2021年8月1日、ランドクルーザーが誕生から70周年を迎え、8月2日は新型ランドクルーザー300が発売された。
新型ランクル300も大いに魅力だが、50代以上のおじさん世代には、“ヨンマル”こと、1960年から1984年に生産されたランクル40系のほうが強烈に頭に残っているに違いない。
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嬉しいことに、トヨタは8月1日からランクル40の補給部品の復刻を発表した。「GRヘリテージパーツプロジェクト」として復刻、サプライヤーによる特別協力のもと、すでに廃版となってしまった補給部品を復刻し、純正部品として再販売する予定。
そこで、本企画では、ランドクルーザー40系にスポットを当て、今中古車市場でどんな状況なのか、実際に購入した際のチェックポイントなどを伊達軍曹がランクル専門店に徹底取材!
文/伊達軍曹
写真/トヨタ
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■ランドクルーザー40系の魅力とは
2021年8月2日、いよいよ新型トヨタ ランドクルーザー(300系)が日本でも正式発売された。
伝統のフレーム構造は踏襲しつつ、TNGAに基づく新開発のGA-Fプラットフォームを採用。さらには新開発のV6ツインターボエンジン(3.3Lディーゼル/3.5Lガソリン)搭載や約200kgの軽量化、懸案だった盗難対策としてトヨタ初の「指紋認証スタートスイッチ」を標準装備するなどにより(※GXのみオプション)、事前受注が殺到。納車はなんと4年待ちの状態だという。
なんとも魅力的な新型ランクル300ではあるが、新型がハイテク系の魅力を増せば増すほど、旧型のアナログな魅力も増していくように感じられる。
そして数ある旧型ランクルのなかでも今、特にシブいと感じられるのは「ランドクルーザー40系」であろう。
ランドクルーザー生誕70周年を迎えた8月1日、トヨタはランドクルーザー40系の補修部品復刻を発表。復刻する部品はエンジン、駆動系、排気系が中心。写真は1961年式FJ40V
40系は、トヨタジープBJ型(初代ランドクルーザー)と20系を経て1960年に発売され、1984年までの長きにわたって販売された3代目のトヨタランドクルーザー。
ボディデザインは前身の20系を少々改良した程度だったが、シャシー関係はフルに改善および改良。当初のパワーユニットは3.9L直6ガソリンのF型エンジンのみだったが、1974年に3L直4のB型ディーゼルエンジンを投入。これ以降、「ランクルといえばディーゼルエンジン」というイメージが定着することになる。
FJ45(V)は4ドアのロングホイールベース(2650mm)車で国内では少数派。写真はFJ45Lピックアップ
その後、ディーゼルエンジンの排気量は順次拡大されていき、日本国内のみならず世界中の悪路で大活躍したランクル40系は一大ロングセラーに。そして登場から24年後の1984年11月にようやく、後継モデル「ランドクルーザー70系」へのフルモデルチェンジが行われた。
……と、このようなランクル40系は、そのクラシカルなたたずまいにより、今なお世界中で大人気。インターネットオークションサイト「eBay」では極上モノのランクル40系が1000万円以上で取り引きされることもあり、国内の中古車マーケットで500万円以上の値札が付くことも決して珍しくはない。
さらにはランクル生誕70周年となった今年8月1日、トヨタは40系の修理用部品を復刻し、来年から再販売すると発表。
これは発売から60年以上たった今も世界各地で数万台が活躍してる40系ユーザーの声に応えるもので、まずはエンジンや駆動系といった基本性能に関わる重要部品を復刻する予定。そして2022年初頭以降、生産の準備が整った部品から順次発売するという。
■ランクル専門店に徹底取材!
1974年、ランクル史上初のディーゼルエンジンとなる3L、直4のB型エンジンを搭載するBJシリーズを発売。写真は2ドアショートホイールベース車(2285mm)の1974年式BJ40
ランドクルーザー40系の中古車情報はこちら!
フレックス・ドリーム ランクルさいたま北店のホームページはこちら!
こうなってくると、否が応でも「クラシカルなランクル40系が欲しい!」という気分が盛り上がってくるわけだが、実際のランドクルーザー40系は最終年式であっても40年近く昔のクルマであり、なおかつ流通量も少ないため、「どこで買い、購入後はどうやって維持していけばいいのか?」ということが今ひとつよくわからない。
また、おそらくはディーゼルエンジン搭載車が中心となるはずであるため、例の九都府県市ディーゼル車規制の関係で「そもそも買えるのか? 乗れるのか?」という不安もある。
そこで、新旧すべてのランドクルーザーを長年取り扱っている専門店『フレックス・ドリーム ランクルさいたま北店』の店長・五嶋重徳さんに、具体的なあれこれを教えていただくことにした。
――ということで五嶋さん、まずはランドクルーザー40系の中古車相場について教えてください。カーセンサーnetなどを見ても「応談」が多くてよくわからないのですが、40系の相場は今、だいたいいくらぐらいなんでしょうか?
