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新型カローラの進むべき道は正しいのか?

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新型カローラの進むべき道は正しいのか?

2018年6月に投入されたハッチバックの「カローラ スポーツ」に続き、カローラの4ドア セダンとワゴンが9月17日に発表された。1966年に誕生し、ニッポンのモータリゼーションを牽引してきた大衆車の代名詞にして、販売累計台数4750万台を誇る世界一のベスト・セラー・カーの12代目の登場である。

その新型カローラの試乗会が10月上旬、横浜で開かれた。今回からセダンからはアクシオというサブネームがはずれ、単にカローラに、ワゴンはフィールダーからツーリングに改名している。ここでは主にセダンのカローラについて報告する。

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【主要諸元(ガソリン S)】全長×全幅×全高:4495mm×1745mm×1435mm、ホイールベース:2640mm、車両重量:1300kg、乗車定員:5名、エンジン:1797cc直列4気筒DOHC(140ps/6200rpm、170Nm/3900rpm)、トランスミッション:CVT、駆動方式:FWD、タイヤサイズ:205/55R16、価格:213万9500円(OP含まず)。海外版のサイズが大きくなりすぎた、というわけで、国内向けカローラは2006年発売のカローラ アクシオ以来、5ナンバー枠の国内専用モデルになっていた。これまでヴィッツ用をベースにしていたプラットフォームを、新型は現行プリウスとともにデビューしたTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)にあらためたのが目玉だ。

これにより、リアのサスペンション形式ひとつとっても、トーションビームからダブルウィッシュボーンへと、飛躍的に進歩したのである。

ボディカラーのスカーレットメタリックはオプション(3万3000円)。ボディは全長×全幅×全高:4495mm×1745mm×1435mm。意外や、と、筆者は思ったのですけれど、新型カローラも国内専用で、海外版よりホイールベースが60mm短い。2640mmという数値は、カローラ スポーツ(ハッチバック)と同じ値で、つまりカローラ(セダン)もカローラ ツーリング(ワゴン)も、国内仕様はプラットフォームがハッチバックとおなじなのだ。

逆にセダンとワゴンの海外版は60mmホイールベースが長い。これが何を意味しているかというと、つまり海外版カローラは現行プリウスと同じホイールベースなのである。カローラ スポーツはショート・ホイールベースにしてキビキビ感を出す。と、同時に日本のユーザーの使い勝手をおもんぱかって、全長の短い日本専用モデルのベースにしているのである。

新型カローラはセダンのほか、ステーションワゴンの「ツーリング」、5ドア・ハッチバックの「スポーツ」の3タイプから選べる。「カローラは、常にその時代のお客様のニーズ、地域のニーズに合わせ、変わることをいとわず開発してきたクルマ」という上田泰史(うえだ・やすし)チーフエンジニアのことばがメディア向け資料内でも紹介されている。

海外版カローラ比、セダンは135mm、ワゴンは155mm、それぞれ全長が短い日本専用モデルを、市場に合わせた丁寧で親切な仕事と考えるか、それとも海外版と一緒でいいじゃんととらえるか、興味深いテーマではあるまいか。

インパネ上部のディスプレイオーディオは全車標準。シート表皮は、上級グレードの「W×B」が合成皮革、その他のグレードはファブリック。シートヒーターは2万7500円のオプション。リアシートはカップホルダー内蔵のセンターコンソール付き。上田チーフエンジアによると、このサイズには根拠がある。それはプリウスが3代目で5ナンバーから3ナンバーへと拡大したにもかかわらず、たいへんよく売れた。その3代目プリウスにならって、全幅1750mm、全長4.5m以下という数字が導き出されたという。そして、TNGAを採用した結果、まったく異なるクルマをもう1台つくっていた従来に比べ、大幅に仕事量を省略できたそうだ。

というわけで、新型カローラの全長×全幅×全高は4495×1745×1435mmと、先代よりは確実に大きくなったけれど、海外版より135mm短くて35mm狭い専用ボディに仕立て直された。ドアミラーの取り付け位置を工夫することで、ミラー格納時の車幅は従来型と同等を実現した、というのは細かいジマンのうちのひとつである。

ラゲッジルーム容量は通常時429リッター。9.5インチのゴルフバッグが3個積める。リアシートのバックレストは40:60の分割可倒式。パワートレインは3種類パワートレインはカローラ スポーツが1.8リッター直列4気筒ガソリン・エンジン+電気モーターのハイブリッドと、1.2リッター直列4気筒ガソリンターボ・エンジンの2本立てであるのに対して、セダンとツーリングは1.8リッター直列4気筒ガソリン・エンジンがくわわっている。どちらも1.2ターボは6速MTのみというエンスー仕様だ。残念ながら、試乗会には用意されていなかったけれど。

筆者はこのうち、1.8リッター直列4気筒ガソリン・エンジン搭載の「S」という3種類あるうちの真ん中のグレードと、ハイブリッドの最上級グレード「W×B(ダブリュ・バイ・ビー)」というセダンに試乗した。前者が213万9500円、後者が275万円で、どっちがよかったかといえば、断然ハイブリッドだった。電気モーターと電池が重しになって、乗り心地がSよりしっとりしている。

最上級グレード「W×B」のタイヤサイズは215/45 R17。リアスポイラーは標準。ハイブリッド仕様が搭載するパワーユニットは、1797cc直列4気筒DOHC(98ps/5200rpm、142Nm/3600rpm)+モーター(53kW/163Nm)。車重はSの1300kgに対して、ハイブリッドW×Bは70kg増しの1370kg。フロントに電気モーターその他で50kg、リアシートの下にリチウムイオン電池が配されていて20kg重くなっている。この電池のおかげでリアの剛性が上がり、前後重量バランスもフロントが若干重くなってどっしり感が増している。

