6月2日、鈴鹿サーキットでスーパーGT第3戦の決勝レースが開催された。3時間の時間制レースを制したのは、GT500クラスが37号車Deloitte TOM'S GR Supra(笹原右京/ジュリアーノ・アレジ)、GT300クラスが777号車D'station Vantage GT3(藤井誠暢/チャーリー・ファグ)だった。
岡山での開幕戦、富士での第2戦を終え、舞台は鈴鹿に移った。レースフォーマットは今季2度目となる3時間レース。レース戦略の幅はGT500は特に狭いと言われるが、決勝レース直前に雨が降り始めたことで、波乱の予感をにわかに漂わせていた。
ただ12時のウォームアップ走行時にはダンプコンディションとなっていたものの、各車がグリッドに整列するタイミングで天候が晴れに変わり、13時30分のレーススタートに向けて路面が急速に乾いていった。その結果、決勝はドライコンディションでのスタートとなった。
■GT500クラス
GT500のポールポジションは37号車Deloitte TOM'S GR Supra。昨年から苦戦するレースが多かったが、笹原右京とジュリアーノ・アレジの好アタックでついにグリッド最前列を手にした。2番グリッドには16号車ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT、3番グリッドには14号車ENEOS X PRIME GR Supraが続き、日産勢最高は3号車Niterra MOTUL Zの6番グリッドだった。
クリーンなスタートとなり、37号車Deloitte TOM'Sの笹原右京がトップでオープニングラップを終えた。16号車ARTAの大津弘樹はスタート直後から笹原にプレッシャーをかけたが、オーバーテイクには至らず。その後大津は14号車ENEOS X PRIME GR Supraの福住仁嶺に迫られる格好となり、5周目のS字でオーバーテイクを許して3番手に落ちた。
2番手に上がった14号車ENEOSはトップを走る37号車Deloitte TOM'Sにひたひたと迫っていった。一方で3番手の16号車ARTAはそこから10秒以上離される形。僚友8号車ARTAとバトルを繰り広げた。さらにそこから11番手の36号車au TOM'S GR Supraまでが大きな集団となり、各所でバトルが展開された。
ルーティンストップで最も早く動いたのは、38号車KeePer CERUMO GR Supraで22周目(レース40分ごろ)。3番手だった16号車ARTAの大津も24周目にピットインして佐藤蓮に交代した。16号車はドライバー交代をしなかった38号車CERUMOに一旦は前に出られたが、佐藤がコース上で抜き返すことに成功した。
レース開始1時間が経過した32周目、37号車Deloitte TOM'Sに接近していた14号車ENEOS、8号車ARTAなど4台が一気にピットイン。その翌周にはトップの37号車もピットに入った。14号車は大嶋和也にドライバー交代した一方、37号車は笹原がドライブを継続したこともあり、位置関係が入れ替わることはなく、首位の座をキープした。
スタートから80分が経過した頃、6番手争いの集団にいた23号車MOTUL AUTECH Zの千代勝正がシケインへのブレーキングで大湯都史樹が乗る38号車CERUMOに追突。シケインとホームストレートに車両のボディワークが落下してしまい、フルコースイエロー(FCY)が出された。38号車はリヤに大きなダメージを負ったため、そのままリタイア。23号車には後にドライブスルーペナルティが科された。
レースは1時間半が経過し折り返し。37号車Deloitte TOM'Sと14号車ENEOSは依然として接近戦だが膠着状態。そこから10秒以上離れて3番手に16号車ARTA、4番手に12号車MARELLI IMPUL Z、5番手に36号車au TOM'Sという順位だった。
2回目かつ最後のピットインのタイミングが迫る残り1時間強。14号車ENEOSの追撃を堪えていた37号車Deloitte TOM'Sは60周でピットに入り、笹原からジュリアーノ・アレジにドライバーを交代した。14号車は一気にペースを上げ、その2周後にピットイン。こちらも大嶋から福住に交代し、37号車の遥か前方でコース復帰することに成功した。