五嶋さん 世の中には販売価格で200万円台の個体もありますが、そういった価格の物件は正直、コンディション的には難ありと思われます。
本日現在、当店には40系の販売車両はありませんが、もしも弊店で仕入れて販売するとしたら、おおむね300万円台でしょうか。モノによっては400万円台か500万円台になることもあると思います。
――なるほど。要するに40系の相場は300万~500万円ぐらい、ということですね?
■相場がないというのは???
1974年式BJ40のインパネ。台形のメーターや灰皿、グローブボックス、トグルスイッチなどレトロで懐かしさを感じる
五嶋さん いや、正確に言いますと「ランクル40系に相場はない」という表現になるかと存じます。
――??? 「相場がない」というのはどういうことですか?
五嶋さん 40系はご承知のとおり古いクルマですので、個体ごとのコンディションや背景は本当に千差万別です。そのため「40系だからいくらぐらい」とか、「この年式だから○○○万円ぐらい」みたいな“相場”はないんですよ。あくまでも「その個体」に見合った価格が付く――という状況であるとお考えください。
――あ、なるほど。確かにそういう年式ですよね……。では次の質問として、ランクル40系って買った後、割りと普通に乗れるものなんでしょうか? 要は「故障しませんか?」という質問なんですが……。
五嶋さん これはランドクルーザー40系に限った話ではありませんが、古い年式の車にはどうしたって故障発生のリスクはあります。そういったリスクというか可能性と、しっかり向き合いながらご購入される必要はある――というのが、まずは大前提になります。
1979年式BJ44Vの縞模様のフロントシート
――押忍。そこはわかるつもりです。
五嶋さん そのうえでご質問にお答えしますと、今現在、ガソリンエンジンを搭載した40系はほとんど流通しておらず、ほぼすべてがディーゼルエンジン搭載車です。
で、40系に積まれたディーゼルエンジンは非常に頑丈ですので、とりあえずエンジン自体については「かかれば大丈夫」とは言えるでしょう。修理するにしても、電子制御は特に使われていませんので、普通に修理すれば、普通に直るエンジンです。
■フレームのサビには要注意!
鮮やかな原色のレッドやブルーは人気が高かった。写真は2ドアミドルホイールベース(2430mm)の1979年式BJ44V
――エンジン本体は特に心配はなし……と。それ以外の部分はどうですか?
五嶋さん やはりゴムを使っている部分の劣化はどうしても激しいですよね。車というのは随所にゴムが使われていますが、そのなかでも主要な部分と目立って劣化している部分は、ご購入時にしっかり交換する必要があります。あと40系で多いのはボディとフレームのサビですね。
――あ、そうか。やはりこのぐらいの年式だと、どうしてもサビの問題は付き物ですね……。
五嶋さん ボディのサビは、仮にレストアした個体であっても次から次へと発生してきます。その意味で、ボディのサビについては「それと付き合っていくしかない」というのが正直なところです。
しかしフレームにサビが生じてしまっていると「付き合う以前の問題」になってしまいますので、そこは要注意ですね。
――具体的にフレームのどのあたりにサビが発生しやすいのでしょうか?
五嶋さん コンディションがきわめて悪い40系だと、右サイドフレームの内側がサビて、穴が空いてしまっているものが多いですね。
そこにサビが集中する理由はわからないのですが、そこが腐っているともはや車として機能しませんので、右サイドフレーム内側のサビは必ずご確認いただきたいと思います。
ショートホイールベースの1974年式BJ40V
――ううむ、了解です。そうやってチェックしながらランドクルーザー40系を買ったとして、その後の修理はどうなんでしょう? 純正部品はまだ供給されているんですか? トヨタが部品の復刻をするらしいですが、発売は来年ですし……。
五嶋さん さすがはランドクルーザーといいますか、純正部品はまだけっこう出ますよ。ただ、もちろん出ない部品もあります。ブレーキマスターなんかも欠品していまして、ぜひ復活させてほしいんですけどね。
――そういった「ない部品」についてはどう対処されているのですか?
五嶋さん そういった場合には現物部品の修理と、他車種用部品の流用で対応しています。40系の維持は「まるで現代のクルマのようにイージー」では決してありませんが、そのような対処もできますし、出る部品はまだ出ますので、さほどのご心配をいただく必要はないかと思いますよ。
■ディーゼル車は九都市県市は乗ることができない
1979年式BJ44V
――なるほどぉ……。でも大切な話として「九都府県市(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、横浜市、川崎市、千葉市、さいたま市、相模原市)では、条例により粒子状物質の排出基準を満たさないディーゼル車の運行が禁止されている」という問題がありましたね?
五嶋さん ありますね。その地域ではNOx・PM法と条例により、ディーゼルエンジンの40系は登録も乗り入れもできません。
――でもPM(粒子状物質)の除去装置を付けることで、なんとかならないものですか?
五嶋さん 結論として、規制地域で登録と乗り入れを可能にする対応もできます。ただ、それにはどうしても100万円を大きく超えるご予算が必要になってしまいますので、積極的にお薦めはしていませんね。
――なるほど、おおむね了解しました。100万円や200万円で買えるわけではないし、居住地域によってはディーゼル規制の問題もある。でも馬鹿みたいな相場高騰はまだ起きておらず、コツコツ直しながら乗ることも普通にできそうということで、ランクル40系に対しての興味がさらに湧いてきましたよ! 本日はお忙しいなかありがとうございました!
