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決まりかけたデザインを却下し再デザイン! 異例の決断を下した新型トヨタRAV4のデザインへのこだわり

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決まりかけたデザインを却下し再デザイン! 異例の決断を下した新型トヨタRAV4のデザインへのこだわり

 SUVのワクドキ感をデザインでも徹底追求

 装い新たに生まれ変わった新型RAV4。1994年の初代誕生から数えて5代目(4代目は日本未導入)となる新型は、エクステリアデザインのたくましさと存在感の強さでは、歴代RAV4でも随一と言えるもの。と同時に、しっかりと洗練された高級感や高い質感も印象的だ。今回のフルモデルチェンジでプロジェクトチーフデザイナーを務めた園田達也さんは、デザイン開発の狙いを次のように語る。

SUVのタフさと先進感を両立! 新型トヨタRAV4の内外装を徹底チェック

「誕生から25年、サイズの変遷などはありましたが、RAV4の価値は、歴代を通してじつはそんなに変わっていません。街乗りでもアウトドアでも、見ても乗っても楽しいこと。どこかへ出かけたくなるワクワクドキドキを味わわせてくれること。そういうユニークな商品価値がRAV4の魅力です。とはいえ、この25年間でRAV4が開拓したジャンルもずいぶん成熟し、RAV4独自の魅力が少し薄れてきた感も否定できません。新型では、次の25年を戦うためにも、ここでRAV4の商品価値を再定義して、強い独自性を打ち出そうと考えました。いわば、RAV4ならではの個性やワクドキを、再定義しようということです」

 エクステリアのデザインコンセプトは、「アドベンチャー(アクティブで力強いワクドキ感)&リファインド(都会にも似合う洗練さ)」というもの。そのデザイン実現に向け、(1)「ビッグ・フット」(走破性の高さをイメージさせるクラス最大のタイヤ外径)、(2)「リフト・アップ」(どんな悪路でも走破できそうな力強い土台・足まわりを象徴するリフトアップ感とプロテクト機能)、(3)「ユーティリティ」(本格SUVならではのワクドキを感じさせる多用途性と、さまざまなレジャーシーンを想起させるキャビン表現)という3つのポイントを重視した。

 数多くのアイディアスケッチから、初期段階では3つの案を選択。社内の評価会では、どの案も高く評価された。

「違った見方をすると、意見がばらけてしまったとも言えます。実際、われわれデザイナー自身にも、自信を持ってひとつの案を推すことができないという感じがありました」

 3つの案すべてについて1分の1モデルが作製され、本来のプロセスであれば、ここから1案に絞り込み、次のステージへと進むところだ。だが、デザインチームは異例の決断を下した。もう一度、最初のスケッチに立ち戻ってゼロからやり直そうという決断だ。

「この決断はかなりの議論を呼びました。ここまでで相当な時間を費やしていることもあって、普通ならありえない決断です。しかし、開発責任者の佐伯は、異議を申し立てる部署にも『デザイナーに任せてやってくれ。絶対にいいデザインを作るはずだから』と、われわれを全面的に信頼してくれたんです」

 これからの25年を戦うためにも、新型RAV4には突き抜けた魅力が必要だ。そのためには、優等生的にまとまったデザインといったレベルでは許されない。とことんまで振り切ることが必要だ。そんな強い想いゆえの決断だ。

 再デザインした際に導き出したクロスオクタゴン

 新たなスケッチの提出までの猶予期間は1カ月。圧倒的に時間が足りないうえ、そもそもこれまでの段階でも膨大なアイディアが検討されている。デザイナーたちにとっては、乾ききった雑巾をさらに絞ろうという行為に等しいものだったろう。エクステリアデザイン担当の井口大輔さんは次のように振り返る。

「あのときが一番苦しい時期でしたね。ゼロからのスタートで、みんなで必死にスケッチを描き続けました。そのなかで見つけ出したモチーフがクロスオクタゴンだったんです」

 クロスオクタゴンとは、幾何学形状のふたつの八角形(オクタゴン)を90度ずらしてはめ合わせた造形テーマだ。

「きっかけは、アドベンチャー&リファインドというデザインコンセプトと、それを具現化させるための3つのポイントに立ち戻り、それを純粋にカタチで表してみようと思い立ったことでした。オクタゴンのひとつは、ボディを真上から見たときのものです。四つの角が切り落とされているのは、高い走破性を実現させるための機能をカタチにしたものです。もうひとつは真横から見たもので、リフトアップや、デパーチャーアングル、アプローチアングル。さらには後方視界も考慮したバックライトアングルなどのために四つの隅を落としたオクタゴンです」

 どっしりとした安定感がありながら、今にも転がり出しそうな躍動感を備えていることも、オクタゴンモチーフの魅力のひとつ。力強い塊感も想起させ、本格SUVにふさわしいモチーフと言える。ちなみにクロスオクタゴンのスケッチを考え出したのも、井口さんだ。

