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スーパーGT2021富士公式テスト 重量増に挑むSUBARU BRZ GT300

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スーパーGT2021富士公式テスト 重量増に挑むSUBARU BRZ GT300

スーパーGT2021の開幕を2週間後に控え、SUBARU BRZ GT300は富士スピードウエイで行なわれた公式テストに参加した。岡山に続き観客の入場が許可され、今シーズンのスーパーGT開幕がますます楽しみになっている。そして小澤総監督からは「本番に向けて準備は着々と進んでいるという状況です」とコメントがあり、テストでのデータ取りも順調のようだった。

今回のテストのメインはやはりタイヤだ。「新しい構造のタイヤも持ち込んでいますし、同じタイヤでも岡山と富士ではタイヤにかかる荷重が違うので、例えば100Rのような高速・高荷重を走れば違う結果が出てくると思います。そのあたりのデータ取りができればと考えています」と小澤総監督。

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持ち込んだタイヤは全部で10セット。これを2日間でテストする予定だが、日曜が大雨の予報のため初日に可能な限りのテストを組んでいた。さらに「空力のテストも予定しています。メインのウイングでの調整ではなく、こまかいパーツでどこまで調整できるのか?CFD解析データと実走行データのすり合わせもやろうと思ってます」

【テスト初日】
ドライバーは山内英輝が乗り込み、最初のセッションは2時間30分行なわれた。岡山ではBoP50kgにプラス35kgの特別ハンデを積まされ、マシンのバランスが悪い状況でのテストになっていた。そのため、セットアップを煮詰める必要があり、今回もBoPの50kg+αを搭載してテストを開始することになった。

チームにとっては軽量な状態がベストではあるものの、開幕してポイントを稼げばサクセスウエイト(=ウエイトハンディ)は増えるわけで、重量増を見据えてのテストはある意味必然というわけだ。そのため岡山のテスト後、重量増となった状態でのジオメトリーを見直し、今回の富士のテストでは新ジオメトリーで対応した。

BRZ GT300のシャシーはリンク構造で、Wウイッシュボーンを基本とし、リンクを介してダンパー、スプリングに入力する構造。「このメリットはスペーサーだけでジオメトリーが変更でき、かつトーイン変化を起こさずに、例えばキャンバーだけを変えることができるといったメリットがあります。ロールセンターもウイッシュボーンのアームの付け根高さで調整でき、ミリ単位で調整できます。市販車だと1cmロールセンターが変わってもわからないですけど、レースカーだと数ミリの違いで変わるほどです」と小澤総監督。

そうしたことを踏まえ公式テストの前半は、ジオメトリーの確認を中心にタイヤテストを行なっている。そしてマシンのセットがほぼ決まった状態からタイヤテストへと移行していく。この時、手元の計測では、上位は1分36秒5前後で、BRZ GT300は37秒5前後と1秒ほど遅い。

【ニュータイヤの感触】
山内は「テスト全体では、ニュータイヤのいいところはあるけど、まだ詰めきれてない印象ですね。100Rは高荷重だから、そこはいい印象ですけどセクター3での回頭性が落ちたり、アンダーが強くなったりで、メリットとデメリットがあって、バッチリは決まらないです」という。

確かにタイムもトップタイムより1秒ほど遅く、順位は17位~12位付近。ウエイトを搭載していることを踏まえると理解できるが、ドライバーとしてはフィーリングがもうひとつ決まらないという部分に不満が残っている様子だった。

午後のセッションでは井口卓人に交代し、同様にタイヤテストに取り組む。昨年好成績を残しているタイプのタイヤを基準タイヤとして、そのタイヤとの比較で新構造のタイヤテストを繰り返していた。

マシンから降りた井口からも同様に「いいところと悪いところがあって、それをタイヤで合わせていくのか、マシンで合わせていくのかいずれにしてもしっくりこないですね。EPSの手応えも調整しながらテストしましたけど、全然グリップを感じないのにタイムはそこそこというタイヤもあれば、回頭性が良くてフィーリングがすごくいいのにタイムが出ないというタイヤもあって、よくわからないです」と複雑な心境を語ってくれた。

小澤総監督は「路面温度も低いですし、重たいときのバランスのテストも兼ねてます。0.7秒落ち、17番手はある意味想定内です。ドライバーからはいいフィーリングのときのデータも取れたので、あとは課題としてロングの性能ということだと思います」

