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「オバフェン」「チンスポ」の昭和の族車! じつは真面目なレースがルーツだった

掲載 更新 20
「オバフェン」「チンスポ」の昭和の族車! じつは真面目なレースがルーツだった

レーシングマシン風の改造車スタイル

「グラチャン族」という言葉をご存じだろうか。昭和の時代に大流行したいわゆる暴走族で、レーシングマシン風の派手な外装を施した改造車に乗り、公道を走り回っていた街道レーサーたちのことだ。

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 もちろん、今ではほとんど姿を見なくなったスタイルなのだが、オバフェンやチンスポといった独自のスタイルやカスタム用語を生みだし、後に生まれるカスタマイズに影響を与えたものも多い。懐かしく個性あるスタイルだけに愛蔵されるミニカーモデルになって市場を形成しているほどなのだ。また、最近は海外でも注目されていて、一部ではあるがちょっとホットな話題にもなっているようだ。

 ここでは、そんなかつて人気だった暴走族文化であるグラチャンは、一体どんなものだったのかを検証する。

富士スピードウェイのレースが由来

 グラチャンは、1970年代から1980年代にかけて大きな人気を博したレース「富士グランチャンピオンシリーズ」に由来する。

 1971年から開始されたこのシリーズは、富士スピードウェイを舞台に、ポルシェやマクラーレンといった海外製のレーシングカーはもちろん、日産のスカイラインGT-Rやフェアレディ240Z、マツダのサバンナRX3、ホンダのS800といった市販車ベースの改造マシンまでが出場したレースだ。

 特に、1970年代後半頃には、星野一義氏をはじめとする当時のトップレーシングドライバーの活躍に人気が集まり、「グラチャン」の愛称で親しまれ大ブレイクした。

「グラチャン族」は、当時このレース(サポートレースの前座レースも含め)に出ていたドライバーやレーシングマシンに憧れた若者たちを中心に広がったものだ。前述の通り、グラチャンに出ていたレーシングマシンなどを模した派手な改造車に乗り、若い熱情もほとばしってしまい街中で暴走行為などを繰り返していた。

 また、グラチャン開催時には、富士スピードウェイに集まるのが常。多くの一般観客が集まるグラチャン会場での集会や暴走行為などは、迷惑行為として社会問題にまで発展した。

グラチャン改造車の特徴

 グラチャン族が乗る改造車の特徴は、内外装にレース用パーツなどを装備して、レーサーさながらの低い車高にしていたことだ。人気のレーサーのスタイルを振り返れば、それが分かるだろう。

 例えば、フロントバンパー下部には空力パーツのスポイラー、ワイドトレッドの太いタイヤにスポーツホイール、前後フェンダーを拡張したいわゆるオーバーフェンダーなどを装着。さらにはエンジンの馬力をアップしていたり、内装にもバケットシートやロールバーなどをあつらえレーシングマシン風の仕様になっていた。

 また、これらの改造から様々なカスタム用語も生まれている。例えば、車高を低くすることを「シャコタン(車高短)」、フロントバンパーのスポイラーを「チンスポ」、オーバーフェンダーを「オバフェン」といった具合だ(ちなみに、チンスポのチンとは、アゴの英語であるchinのこと。クルマのバンパー下をアゴに例え、そこに装着したスポイラーの意味)。そして、これらの一部は、今でも通用するカスタム用語として定着することになる。

 ベース車には、スカイラインGT-RやフェアレディZ、RX-7といった当時のスポーツ車から、1980年代に入るとクレスタやセドリック、グロリアといったセダンタイプまで様々な車種がそろっていた。レーサー風カスタムの高い人気により、ベース車の幅も広がっていったのだ。

 ちなみに、セダンをベースとしたカスタマイズといえば、1990年代前半頃に生まれた「VIP(ビップ)」というジャンルがあるが、低い車高やエアロパーツ、オーバーフェンダーなどのスタイルは、グラチャンに通じるところも大きい。また、VIPは2000年前後に一斉を風靡し、セダンだけでなくミニバンや軽自動車などにも波及、車種を越えて同様のカスタマイズスタイルが受け継がれていくことになる.

海外の日本車好きが注目した「グラチャン仕様」

 グラチャン仕様のクルマは、日本ではあまり見かける機会は少なくなったが、アメリカや東南アジアなど海外の日本車フリークの間では、ちょっとしたブームになっているという。

 クルマ関連のある貿易業者の話では、特に、最近はハコスカやフェアレディ240Zなど古い日本車が人気で、ある程度の台数が海外に輸出されているという。そして、それら日本製旧車が好きな人たちの中には、実際に愛車をグラチャンに改造し、SNSなどに投稿している人も多いというのだ。

 ベース車だけでも稀少な上に、今の日本では少なくなった改造スタイルだけにパーツもほぼないだろう。恐らく、現地でワンオフ製作しているのだろうから、費用もばかにならない。そこまでして、かつて「日本で流行った」カスタマイズ・スタイルに憧れるという人たちがいるのだ。

 日本の暴走族文化が海外に波及しているというのは、ちょっと興味深い話だ。マンガやアニメ、古くは浮世絵など、我々の先人が築いた文化の中には、海外で高い評価を受けているものは意外と多い。社会的事象としては「暴走族」ではあったが、日本の若者のクルマに対する熱情の現れであったカスタム仕様を、海外ではブランド化しようとしているのだ。

 どうも筆者が思っている以上に、海外では今「ジャパン」がホットらしい。一方で、かつて浮世絵は、日本から多くの名作が外国に流出してしまったと聞く。暴走族を擁護するつもりはさらさらないが、そろそろ我々も自分たちの様々な文化に対し、もう少し目を配ったり、大切にするべき時なのかもしれない。

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