した250のマッハ1、さらには初めてデスモドロミック(吸排気バルブをカムとロッカーアームだけで作動させる強制開閉システム)を採用した250マークIIIデスモあたりだろうか。
【画像13点】脅威のビッグボア116mm!ドゥカティの新開発シングル「スーパークアドロ・モノ」エンジンを写真とイラストで解説
その後、ドゥカティがLツイン主体になって単気筒の系譜が途絶えたものの、1993年に突如現れたドゥカティ製単気筒モデルがスーパーモノ(550cc)だった。当時のスーパーバイク851/888系Lツインの後方気筒を取り除き、前側気筒のみをほぼ水平配置した水冷デスモドロミックDOHC単気筒は、550ccで最高出力76ps/1万rpm、最大トルク50,8Nm/8000rpmを発揮。その後572ccとなり、よりパワフルにされた軽量マシンのエンジンは、ドゥカティファンやエンスージアストに注目されたものの、1997年までに生産が終了。
車名の記憶は残るものの、当時も今も実車を目にしないのは、同車が1990年代の欧州で盛んだったSOS(Sound of Singles)に参戦するレース専用マシンだったから。生産台数は1995年までに65台、1997年までに2台とされ、日本へも数台が上陸したというが、多くのライダーは目にすることも味わうこともできないままフェードアウトしていったモデルだ。
そのデスモドロミック採用の単気筒、ボア×ストロークが100×70mmというビッグボアのショートストロークエンジンで、レース専用としてかなり高回転重視の特性だったと想像できる。
■ちなみにドゥカティ スーパーモノとは……
1993年から1995年の間に計65台が製造されたというレース専用車のスーパーモノ。水冷Lツインの851/888系スーパーバイクをベースに前側気筒のみ水平配置した単気筒は、90度Lツインと同等のダイナミックバランスを確保すべく、後方気筒側にダミーのコネクティングロッドを設けて振動を低減した。
超ショートストローク型単気筒「スーパークアドロ・モノ」
そして30年後の現在に登場した単気筒エンジンも、ボア×ストローク116×62.4mmという超ビッグボアのショートストローク型だ。ただし、ハイパーモタード698モノに初搭載された「スーパークアドロ・モノ」と称されたそのエンジンは、あくまで公道での走りを重視したものだとアナウンスされている。
2012年登場の1199パニガーレ(実排気量1198cc)で初搭載後、1299パニガーレに受け継がれた1285ccなどの、通称「スーパークアドロ」エンジンの特徴は、ボア・ストローク比を極端にオーバースクエアな設定(=超ショートストローク型)とし、エンジンの高回転化と吸排気効率向上の両立をねらったもの。
そして高回転型で最高出力/最大トルクを発揮するエンジンに冠された名称を継承した「スーパークアドロ・モノ」だが、この単気筒エンジン、一般的に想像しがちな「手強くてパワフルな特性」ではなさそうだ。
それを裏付けるのが「3000rpmから最大トルクの70%を発生し、4500rpmから最大回転数の1万250rpmまでの幅広い回転域で最大トルクの80%を発揮する」というアナウンスで、「スーパークアドロ・モノ」の概要は以下のようになる。
・1299パニガーレの1285ccスーパークアドロをベースに開発(ビッグボアの超ショートストローク型エンジン)
・デスモドロミックのバルブ機構を採用
・46.8mmのチタン製インテークバルブ採用
・アルミ製シリンダーバレル採用
・2本のバランスカウンターシャフトにより、振動を90度Vツインと同等レベルまで低減
・直径相当で62mmの楕円スロットルバルブ採用
・オイル交換サイクルは1万5000km
・バルブクリアランスチェックは3万kmごと
そして先に登場し、話題を集めたデスモ450モトクロッサー用単気筒とはまったく別の公道用パワーユニットとして開発。2本のバランサー内蔵で振動を低減してスムーズなパワーデリバリーをねらったほか、長いメンテナンスインターバルを意識した点が、それを表している。
■名称どおり、1299パニガーレの2気筒スーパークアドロエンジンをベースに派生した単気筒。なおスーパークアドロとは、極端にオーバースクエアなショートストローク型エンジンを意味する。
■公道走行用に開発されたスーパークアドロ・モノ。エンジンの一次振動を抑制するバランスカウンターシャフトを2本採用し、ドゥカティ伝統のデスモドロミック機構によりチェーン&ギヤでバルブを駆動。クランクシャフトはプレーンメタルベアリング支持。