この時、ライバルは36秒フラット付近までタイプアップしているが、BRZ GT300は変わらず37秒台中盤がベストタイムだった。

つまり、マシンの重量増に対するセットアップの変更とタイヤの組み合わせを同時テストしており、それがドライバーにとっては、さまざまなフィーリングとして伝わっているということだろう。だが、チームとしては想定内のテストができているということだった。

またダンロップの担当者からは「剛性を上げたタイプはフィーリングがいいことがわかりましたが、なぜか、今回走り始めからタイヤ温度が高い状態が続いて、ロングで持たない結果がでました。マシン重量はタイヤには厳しいです」ともコメントがあり、重量増は耐久性に課題が出ることもわかった。

【2日目】
予報は雨で走行開始時には小雨が降っている。「エアロの比較テストをします。CFD解析のデータと実走行データとを突き合わせて、どれがどの程度効いているのかの確認ですね。それとタイヤテストです」と小澤総監督。

ドライバーは山内がレインタイヤでスタートした。ところがドライの時と全く異なるフィーリングということで、ダンパーやスプリングの交換作業が必要になった。マシンはピッチングは抑えてロールはさせていきたい方向だが、山内は全体が硬いと表現していた。

そうこうしているうちに路面がドライへと変わり、スリックに戻し再びタイヤテストになった。テスト後、小澤総監督は「ドライとレインでは大きなセットアップの違いが必要なことがわかりました」とコメントしているように、レインとドライのセットでそれぞれ合わせ込み作業が行なわれているようだった。

この日は各チームともロングランテストなのか、前日よりタイムは落ちトップタイムが38秒フラットで、山内のベストは38秒6。山内はロングのテストをしていないにも関わらずだ。ちなみに順位は4番手なのだが、各チームのテスト状況が不明なため順位はあまり意味を持たない。

【マッチングが決まらない】
午後の最終セッションは井口がドライブしロングのテスト予定だったが、同様にタイヤの特徴とマシンの合わせ込みに多くの時間を費やすことになった。

テスト後井口は「曇り、晴れの路温の違いが激しくて、涼しいときはバランスがいいけど、温度が上がったときとの明確な違いが感じ取れていないです。どこかセットアップで外したところで走っている気もしますけど、タイムはそれなりに出ます。だから、まだまだテストが足りないって感じました」とコメントしている。

また山内は「去年に比べてマシンの感度が高くなったのだと思います。だから、その感度の高さが理解できれば武器になりますけど、まだ掴みきれていないので迷いがでているという状況です」と分析していた。

一方、小澤総監督は「やりたかったテストはほぼでき、岡山へ向けての方向はほぼ決まりました。富士は5月ですし距離も長いので、決めることはできませんけど、タイヤ剛性の違いなどいい方向の結果はありました。最後はセットチェンジ(ジオメトリー変更)にトライして、非常にいい結果が得られました。タイムもまとまっていましたしね。あとは岡山でもう一歩踏み込んだ対策を投入していくかを検討します。それと最後のセットチェンジでわかったことですが、タイヤの使い方を変えていく方向も可能性がでてきました。そしてドライとレインの落差が大きいこともわかりました」

小澤総監督が言う最後のセットチェンジでは、井口は1分37秒3までタイムを縮めていて、全体6番手のタイムになっている。順位というより、タイムが上がったことの結果を評価してのコメントだ。

2日間に渡るテストは、視界良好とまではいかないまでも、課題の整理と収穫はあった様子。ただ、重量増はタイヤにかかる負荷が増えるだけで、タイヤの特性自体も壊してしまう可能性が見えてきた。さらにもともとが2.0Lという小排気量であるため、また今季は燃料タンクが120Lに増えているため、それもメリットとデメリットがあり、いずれにせよ重量増のダメージは大きいことも見えたテストだった。

開幕戦は例年ウエイトは搭載しない素の状態でレースをするが、今季はレースタイム全体を遅くする必要をGTAが検討している。理由はエスケープが狭いためGT500のタイムをリストリクターで制限するというものだ。それに伴いGT300もラップタイムを落とす必要があり、そのための施策がBoPによる重量増であり、BoP+50kg、特別ハンデ+35kgになるのか?が気になる。

重量の影響を受けやすいBRZ GT300は開幕戦をどのように戦っていくのか。そのためのテストデータを揃え開幕戦に挑む。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>

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