オーストリアGP、レッドブルリンクは過去2年レッドブルが最も得意とするサーキットだった。それはなぜか。レッドブルのホンダPUは標高の高いところ、つまり空気の薄いところでもっとも強力なPUだからだ。しかし、今回のレースではフェラーリに太刀打ちできなかった。無敵であったはずのレッドブルがなぜ負けたのか。元F1メカニックの津川哲夫氏が解説する。
文/津川哲夫
写真/Ferrari,Mercedes,Redbull,McLaren,Haas
最強ホンダPUを持つレッドブルがなぜ負けたのか。ハイパワー&トップスピードの高さだけでは勝てない理由とは
イギリスGPのフェラーリの速さは本物。レッドブルリンクでもその実力を発揮
このコースは一本の急激な登りを走りきれば、残り3分の2はほとんどが強い傾斜の下りコーナーばかり。なのでダウンフォースとエアロバランスの配分が他のサーキットとは大きく違ってくるコースなのだ。
こういった性格のコースに対して、これまでのレッドブルとホンダPUは実にうまく対処してきた。ライバル達が燃焼とオーバーヒート等に悩まされているのを尻目に、見事に対処して勝利を得てきた。今シーズンもこの路線は変わらず、フェラーリが英国グランプリ以後安定した速さを誇示してきたものの、レッドブルの有利は変わらないと思われていた。
しかし、いざ始まってみると、フェラーリはイギリスGPの速さそのままに、標高の高いこのレッドブルリンクでも勢いよく走り廻ったのだ。
ルクレールに何度も抜かれる屈辱。フェラーリの速さにマックスは太刀打ちできなかった
イギリスGPまでは、ハイパワーでトップスピードの高さを誇るレッドブルと高速コーナーリングスピードとトラクションの良さを誇るフェラーリがサーキットの特性によって攻防を繰り広げていた。
そして開幕序盤戦。レッドブルは信頼性に問題があったため、その持っているアドバンテージを発揮できずにフェラーリに遅れを取るシーンが多々あった。しかし、フェラーリもそのアドバンテージを数々のミスで失ってきてしまい、シーズン半ばの現在、大きなポイント差をつけられてしまった。
レッドブルはフェラーリの速さを警戒して早期のアップデートを行い、このアップデートでわずかなアドバンテージを得ていたが、カナダ以後フェラーリも各部に細かなアップデートを施し、イギリスGPからは目に見える速さを示しはじめた。結果イギリスGPでは、サインツがタイヤ交換でのアドバンテージを活かして初優勝している。
高高度バトルを制したのはレッドブルではなくフェラーリだった
オーストリアではルクレールが安定した速さを見せつけ、前半戦の数々の不運を乗り越えてついに優勝。それも最後の10ラップ勝負はルクレールの独壇場だった。レッドブルのフェルスタッペンとルクレールは同時にピットインして同じミディアムタイヤで再スタート。まさにガチのバトルになったが、ルクレールはフェルスタッペンを蹴散らし優勝を勝ち取った。
さらに後方からフェルスタッペンを照準に収めたサインツが猛追していた。計算上フェラーリは確実にワン・ツーフィニッシュを手に入れていたはずだったが、サインツの猛追はエンジンブローであえなく終わりを告げてしまった。
もう射程圏内……、マックスを抜く直前のエンジンブロー。2位は確実だったサインツ
フェラーリのスピードは間違いなく本物で、トップスピード、中高速コーナー、立ち上がりのトラクションそしてタイヤ・マネージメントにいたるまで、全てでこのレッドブルリンクではレッドブル以下全てのチームよりも勝っていた。
マックスは何度もルクレールに抜かれていた。なぜ、最強PUのレッドブルは負けたのか?
レッドブルは得意とするサーキットでありながら、トラクションとタイヤ・マネージメントでフェラーリに遅れを取った。特にレッドブルリンクは高いスピードを維持しなければならず、パフォーマンスで勝っているフェラーリとの勝負には、ダウンフォースを減らしてさらにドラッグを軽減しなければならなかった。したがってコーナリングでのダウンフォースはぎりぎりのレベルだったのではないかと思う。
そう考えると上り切ったターン3の低速からのトラクション、そして下りコーナーの連続するセクター2で苦しい。下りのターン8から最終コーナーを抜けてそのままメインストレートでは高速を維持できた。しかし、ぎりぎりのエアロバランスは若干神経質なリア特性となりタイヤに厳しい状況を生み出していた。そして加速時のトラクションで完全にフェラーリに負けてしまったのだ。
フェラーリF1-75は開幕時の予想通り、ほぼでき上がったマシンに思える。したがってアップデートに他チームのようなボディワーク、特にサイドポッド形状等の大掛かりな変更は必要がなく、細部のリファインでそれなりの効果を出してきている。もちろんリアウイング等に大きめのアップデートはあったが、これもサーキットセッティングの一部と考えれば、過激性は無い。今回は隙の無いマシンに仕上がっていた。
レッドブルはこのままでは苦しい闘いになってきそうだ
トータルパッケージのいいフェラーリ。ルクレール完勝!!
RB18はかなり過激なサスペンションレイアウトが施されている。加減速時の荷重移動をより有利に行うサスペンションジオメトリを使い、加減速でのライドハイト変化をベンチュリーフロアと車体上面エアロに結びつけている。必要に応じたダウンフォースを得るというコンセプトで成功したマシンだ。しかし、ライバル・フェラーリのパフォーマンスの向上が著しく、RB18はこのままのレベルではフェラーリに遅れを取ってしまう。確実なダウンフォースを得る様な手段を講じないと、マルチプレーヤー化したフェラーリとガチで戦うのがつらくなってしまいそうだ。
津川哲夫
1949年生まれ、東京都出身。1976年に日本初開催となった富士スピードウェイでのF1を観戦。そして、F1メカニックを志し、単身渡英。
1978年にはサーティスのメカニックとなり、以後数々のチームを渡り歩いた。ベネトン在籍時代の1990年をもってF1メカニックを引退。日本人F1メカニックのパイオニアとして道を切り開いた。
F1メカニック引退後は、F1ジャーナリストに転身。各種メディアを通じてF1の魅力を発信している。ブログ「哲じいの車輪くらぶ」、 YouTubeチャンネル「津川哲夫のF1グランプリボーイズ」などがある。
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みんなのコメント
最強になったという記事は見かけたことがないのだが、
・・・いつの間に?
それにまだ最強でもないだろう。