欧州市場でのデリバリーが2019年後半と、1年以上先の市販モデルにもかかわらず、プジョーの「e-レジェンド コンセプト」と並んで、来場者を強く魅了したコンセプトEVが「DS 3 クロスバック E-Tense」だった。
多くの注目を集めた理由として、ブランド初の電動SUVであることもさることながら、BセグメントのプレミアムSUVとしてDS 3 クロスバック自体に大いなる魅力があったからだろう。
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そんなDS 3 クロスバックは、EVモデルこそ販売は当面先であるが、ガソリンおよびディーゼルモデルは、本国で年内に先行発売される予定という。ライバルはアウディQ2やミニ クロスオーバーだ。
多数ある魅力のうち、ひとつはボディサイズだ。全長4118mm×全幅1791mm×全高1534mmのコンパクトなボディは、日本の狭い車庫にもすんなり収まるだろう。それでいて、内外装の高いクオリティはハイエンドのDS 7 クロスバックと変わらないのだ。
もうひとつの魅力は個性的なデザインだ。エクステリはガラスエリアからうえのボリュームを絞りつつ、外径690mmの大きなタイヤと18インチホイールを履いた、踏ん張り感の強いプロポーションが特徴。
現行DS 3の流れを汲むデザインとした特徴的なリアドアには、フランス・フォーカル社のオーディオシステム(12スピーカー)のツィーターが仕込まれている。
このリアドアは意外なことに、ウィンドウが開閉する。一見すると、固定されているようにも見えるが、ウィンドウ全体の約8割を下げることが出来るのだ。しかも、クルマのプロポーションを損なわないよう、ウィンドウスクレーパーのゴムは目で見えない位置としたように、細部へのこだわりは強い。
また、特徴的なリアドアを含む、4枚すべてのドアにあるドアハンドルは、テスラやジャガーの一部モデルが採用する「ポップアップ式」だ。実際にキーをもって半径1.5m以内に近づくと、“シュッ”とドアハンドルが持ち上がる。
ほかにも、Bセグメントのクルマとしては珍しいのが、走行状況に応じて照射範囲を自動制御するマトリックスLEDヘッドランプ。
インテリアも個性的で魅力だ。しかも、単なる高級車ではなく、「フランスの小さな高級車」たらしめる独自性を出すため、「パリっぽさ」全開の内装である。用意するグレードは、DS 7 クロスバックにも設定する「オペラ」、「リヴォリ」、「バスティーユ」にくわえ、DS 3 クロスバックには新たに「モンマルトル」を追加する。
インパネの操作パネルは、ダイヤモンドを思わせる菱形がモチーフのデザイン。フルデジタルのメーターや10.3インチのモニター、スマートフォンのコードレス充電が可能なトレイなどを設置し快適性と先進性を高める。
安全運転支援機能については兄貴分のDS 7 クロスバックと大きく変わらない。ACC(アダプティブクルーズコントロール)やレーンキープアシスト、アクティブブレーキアシストや駐車アシストを備え、自動運転のレベル2(部分自動運転)を実現する。
DS 3 クロスバックは、PSAグループが新たにB・Cセグメント用プラットフォームとして開発した「CMP(コンパクト・モジュラー・プラットフォーム)」を初採用した。CMPは旧いプラットフォームより軽量で、かつ高剛性なのが特徴だ。
また、CMP採用によって電動化を実現。DS 3 クロスバックには155ps+8速ATをはじめとするガソリンエンジン3種類、ディーゼルエンジン2種類を用意する一方、136ps/260Nmの電気モーター仕様も設定する。しかも、ガソリン/ディーゼル/EVはパリ郊外にあるポワシー工場の、同じラインですべて生産できるという。要はエンジンかEVか、需要次第で臨機応変に生産キャパシティのなかで生産台数の割合を変えられるという、EVへの移行期を織り込んだ設計なのだ。
ちなみにEVのDS 3 クロスバック E-Tenseは、 50kWh容量のリチウムイオンバッテリーや制御モジュールを、前後シート下とセンタートンネル内にHの字の型に収め、電気モーターを介して前輪を駆動する。同車の車両重量はまだ公表されていないが、NEDCサイクル(欧州で用いられる燃費測定方法)で450km、WLTPモードで320kmの航続距離をうたう。充電については最大100kWまで対応し、30分でバッテリー容量の80%を回復するという。
「メルセデス・ベンツ EQ C」や「アウディ e-tron」とサイズは異なるものの、同じく欧州製のハイエンドEVとして、今年のパリサロンのスターといえる1台だった。
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