ただ快調にトップを走っていた14号車に悲劇が。2回目ストップのピットアウト時に他車の走行を妨害するような形となったため、アンセーフリリースによるドライブスルーペナルティが宣告されたのだ。これで37号車Deloitte TOM'Sが労せずトップに返り咲き。16号車ARTA、36号車au TOM'Sもそれに続き、14号車は4番手まで落ちてしまった。
しかしここから福住の怒涛の追い上げが始まった。まず36号車au TOM'Sを攻略すると、16号車ARTAにもじわじわと迫る。そして残り25分(78周目)のシケインでオーバーテイクに成功し、2番手に浮上した。
この時点でトップの37号車Deloitte TOM'Sのアレジとのギャップは11秒ほどだった。前が開けた福住はプッシュするが、アレジも負けじとプッシュ。その差は次第に縮まらなくなっていった。
アレジはギャップをキープしたまま92周を走り切り、37号車Deloitte TOM'Sはトップでチェッカー。アレジと笹原にとっては、GT500初優勝となった。2位は14号車ENEOS、3位は16号車ARTAだった。36号車au TOM'Sは5位でフィニッシュし、ランキングトップの座をキープした。
■GT300クラス
GT300クラスは、777号車D'station Vantage GT3がポールポジション。開幕当初から高いポテンシャルを見せていた新型アストンマーティン・ヴァンテージ GT3が本領発揮した形だ。2番グリッドには61号車SUBARU BRZ R&D SPORTが続いたが、ポイントリーダーで54kgのサクセスウエイトを積む2号車muta Racing GR86 GTがなんと3番グリッドにつけた。
スタート、そしてオープニングラップでは上位陣のポジションに動きはなく、777号車D'stationの後方に61号車SUBARUを2号車mutaが続いた。777号車に乗る藤井誠暢が61号車の山内英輝に対するリードを30分で7秒前後に広げる一方で、2号車の平良響はその山内のテールにつけプレッシャーをかけ続け、15周目のシケインでオーバーテイクを成功させた。
20周前後(開始40分過ぎ)からミシュランタイヤ勢を筆頭に1回目のルーティンストップを行なうチームが出始めるが、上位陣はなかなか動かない。1時間が経過する頃には、777号車D'stationが2番手mutaに14秒のリードを築いて独走状態。一方で3番手につけていた61号車SUBARUは、31号車apr LC500h GTにも交わされて表彰台圏内から陥落した。
トップの777号車D'stationは29周を走ってピットイン。61号車SUBARUや2号車mutaの前でコースに復帰した。しかし、ブリヂストンタイヤユーザーである31号車aprと52号車Green Brave GR Supra GTがタイヤ無交換作戦を決行し、ドライバー交換もせずに給油だけでコースに復帰たため、31号車が777号車の前に出てトップ、52号車は3番手に浮上した。
レースが折り返しの1時間半を経過する頃には、タイヤ交換をしている車両が無交換車両に追い付きはじめた。トップを行く31号車aprは777号車D'stationとテール・トゥ・ノーズ状態となり、45周目のスプーンで777号車チャーリー・ファグが首位奪還。3番手争いでは52号車をGreen Braveを61号車SUBARUがオーバーテイクした。
しかしそんな61号車SUBARUは、トラブルによりヘアピンの先でストップ。これで開幕から3戦連続で決勝ノーポイントとなった。そしてこのマシンストップによりFCYが出された。
トップを独走する777号車D'stationは、残り50分を切ったタイミングで最後のピットイン。レース中盤に2度目のピットストップを済ませていた31号車aprの前でコース復帰した。
残り30分強というところで、ステイアウトしてトップに立っていた2号車mutaがピットイン。タイヤ交換とドライバー交代をせず、給油のみの作業だった。これで首位は777号車D'stationとなったが、2号車は2番手でコース復帰。その後ろでは、31号車aprの中村仁と6号車UNI-ROBO BLUEGRASS FERRARIのロベルト・メリが激しいバトルを展開していた。
777号車D'stationは危なげない走りでトップチェッカー。後続に30秒以上の差をつける、まさに圧勝だった。2位はポイントリーダーの2号車mutaで、今回さらに16点を加算したことでランキングで独走状態に入った。3位は6号車LeMansだった。
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