エネルギー効率を高め高速距離を伸延
text:Mark Trishaw(マーク・ティショー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
ヒュンダイ・アイオニック・エレクトリックは、ライバルとなるトヨタ・プリウスPHEVより一歩先ゆく、純EVとしてゼロ・エミッションでの走行を実現している。
今回マイナーチェンジを受け、バッテリーの容量が28kWhから38kWhへと大型化。電動モーターの効率も向上させ、航続距離は30%長い312kmとなった。
他にもいくつか細かい改良を受けているが、そのほとんどはエネルギー効率を高め航続距離を伸ばすことに充てられている。見た目でわかりやすいのはフロントグリルのデザイン。大きくなり全面がシルバーに塗られ、冷却効率を高めるアクティブ・エアフラップが装備された。
バッテリー容量が大きくなっただけでなく、充電システムもアップデートされ、完了までの時間も短縮されている。50kWの充電容量の充電器なら、57分で空の状態から80%の容量まで蓄えられる。7kWの充電器でも6時間で満充電にすることが可能だという。
インテリアの変更も目につくところ。これまでダッシュボードに埋め込まれていたモニターは10.25インチへと大きくなり、大きく張り出す形でレイアウト。
インフォテイメント・システムのOSも新しくなり、新機能も追加。スイッチ類のデザインも新しくなり、バックライトが埋め込まれている。
適度に活発な走りで運転しやすい
試乗したのは気温の低い日で、アイオニックが提示した航続距離は275km。だが実際はそれより長く走れることが分かった。日常的な通勤に最適なだけでなく、ドライブでの小旅行にも充分使える。
走行性能の印象は元気が良いと呼べるもの。ヒュンダイ・コナ・エレクトリックほど手に負えない活発さではない。両車ともに最大トルクは40.1kg-mだが、コナの方が203psとパワフル。アイオニック・エレクトリックは135psだ。
アイオニックのモーター制御は良好で、すべての速度域で運転がしやすい。スタートダッシュはシャープだから、都市での交通の流れを余裕でリードできる。高速道路での走行も非常に滑らかで落ち着いている。
しかもパワーの立ち上がりは、コナ・エレクトリックのように強力過ぎないのが美点。うっかり意識せずにアクセルを踏んでも、ホイールスピンを発生させることも殆どないだろう。
ハイブリッドモデルのアイオニックのリアサスペンションには、マルチリンク式が採用されている。しかしエレクトリックの方は、バッテリーの積載空間を確保するためにトーションビーム式となっている。
そのため乗り心地が犠牲になっており、最良とは呼べないレベル。滑らかな路面なら悪くないが、低速域では揺れが大きい。このサスペンションは操縦性にも影響を及ぼしている。ダイナミクス性能の面での輝きは鈍り、走り味はありふれたものになっている。
標準以上ではないが、標準以下でもない
転がり抵抗の低さを追求したタイヤは、低速度域でも盛大なノイズを発生する。ライバルなら静かで穏やかな走行を楽しめるところだが、アイオニック・エレクトリックは少し及ばない。
走行ノイズを気にしないためにも、ラジオのボリュームはちょっと上げておくと良い。アップデートされたインフォテイメント・システムの機能の1つだし、操作もわかりやすく機能も豊富になっている。
インテリア全体の印象はやや単調。暗い色味のプラスティックパーツの面積も大きい。
マイナーチェンジ後のアイオニック・エレクトリックが重視しているのは、やはり効率性。シフトパドル状のレバーを弾いて回生ブレーキの強さを調整し、航続距離を伸ばす楽しみ方ができるのは、EVならでは。
「機能優先」という言葉が、アイオニック・エレクトリックを表現する最適な言葉かもしれない。あらゆる面で充分に機能的で、標準以下の部分がないかわり、標準以上の部分もないと思う。
確かに充分に使いでの良いクルマではある。だが、コナ・エレクトリックも含めて、ライバルモデルの輝きはより強いと思えてしまった。
ヒュンダイ・アイオニック・エレクトリックのスペック
価格:2万9450ポンド(412万円・政府補助金適用後)
全長:4470mm
全幅:1820mm
全高:1450mm
最高速度:154km/h
0-100km/h加速:9.7秒
航続距離:312km
CO2排出量:0g/km
乾燥重量:1475kg
パワートレイン:永久磁石モーター
バッテリー容量:38.3kWh
最高出力:135ps
最大トルク:40.1kg-m
ギアボックス:シングルスピード
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