イタリアの自動車産業を語る上で外すことのできない都市がトリノだ。フィアット本社のお膝元であるトリノでは、毎年6月にはポー川沿いにあるヴァレンティーノ公園で屋外型の自動車ショー「トリノ自動車見本市」も開催され大いに賑わっている。
このヴァレンティーノ公園から南に3km弱の場所にトリノ国立自動車博物館はある。モデナ近辺の自動車博物館と比べると、まずそのスケールの大きさに驚くだろう。
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館内に入って驚かされるのは、アトリウムのスケールだ。その歴史も古く、1932年にまで遡ることができる。現在の博物館の前身となる建物は、建築家Amedeo Albertiniによって設計され、1960年に竣工している。当時のミラノでもランドマークとなるほどの鉄筋コンクリートの現代建築であった。
この建物を3年ほどの歳月をかけてリニューアルし、博物館が再オープンしたのは2011年である。この改修並びに拡張工事により、展示スペースは1万1000平方メートルから1万9000平方メートルにまで拡大。建物の外観などはイタリアの代表的建築家のチーノ・ズッキが担当し、展示プロジェクトはトリノ映画博物館などを手掛けたデザイナー、フランソワ・コンフィーノによって生まれ変わった。
まずはエスカレーターで3階へ。徐々に照明が落ちていき、気分も高まってくる。正面玄関から博物館内部に入ると、天井から自然光が降り注ぐ巨大なアトリウムの大きさに圧倒される。金属のパネルで覆われたその巨大な空間の一隅には、階上に向かうエスカレーターが設置されている。このエスカレーターで最上階の3階(現地表記では「second floor」)まで登ってフロアを回遊しながら階下へと下りていき、もとの1階に戻ってくるという仕組みだ。
映像と展示車両が効果的に組み合わされるインスタレーションは、このほかにも出てくる。自動車のルーツは馬車エスカレーターで3階にたどり着くと、そこはちょうど建物のほぼ中央に位置している。床に書かれた「start」の文字に従って進むと、照明を落とした展示室へと導かれる。この最初の展示室は、1台の蒸気機関車を展示するにはかなりゆとりのあるスペースが割かれている。スクリーンに御者と2頭の馬を投影し、あたかも馬車(展示車両は蒸気機関車だが)が走っているかのように演出されており、いうなればこの展示室は映写室のようになっているのだ。
この最初の「起源」と銘打たれた展示室は、床に扇状石畳が敷き詰められており、石畳を走る馬車のサウンドと映像とが相まって、来館者を博物館の世界観へと引き込む役割も担っている。自動車は馬車から進化・発展していったものであることがよく伝わる展示だ。
世界で初めて100km/hに到達した電気自動車Jamais contenteは、背景の写真と真っ赤なスカーフでスピードを感じさせる展示。疾走していた馬がスクリーンから消え、馬車の時代が終わり自動車の時代が到来するというストーリーを踏まえ、来館者はいよいよ貴重なオリジナルコンディションのクルマに対面するエリアへと進む。
1900年前後のクルマは、アール・ヌーヴォーがテーマ。アール・ヌーヴォーとは19世紀末から20世紀初めにかけて広まった芸術運動。植物をモチーフにした曲線を多用するデザインが特徴で、1900年のパリ万博で全盛を誇った。車両の細部のデザインにもアールヌーヴォーの影響が感じられる。趣向を凝らしたインスタレーション自動車愛好家にとっては、貴重なクルマを見ることができればそれで大満足だと思うが、パートナーや子供連れの場合、ただクルマが展示されているだけではすぐに飽きてしまうだろう。この点、国立自動車博物館はクルマにそれほど関心のない人でも興味がそそられる展示方法となっているのがポイントだ。