五嶋さん いえ、どういたしまして!
■ランドクルーザー40系の歴史年表
■1960年/ランクル20系の後継モデルとしてランクル40系が登場。20系のロングボディモデルに30系の名前が使用されていたため、40系となった。遅れて45(B)シリーズ登場。荷台の狭さが指摘されていたピックアップトラックとキャブシャシー用にホイールベースを2950mmとした45Bと呼ばれるスーパーロングが追加。ピックアップの型式はFJ45PからFJ45P(B)に切り替わる。
●発売当初の型式
FJ40:ショートの幌
FJ43:ミドルの幌
FJ45V:ロングのハードトップ
■1967年/55型の生産開始に伴い、4ドアステーションワゴンのFJ45Vが生産終了。同時にロングのホイールベースを2950mmへ統一、45(B)は再び45と呼ばれることになる。同じ型式で長さと形態が異なるモデルが混在するため、趣味上の分類としては1967年以前の45を初代、それ以降を2代目としている。
■1973年/日本国外向けのロングホイールベースモデルに直列6気筒3576cc、OHV、95psのH型ディーゼルエンジン搭載のHJ45を追加。ランクル史上初のディーゼルエンジンとなる(B型:水冷直列4気筒2977ccディーゼル)。
FJ40(ショート)、FJ43(ミドル)、FJ55V(ロング)という形で40系と55系が並行して販売される。
●40系→70系(本格派クロカン四駆モデル)
●55系→60系→80系→100系→200系(乗り心地も意識した乗用スタイル四駆)
■1974年/ランクル史上初めてのディーゼルエンジン、B型(2代目)2997ccディーゼルを搭載したBJシリーズが発売。
これ以降ディーゼルエンジンはランクルの主流になっていく。BJシリーズはそれまで1ナンバー登録だったランドクルーザーに誕生した初の4ナンバー車となる。型式はBJという名称が与えられ、ショートの幌BJ40、ハードトップのショートBJ40V、ミドルの幌BJ43をラインナップ。
■1975年/ワイパーがウインドシールド下側に移設され、ハードトップのドアを組み立て式サッシからフルプレスに変更、固定式であったリアクォーターウインドウを、引き違い式と後端フリップアウト式の2種類へ変更。
■1976年/アウターリアビューミラー(バックミラー)の位置がカウルサイドからドアに変更となり、国内ボンネット型車では初のドアミラー車となる(1980年には国内モデルのみフェンダーミラーへ戻された)
■1979年/日本国内のみ排ガス規制のため、B型エンジンをボアアップして2B型(水冷直列4気筒、3168cc)エンジンへと変更。型式もショートの幌BJ41、ハードトップのショートBJ41V、ミドルの幌BJ44に変更される。また、フロントディスクブレーキとリアのLSD、クーラーがオプションに設定される。
ボディは大幅に設計変更され、大型プレス材を多用し、鋼板も薄くなる。ヘッドランプも法規制に合わせて感覚が広げられ、ラジエターグリルもオーバルから矩形になる。室内に置かれていた燃料タンクを室外の床下に設置し、65Lから95Lに拡大。
増加の一途を辿る国内の一般ユーザーへの対策として、バンパーなどのメッキ加飾やトラック丸出しのリング式ながら白く塗られたホイールで差別化された外観と、室内には紅白のコントラストが鮮やかなファブリックシート、ドアトリムやフロアマットは明るい黄土色を採用したLパッケージが登場。
■1980年/ランクル60が登場。40系と並行して販売されることになった。エンジン、トランスミッション、サスペンション、ブレーキなどの主要部品が60系と共通化。
ロングホイールベースのディーゼルエンジンをH型から直列6気筒3980ccの2H型と4気筒3431ccの3B型へ変更。60系と共通化され、それぞれHJ47、BJ45となる。4気筒エンジンのロングへの搭載は初。
セミロングにハードトップの設定が追加(型式はBJ44V)。ステップの幅が広がり、乗降性が向上。オドメーターも5ケタから6ケタに変更される(10万km台も表示可能に)。
■1981年/インパネのデザインを変更し、センタークラスタータイプに。日本国内でもラジアルタイヤが選べるようになり、リアフェンダーにエクステンションが追加され全幅が増す。パワステとタコメーター、専用の室内トリムを装備した最上級グレードのLXが追加。
■1982年/日本国内は排ガス対策のため、2B型から3431ccの3B型へ変更。ショートとミドルの日本国外向けも含めた3B型エンジン搭載車の型式も変更された、型式はショートの幌BJ42、ショートのハードトップBJ42V、ミドルの幌BJ46、ミドルのハードトップBJ46V。また5速MTが追加され、LXパッケージに標準搭載。
■1984年11月/70系へフルモデルチェンジ、国内での生産を終了
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みんなのコメント
あの時の物を大事にしておけば今頃は・・・
では、今の物を大事にしていれば いつかは・・・
『今』が大切なんだろうな。