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新型フェラーリ296GTBはココがスゴい! 後編:空力性能

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新型フェラーリ296GTBはココがスゴい! 後編:空力性能

日本に上陸したPHEV(プラグ・イン・ハイブリッド)の新型フェラーリ「296GTB」の注目すべきポイントについて世良耕太が解説する。後編では空力性能に迫る!

可動式のリアスポイラーを装備

新型フェラーリ296GTBはココがスゴい! 前編:パワーユニット

新開発のエンジンを除く、フェラーリ296GTBの技術上のハイライトは空力性能だ。

リアの空力処理はエンジンとも関連しており、排気系がVバンクの中に収まったホットVであるのが大きく影響している。296GTBのリアを見ると、シングルのテールパイプがリアバンパー中央部の高い位置にある。これがホットVの効果だ。

一般的なV型エンジンはVバンクの外側に排気系があるため、テールパイプは2系統に分かれ、バンパー下部にあるディフューザーを侵食してしまう。その様子はコンベンショナルな外側排気のレイアウトを持つ、3.9リッターV型8気筒ターボエンジンを搭載する「F8トリブート」を見ればわかる。

296GTBは排気系がディフューザーを侵食していない。だから、ディフューザーの形状をより理想に近づけられ、効率のいい形状に出来る。ディフューザーの効率を高められれば、ダウンフォースの発生をリアウイングに頼らなくて済む。だから、296GTBはこれ見よがしなリアウイングを備えていない。それゆえ、リアセクションは非常にクリーンな造型となっている。

ルーフからリアエンドにかけてスクリーンで連続的にカバーせず、スパイダーのようにルーフとリアエンドを不連続にしたのも、296GTBのスタイリング上の特徴だ。ルーフからリアエンドにかけての不連続性は空気の流れをコントロールする点では不利に働くが、フェラーリはシミュレーション技術で空気の流れを再現するCFDを駆使し、ルーフを通過する空気が精度高く車両後方に流れるようにしたという。

リアエンドには、バンパーのデザインと一体化した状態で可動式のスポイラーが装備されている。「458スペチアーレ」も同様のデバイスを装備していたが、目的はドラッグ(空気抵抗)の低減だった。296GTBの場合はダウンフォース(空気の圧力差を利用して発生させる、車体を路面に押さえつける力)を発生させるのが狙いだ。加速度があるしきい値を超えると、車両運動制御システムの判断によりスポイラーが伸長。最大100kgのダウンフォースを発生して、リアタイヤの垂直荷重を増やす。

タイヤのコーナリングフォースは路面との間のμ(ミュー:抵抗係数)と垂直荷重に比例するので、ダウンフォースの増加によって垂直荷重が増えればコーナリングフォースは増える道理。結果、グリップ限界が高まってコーナリングスピードが高まる方向に作用する。

F1とおなじ技術を投入

フロントはエンジンとトランスミッション用のラジエターを左右に分割して配置し、バンパー下面中央部の、空力的に重要なエリアを有効に使えるようにした。結果、フロントのダウンフォースを効率良く発生させることに成功している。

フロントバンパー中央下端部にステーがあり、その両脇に小さな開口部がある(F1の吊り下げ式ウイングをイメージしたそう)。この部分はF1用語でいう「ティートレイ(紅茶を運ぶお盆のような矩形のパネル)」状とし、パンパー下面両サイド部と段差を設けている。高さの異なるパネルを通過した空気が合流するところで、前後方向に軸を持った縦渦が発生(小規模な台風のようなものだ)。高いエネルギーを持ったその渦が勢いよくアンダーボディに流れ、ダウンフォースを増大させる。まったくもって、F1の空力開発で適用しているのとおなじ手法だ。

ヘッドライトの内側にブレード状のデイタイムランニングライトがあり、その下に小さな開口部がある。この開口部の正体はブレーキ冷却用の空気取り入れ口だ。ブレーキ冷却用のダクトはフロントバンパー下部に設けるのが一般的だ。296GTBはヘッドライト横に空気の取り入れ口を設け、バンパー下から障害物を排除し、下面をフラットにすることでドラッグの低減とダウンフォースの増加に結びつけている。

フロントバンパー前面コーナー部にあるスリット状の開口部は、エアカーテン用だ。ここから取り組んだ空気をホイールハウス内で放出。すると、カーテン状に空気が吹き出し、回転するフロントタイヤが巻き起こす乱れた空気を制御してドラッグ低減を図る仕組み。また、フロントに搭載するラジエターを通過した熱く、乱れた空気は、アンダーボディに沿って排出される設計になっている。そのため、ドア後方にあるインタークーラー冷却用ダクトには干渉せず、それによってインタークーラーのサイズを小さくすることができたという。

ビークルダイナミクス面では、6ウェイ・シャシー・ダイナミック・センサー(6w-CDS)と呼ぶ、6つのセンサーによって得られた情報を車両運動制御に生かしているのが特徴だ。6w-CDSの適用は「自動車業界では世界初」という。この6w-CDSと統合して制御するのが、新採用のABS evoだ。ペダルフィールを犠牲にせず効率を高め、サーキット走行では制動距離の短縮に結びつけたという。F8トリブート比で、200-0km/hの制動距離は8.8%短縮。200km/hからの繰り返しブレーキングを行った際の制動効率は24%向上したというから、飛躍的な進化だ。

新型296GTBには、F1技術を活かした意欲的な新機構が多数採用されている。はたして、その走りはいかに? ステアリング・ホイールを握る機会が楽しみだ。

文・世良耕太

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