1941年製フォード・ジープは、第2次世界大戦をテーマとしたインスタレーション。複製ではあるが、1769年製のキュニョーの砲車と呼ばれる3輪蒸気機関車はこの博物館で見ておくべき1台だ。試運転時にフロントが過重となったためハンドルがきれず破損しており、世界初の自動車事故とも言われている。展示車両はもちろん静止した状態であるが、背景の写真などの演出でスピード感を表現したり、生産された頃の時代背景を取り込んだりすることで、クルマ文化を担う一端として見せているのはさすがである。また、展示テーマも細かく別れており、それぞれが映像や写真、小物などで趣向を凝らしたお洒落なインスタレーションとなっている。
もちろん、展示車両を鑑賞するだけでもボリュームのある博物館であるが、この博物館は自動車を歴史や産業、デザインなどあらゆる面から捉えている点が特徴となっている。エンジンやタイヤ(車輪)といった自動車には欠くことのできない部品が進化してきた過程、自動車史に燦然と輝くデザイナーたちの功績などもひと通り学ぶことができる展示も魅力的なので、この点に注意して鑑賞すると実車を見るだけでない違った楽しみ方ができるだろう。
シトロエンDS19は、当時の広告展開で使用した宇宙船のイメージがそのまま再現されている。自動車史で大きな役割を担ったカーデザイナーを知ることができる展示ブースもある。かつてはガスタービンでクルマを走らせる研究もされていたことを知る稀有な1台。このカラーリングは、ラポ・エルカン率いるガレージイタリアが手掛けたパガーニ・ウアイラの元ネタである。自動車史に思いを馳せるコレクション国立博物館に所蔵されているコレクションは、10カ国の80にも及ぶブランドのクルマたちおよそ200台である。博物館の地下はガレージとなっており、常設展示車両は何年かかけて入れ替える仕組みとなっている。そのため、必ず出会えるという保証はないが、ぜひ見ておきたい車両をご紹介しよう。
まず見ておきたいのは、1769年に作られた世界初の自動車と言われる3輪蒸気機関車の7/10スケールの複製。2気筒エンジンはボイラーによって蒸気が供給される仕組み。オリジナルはパリの国立美術工芸学校に保存されている。最高時速は4km/h。
ジャガーEタイプのロードスターは、様々な映画のキスシーン映像とともに展示されている。シャシーやエンジン、ホイール、タイヤなどの変遷を知るインスタレーションは大変貴重だ。次に見ておきたいのは、1954年にフィアットが発表した実験用ガスタービンエンジンを搭載した試作機、フィアットMOD.TURBINAだ。風洞を使って優れた空力性能を実証し、最高速度は250km/h。実際のテストはトリノのカゼル空港滑走路で行われた。
各デザイナーの作品はもとより、デザイナーがインスピレーションを受けたものなど、ミニチュアでわかりやすく展示している。ピニンファリーナがコーチビルドした1948年製のチシタリア202は必見。フロント両サイドのフェンダーに穿たれた円形のサイドベントを見ても分かるように、デザインはビニャーレが担当したと言われている。ニューヨーク近代美術館に永久展示されているチシタリア202は、戦後のクルマのデザインに最も影響を与えた1台である。
2階のインスタレーションで、圧巻なのがフォーミュラのコーナーだ。1900年代初頭から2000年代までの、およそ100年に及ぶフォーミュラを一度に見ることができる稀有な展示となっている。フェラーリだけでなく、ブガッティやマセラティ、アルファロメオ……など、その時々に活躍したフォーミュラがずらりと整列している姿は圧巻である。
現代に近くなると、テレビ中継などで実際に見ていたフォーミュラカーが多くなるので、F1ファンにはたまらないだろう。INFOMATION
Museo dell'Automobile di Torino
トリノ国立自動車博物館
開館時間:月/10:00~14:00、火/14:00~19:00、水・木・日/10:00~19:00、金・土/10:00~21:00
所在地:Corso Unita' d'Italia 40, 10126 Turin, Italy
TEL:+39 011 677666
URL:www.museoauto.it
文・尾崎春雪 編集・iconic
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