現状世界を敵に回している国、ロシア。以前ロシアを訪れたモータージャーナリスト・小林敦志によれば、首都モスクワでは“西側諸国”の新車が走るいっぽうで、ソビエト時代に製造されたロシア車や、中国車も見かけたという。
全世界から流入する中古車も加わり、その様子は“カオス”。そして、話をすればクルマ好きがすぐに伝わってくるロシア人。
16年ぶりに復活した新型インテグラ 日本発売の可能性はゼロなのか!?
いつかまた、平和のもとで楽しくクルマ談議できる日々が訪れることを心から願って、3月25日発売の『ベストカー』本誌より小林氏がモスクワで見聞きしたトピックを3回に分けて緊急配信! 第1回はロシアの「政治と生活とクルマ」にスポットを当てる!
■配信予定とトピックラインナップ
●Vol01. 政治と生活とクルマ編(本稿)
・意外!? 国民はクルマ大好き
・プーチンとクルマ
・汚職まみれの!? 交通警察
・「モスクワ、サンクトペテルブルクそれ以外」という考え方
●Vol02.ロシアのクルマたち編(2022年3月27日配信)→こちら!!
●Vol03.ロシアでみた日本のクルマたち編(2022年3月28日18:30配信予定)
※本稿は2022年3月のものです
文/小林敦志、写真/小林敦志、AdobeStock
初出:『ベストカー』2022年4月26日号
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■意外!? 国民はクルマ大好き
今のロシアは1990年代にソビエト社会主義共和国連邦が崩壊して誕生している。厳しい共産主義国家であったソビエト連邦下でも、国民には自家用車の所有が認められ、意外なほど多くの乗用車ブランドがあった。
そして、そのクルマ好きは今でも健在。街で「日本人か」と聞かれることがあれば、そのあとは相手が男性ならば、たいていはクルマ談議で盛り上がることが多い。
一般的なスーパーでも、中国製だがロシア車のミニカーがたくさん売られ、フリーマーケットでも一般家庭の物置きに眠っていたソビエト時代のレトロミニカーがたくさん売られるほどクルマ好き濃度は濃い。筆者はモスクワを訪れては“大人買い”するのを楽しみにしていた。
写真はニーヴァの後継車だ。ロシア人期待のクルマ。
2018年モスクワモーターショーの「ラーダ ニーヴァ」後継車。近々デビュー予定
■プーチンとクルマ
2018年に開催されたモスクワモーターショー会場で“アウルス セナート”という高級車がデビューした。
NAMI(国営中央自動車エンジン科学研究所)で開発されており(一部西ヨーロッパ企業も参画)、プーチン大統領専用車の“民生版”といっていい存在だ。
当時は“プーチン大統領のクルマ”とも言われたが、プーチン大統領専用車(コルテージ)は別にあり、これが広告塔になったのである。
それまでの大統領専用車はメルセデスベンツであった。しかし、当時はすでにクリミア半島を一方的にロシアが併合したことで西側諸国から経済制裁を受けており、「メルセデスベンツが大統領専用車というのはいかがなものか」という話が出て、セナートが開発されたとも聞いている。
発表時には会場に閲覧専用の分厚いカタログが置いてあったが、ロシア語のほかに中国語が併記されていた。
プーチン専用車の民生版となる「アウルス セナート」。V8、4.4Lツインターボ搭載。塗装の仕上げもよく、ロシアの技術力を集結させた
■汚職まみれの!? 交通警察
空港からタクシーでモスクワ市内中心部へ高速道路で向かう途中、ジャンクションでタクシーが停車した。そしてドライバーが向かった先に交通警察官がいた。
勝手にタクシーを狙い撃ちにして“関所”を設けて“通行料”をタクシーから取っていたようだ。
ロシアでは、車内に常備する登録関係書類は種類が多く、足りないまま乗っている人も多いようで、それを取り締まるフリをして、目こぼしするからと“袖の下”を要求してくるとのこと。
この写真のようにすぐに袖の下をくれそうな高級車を停めてはドライバーに要求している、と思われる風景は幹線道路では珍しくなかった。
警官が賄賂を受け取っている!? 聞いた話では立体交差の側道などで、高級車を待っては停めるシーンがよくあるとのこと
■「モスクワ、サンクトペテルブルクとそれ以外」という考え方
モスクワへ行くと、レクサス車が多く走っている(LXやNXばかり)。LXは滞在期間(5日ほど)で東京の3年分ぐらい見かけてしまった……!
が、これはモスクワに限った話。
市場性を見るには、モスクワ、サンクトペテルブルク、その他の地域でかなり状況が異なるという。
例えば「全ロシア」での新車販売統計では、自国製ラーダ車の販売台数がかなり多い。
だがこれは「その他地域」でよく売れている傾向を反映したもので、モスクワ市内ではそれほど見かけない、という実情もあったりするのだ。
それ以外の地域ではこんなタフなクルマが売れている。クロカンはシベリアで断トツ人気
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