■ラージボアでも安定した燃焼を実現する燃焼室形状と、燃焼ガスの乱流を最適化したインテークダクトのデザイン。パニガーレベースながら中速域トルクを太くし、ピークトルクへの立ち上がりを穏やかにした特性をねらうべく、バルブオーバーラップや作用角を減らし、インテークダクト径も適度に絞っている。
■実排気量659ccながら、車名の数字表記が異なることが近年のモデルでは多々あるが……それはさておき698の単気筒の特徴は現行量産車で最大の116mmボアと、62.4mmの超ショートストローク(ボア・ストローク比0.53)。
■ビッグボアのピストンは、裏側にダブルリブを設けて強度と剛性を確保し、ピストンスカート部の高さを最小限に抑えた通称「ボックス・イン・ボックス」タイプを採用。これにより摺動抵抗を減らして高回転化が可能に。また高いピストン剛性により、ピストンピン長の短縮化・軽量化も実現。
■1299パニガーレに準じたバルブは、IN側がチタン製46.8mm径、EX側スチール製38.2mm径の大サイズ。極低回転での燃焼コントロールが難しいとされるビッグボアの燃焼室だが、同エンジンではアイドリング時や低回転域での安定した燃焼効率も加味し、1299パニガーレ用に対してバルブオーバーラップを45度から20度へ狭め、作用角とバルブリフト量も減らしている。なお、デスモドロミック機構はチェーン+ギヤの組み合わせで作動し、ロッカーアームはDLC(ダイヤモンドライク・カーボン)コーティングで、低摩耗かつ滑らかな作動性を実現。
■直径62mm相当の楕円形状スロットルボディはミクニ製。1299パニガーレの67.5mm相当サイズに対して小径化し、吸気流速を適正化。フル・ライド・バイ・ワイヤによって制御されるスロットルバルブの下部に1インジェクターを配置。またハイ・ミディアム・ローの3パワーモードのマッピングも制御。
■ゴールド基調のシリンダーヘッド、クラッチ、ジェネレーターカバー類は、マグネシウム製。軽量でありながら、表裏に細かなリブを設けることで、剛性確保のほか、振動騒音の低減もねらった。
■単気筒ながら1万250rpmがレブリミットの高回転エンジンは、3000rpmから最大トルクの70%を発生。また4500rpmからレブリミットまでの幅広い回転域で最大トルクの80%を発生するなど、全域でフラットなトルクを発生しつつ、素早いスロットルレスポンスも両立。ワイドレンジに力強いパワーデリバリーをねらっているようだ。
未知のビッグボア単気筒は意外に扱いやすい!?
実車の走りを味わえるのは、もう少し先だが、概要から想像してみるに「スーパークアドロ・モノ」が、単にピーキーでパワフルな特性を目指したエンジンでないことは想像できるが、異例の116mmというビッグボアに対して、超ショートストロークなスペックが興味をそそる。
最も近しいライバルは、KTMの690SMC-R(および同系エンジンのハスクバーナ 701スーパーモト、GASGAS SM700も)で、搭載するエンジンは692ccでボア・ストローク105×80mm。
これも十分にショートストローク型で、相応にビッグボアであり、単気筒で想像するようなドコドコした鼓動感とは無縁のシャープさを味わわせるものだった記憶があるが、ドゥカティの「スーパークアドロ・モノ」は、それらライバル車に対して、どんな味わいや刺激で上を目指したのか興味は尽きない。現在の量産市販モデルでは最大ボアとなる単気筒エンジン搭載車、ハイパーモタード698モノの国内発売は、2024年7月の予定だ。
ドゥカティ ハイパーモタード698モノ主要諸元
【エンジン】
種類:水冷4ストローク単気筒デスモドロミックDOHC4バルブ ボア・ストローク:116×62.4mm 排気量:659cc 圧縮比:13.1 燃料供給装置:電子制御燃料噴射 点火方式:フルトランジスタ 始動方式:セル 変速機:6段リターン
【性能】
最高出力:77.5ps(57kW)/9750rpm 最大トルク:63Nm(6.4kgm)/8000rpm
変速比:1速2.769 2速2.059 3速1.600 4速1.318 5速1.143 6速1.040 一次減速比1.968 二次減速比2.800
【寸法・重量】
全長:── 全幅:── 全高:── 軸距:1443 シート高:864(各mm) キャスター:26.1° トレール:108mm タイヤサイズ:F120/70ZR17 R160/60ZR17 車重:151kg(乾燥)
【容量】
燃料タンク:12L オイル:──
【メーカー希望小売価格】
スタンダード:170万円
RVE:182万円
まとめ●モーサイ編集部・阪本 写真&資料●ドゥカティ
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