 目標は定まったものの、クロスオクタゴンを描いたキースケッチは、あるべきはずの4枚のドアが描かれていない。リヤドアのヒンジやウインドウの昇降、ドアビームといった内部の機能部品など、それらの要件を満たしながらこのフォルムを立体化するのは至難の技だ。そんな離れ業を短い時間でやり抜くことができたのは、設計やモデラーなど、さまざまな部署が全力以上の力で取り組んでくれたからと語る井口さん。エンジニアたちを動かしたのは、まさにデザインの力だったと言うべきだろう。

 こうして中期段階の立体モデルの熟成が進められる頃になると、アドベンチャーのデザイン開発もスタート。担当したのは坂上元章さんだ。

「一般的な車種の派生グレードでは変更箇所がバンパー程度ということも多いのですが、新型RAV4のアドベンチャーでは、アーチモールやリヤのスキッドプレート、専用ホイール、2トーンのボディカラーや内装専用色など、変更箇所は個別の車種に見えるほど広い範囲におよんでいます」

 ノーマル、アドベンチャーともフードは共通しているが、よく見るとフロントマスク上端の水平ラインがノーマルではヘッドライトよりも下に。そして、アドベンチャーでは上に位置している。このデザインを実現するため、アドベンチャーではフード先端に隣接する面にいったん段差を付け、重心位置をぐっと上げた形で面が連なるという細かな工夫が施されている。これは一般的なデザインセオリーにはない特異な手法だが、その結果、アドベンチャーのフロントマスクはノーマル以上に強い存在感を放つ仕上がりとなっている。

 内装やボディカラーもSUVらしさをとことん追求

 エクステリアと並行して、インテリアデザインも進められた。

「インテリアのコンセプトも、エクステリアと共通です。SUVとしてのワクドキを訴求する強い骨格や機能性、ディテールを兼ね備えつつ、洗練・上質感にも強くこだわっています」(園田さん)

 骨太なコンソールと低くて水平なインパネの組み合わせが印象的なインテリアでは、操作スイッチなどの本物感についても徹底的な追求が行われた。インテリアデザイン担当の筈箕三郎さんにうかがった。

「たとえばダイヤルも、握りやすい大きさや、操作しやすい形状など、数多くの試作品を作って模索しました。見た目の重量感や、操作したときにしっかり感じられる手応えにもこだわっています。らせん状の斜めのラインは、意匠としてもシンボリックですし、冬季にグローブをつけたままでも操作しやすいメリットもあります」

 ダイヤルのらせん状の切れ込みが入ったデザインは、じつはそのままでは成形の際に型から抜くことができない。実際このダイヤルも、6個に分割して成形されている。手間もコストもかかるデザインだが、それでも実現させたのは、デザイナーたちのこだわりの強さの証と言えよう。

 カラーデザインについても、他車種とは違う独特なプロセスが採用されている。カラーデザインは年々その重要度が増しており、一般的な開発では、造形をさらに際立たせることを目的とした新規色の開発などが行われているが、今回はさらに一歩踏み込み、コンセプトの立案段階からカラーデザイナーも参画、造形とボディカラーが一体となったデザイン開発が行われている。カラーデザインの担当は山岡正和さんだ。

「新開発カラーであるアーバンカーキも、このクルマのイメージを牽引し、キャラクターをより際立たせることのできる色を目指して、ボディのカタチができる前から開発を進めてきたものなんです。内装についても、たとえばアドベンチャーのアクセントカラーであるオレンジは、その色が使われる部分の太さや断面などについて、色に合わせた最適な寸法の造形を模索しています」

 新型RAV4の内外装デザインの特徴のひとつは、個性的なデザインモチーフや、独自性の高い細部の造形処理などがふんだんに盛り込まれているにも関わらず、全体としてひとつにまとまったシンプルな印象を感じさせることだ。ボディサイドもあらためて見てみると、ハイライトを踊らせる面がいくつも組み合わされ、しっかりとしたキャラクターラインも通っているのに、決して見た目にビジーな印象を与えず、さらには限られた面積のなかで豊かな張りのある断面をしっかりと実現していることに気付く。ひとつひとつのディテールはきわめて存在感が強いのに、全体としての統一感が感じられるのは、奇をてらった装飾性に頼っていないことが大きな理由のひとつだろう。

「お客さまはどんな使い方をするんだろう。そんなふうにいくつものシーンを思い浮かべながら、素材を決めたり、断面を作ったり、形を作り上げたりしたんです。たとえ通勤に使っていても、週末のワクドキが感じられること。単なる移動のための空間ではなく、心を躍らせてくれるクルマにすること。毎日使うクルマなら、やっぱり奇をてらったデザインにはしたくない。じつはそれがわれわれの一番のこだわりだったかもしれません」(園田さん)

 異例とも言えるエクステリアの決断をはじめ、数多くの高いハードルを乗り越えて作り上げられた新型RAV4のデザイン。それはワクドキというクルマ本来の愉しさをピュアに追求したデザイナーたちの努力の結晶と言えるだろう。

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