プリウスからそっくり移植した1.8リッター直列4気筒ガソリン・エンジン+電気モーターは、満電だったら理論上115~125km/hでEVモードのまま巡航する。エンジンと電気モーターの連携が上手で、アクセル全開を試みたりしなければ、完全電気自動車みたいに静かで、しかも記憶のなかのプリウスより乗り味に温かみみたいなものがある。

ハイブリッドユニットのシステム最高出力は122ps。WLTCモード燃費は25.6km/L。搭載するトランスミッションは電気式無段変速機。走行モード切り替え機能も備わる。シャシー設計担当者の解説によれば、「人間目線でのFun to Driveを目指した」というサスペンションの改良が確実に効果を発揮しているのだろう。「人間目線」の意味は、目線が動かされなければ、疲れない、ということで、シミュレーターで路面からの外乱に対して人間が予測できるようなクルマの動き方を検証しつつ、フラットな乗り心地を目指した。

披露された輸入車Aとの比較動画によれば、最大のライバルたるドイツのA車以上にドライバーの目線の動きが小さかった。

ハイブリッド仕様の駆動方式はFWD(前輪駆動)と4WDから選べる。上級グレードのメーターパネルは、7.0インチTFTカラー液晶画面付き。走行モードによって液晶画面の表示が変わる(写真はスポーツモード)。旋回姿勢の決まりやすさとライントレース性も重要ポイントで、前者はリニアな荷重移動が、後者はタイヤの手応えをリニアに感じ取れることがキモだと考え、ダンパーとコイル・スプリングの特性をチューニングして改善したのだという。

そのビフォー/アフターが体験できるようにカローラ スポーツの新旧テスト車が用意されており、試乗してみると、なるほど、新しいセッティングのほうが目地段差での上下動が小さく、フラットであることが確認できた。

1.2リッター直列4気筒ガソリンターボ・エンジンは、最高出力116ps/5200~5600rpm、最大トルク185Nm/1500~4000rpmを発揮する。上級グレードのタイヤサイズは225/40R18。上級グレードのシートはレッドステッチ入りのスポーツ・タイプ。カローラはカローラ話をセダンに戻すと、ガソリンのSはハイブリッドに較べると、よく言えば軽やかだけれど、悪く言えば、少々落ち着きがなかった。205/55R16と近頃では細めのタイヤはフニャリとして頼りない。215/45R17のハイブリッド W×Bのしゃっきり感とは対照的だった。

高速安定性がもうちょっとあってもいいとは思うけれど、それよりなにより、1.8リッターの2ZR-FAE型直列4気筒エンジンは、まわすと、5000rpm以上で電気掃除機みたいな音を立てる。

ガソリンモデルは、FWD(前輪駆動)のみ。タイヤサイズは205/55 R16。エントリグレード以外、アルミホイールは標準。ガソリンモデルが搭載するエンジンは1797cc直列4気筒DOHC(140ps/6200rpm、170Nm/3900rpm)。ハイブリッドも基本的にはおなじ1.8リッターの2ZRを使っていて、これもまわすと同様にうるさいけれど、こちらには電気モーターという心強い助っ人が寄り添っている。

新型カローラは6500rpmからレッドゾーンのエンジンを5000rpm以上まわさない限り、路面によってはロード・ノイズが大きめに入ってくるということはあるけれど、とりわけハイブリッドは驚くべき静かさと、ガソリン・エンジン車ともども、穏やかで素直、従順で安全なハンドリングを持っていて、いかにもニッポン人がつくりそうで、もしも筆者が外国人だったら「ニッポン、スゴイ!」と驚嘆しそうな小型車だった。

ガソリンモデルのWLTCモード燃費は14.6km/L。標準グレードのアナログメーターは、車両情報などを表示する4.2インチTFT液晶画面付き。ガソリンモデルのトランスミッションはCVT。ステアリングホイールはオーディオ用&操舵支援系のスウィッチ付き。でもって、今度のカローラの本命はハイブリッドにあり、と思うに至った。そしたら、プリウスはどうなる? 試乗後、上田チーフエンジニアに質問したところ、関西弁の柔らかい口調ながら率直な回答を得た。

「私はカローラしか見ていません(笑)。プリウスはパイオニアです。カローラはそうではない。価格的にはプリウスとアクアのあいだを狙っています。社内で切磋琢磨していく。“もっといいクルマづくり”につながればいいんです」

ハイブリッド仕様のディスプレイオーディオは、エネルギー状況も表示する。ワイヤレス充電機能は1万3200円のオプション。万一の事故や急病時、ワンタッチで専門のオペレーターにつながり、すばやく緊急車両を手配する機能「ヘルプネット」は全車標準。新型カローラの受注状況は、セダンが2000台弱、スポーツが2000台強、ツーリングが5400台で、そのうちハイブリッドが占める割合は6~7割という。なるほど、新型カローラは窓際国内専用車のロートル向けからハイブリッド戦線に躍り出た。こんなに先代から変わったのだから、いっそカローラという名前を変えてもよかったのでは?

「『カローラという名前をもっと大事にせよ』と豊田章男、社長からいわれているんです。社内の扱いがいちばん軽々しい」と、言って上田チーフエンジニアは笑った。

「プラス電気モーターの余裕」。トヨタの外にライバルはいない。

文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.)

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