F1では2026年シーズンから新たなテクニカルレギュレーションが導入される予定となっている。パワーユニット(PU)はそこで大きく刷新されることとなっており、各PUマニュファクチャラーは開発を進めている。
2026年シーズンからF1にPUマニュファクチャラーとして本格復帰を果たすホンダのF1プロジェクトのラージ・プロジェクトリーダー(LPL)を務めるHRC(ホンダ・レーシング)の角田哲史エグゼクティブチーフエンジニアは、新時代到来に向けたHRCのPU開発状況について「2割くらいのステージ」と明かした。
■レッドブルRB20の”超攻めた”デザインに、ホンダ/HRCが果たした役割。角田哲史LPL「エンジンの熱限界を上げることで、間接的に貢献できているはず」
次世代PUでは、2014年に導入されたV型6気筒エンジン+ハイブリッドシステムという構成は引き継ぎつつも、高価かつ複雑なMGU-Hが廃止され、内燃エンジン(ICE)とMGU-K(運動エネルギー回生システム)の出力比率が50対50となる。また、カーボンニュートラル燃料の100%使用も義務づけられる。
このレギュレーション刷新が呼び水となり、2026年からは既存のメルセデス、フェラーリ、ルノー、ホンダに加え、アウディとレッドブルパワートレインズ(RBPT)の2社が新規参戦を果たす。
デッドラインに向けて各PUマニュファクチャラーが開発を行なう中、先日行なわれたHRC取材会で、角田LPLに2026年に向けた開発状況を伺った。
「ありきたりな言い方ですと、勝負の期間は2026年2月にホモロゲーションを提出するまであります。そういった時間的な目線で言うと、今は2割くらいのステージですとしか言いようがありません」
角田LPLはそう語り、HRCでは次世代PUでの肝となる電動系のシステムを優先的に開発していると明かした。
「我々の開発の中でも優先順位があります。例えば、電動系は部品を作るのにも時間がかかりますし、仕様を変更するのにも時間がかかります。バッテリーパックを作る(ミルトンキーンズの)製造ラインはレッドブルに譲渡してしまったので、我々の中でその作りに対しても同時にケアしていかなければいけません」
「そういったところに時間がかかるため、我々はまず電動系に力を入れ、それを確立できる見通しが見えるよう優先的にやっています。当然、ICEをやらなくていいという訳にもいけません。ICEでも必要なところで手を打っています。そういったやり方で現在は準備を進めています」
2021年限りでF1参戦を終了したホンダだが、2025年末まではホンダの二輪・四輪レース部門であるHRCが、技術パートナーとしてRBPTを介してレッドブル・レーシングとRB(昨年までのアルファタウリ)にPUを供給することが決まっている。
正式復帰となる2026年からホンダは新たにアストンマーティンへPU供給を開始する。それに向けてHRCは、トラックサイドでPU運用を行なう“前線基地”をヨーロッパに新設するとしている。
角田LPLが語った通り、これまでPUエナジーストア(ES)の製造を担ってきたイギリス・ミルトンキーンズの拠点はレッドブルに譲渡済み。ホンダとしては新たな施設が必要となるが、2026年以降はESも日本のHRC Sakuraで開発・製造することになるため、その規模は以前よりもコンパクトなモノになるという。
「前線基地は、レースチームがいてメンテンスを行なう場所になります。要するに、そこで新しいモノを作ろうというふうには考えていないんです」
角田LPLはそう説明した。
「そういう意味で言うと、今までよりも大規模ではない前線基地になります」
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