BMW 320d xDrive M Sport
BMW 320d xDrive M スポーツ
新型3シリーズのディーゼルは紛れもなくBMW! 渡辺慎太郎が認めたその力量【試乗記】
隙のないラインナップ
今年1月に日本デビューを果たした時点で、BMWの新型3シリーズ・セダンは320i SE/320i スタンダード/320i Mスポーツ/330i Mスポーツの4モデルのみだった。その後、ディーゼルやPHEVなどが追加され、いまでは320d xDrive/320d xDrive Mスポーツ/330e Mスポーツ/M340i xDriveを含む計8モデルとなり、価格は461万円(320i SE)から980万円(M340i xDrive)と幅広い設定になっている。
また、ワゴンボディの“ツーリング”も発表され、PHEVを除くセダンに倣う7モデルが展開されている。価格はセダンの+20~30万円。3シリーズの価格のイメージは乗り出しで500万円くらいなので、「980万円」なんて数字が並ぶと思わず二度見してしまう。ツーリングのM340i xDriveに至っては1000万円を超えているので、3シリーズもいつの間にか立派な高級車になったのだなあと感慨深い。1000万円を超えていいのはM3(かM4)だけだと信じていた自分は、どうやら時代に取り残されているらしい。
派生種拡大策に見るドイツ的ブランド戦略
3シリーズが属するDセグメント、5シリーズのEセグメントでは、中核をなすセダンをまず発表して、随時パワートレインやボディタイプを追加していく手法がドイツ車では一般的である。ずっと昔からこのやり方を踏襲しているから、3シリーズがフルモデルチェンジすれば、じきにワゴン、クーペ、コンバーチブル、そしてM3やM4がやってくるであろうということが顧客には容易に想像できる。
昨今のSUVブームの影に埋もれてしまい、ワゴンは最盛期ほどの台数は出ないものの「それでもツーリングをお待ちのお客様が必ずいらっしゃるので、我々はその期待に応えなくてはなりません」と、やめたくてもやめられない複雑な心境をBMWの関係者は漏らしていた。
この手法のメリットは色々考えられるけれど、定期的にニューモデルを追加することで、その度に市場の目を3シリーズに向けることができるというのもそのひとつだろう。今回、こうしてGENROQ Webでディーゼルエンジン仕様を取り上げるように、継続的に3シリーズの存在を世に周知することができるというわけだ。
3シリーズをひとつのブランドとして扱うブランド戦略のようにも見える。例えばレクサスがISやGSを登場させてもバリエーションの拡大を試みないように、日本の自動車メーカーがどうしてこの方法を真似しないのかよく分からない。
「先進安全装備はほぼ標準」という見識
今回の試乗車は320d xDrive Mスポーツである。車両本体価格は641万円。これに22万8000円の“イノベーション・パッケージ”(レーザーライト/ヘッドアップ・ディスプレイ/ジェスチャーコントロール)、11万7000円の“コンフォート・パッケージ”(オートマチック・トランクリッド・オペレーション/トランク内12V電源ソケット/荷物用フックなど)、20万5000円の“ハイライン・パッケージ”(ランバーサポート/ウッド・インテリアトリム)、19万1000円の“サウンド・パッケージ”(ハーマンカードン社製サラウンドシステム)、4万8000円の“アクティブ・プロテクション”(急ブレーキや衝突の危険をセンサーが検知するとシートベルトの締め付け/シートポジションの適正化/サイドウインドウやサンルーフの自動クローズなどを行う)、6万2000円の“パーキング・アシスト・プラス”(縦列駐車をサポートする機能)などを装備して735万3000円の仕様となる。
3シリーズは、ハンズオフが可能な“ドライビング・アシスト・プロフェッショナル”など先進の安全装備がSE以外の全車に標準で、CクラスやA4ではオプション扱いのメルセデスやアウディと比べるとこの点に関してBMWは極めて良心的と言える。
タイヤとサスの微妙な関係
これまでに自分が試乗した新型3シリーズは330i Mスポーツと330e Mスポーツのみで、いずれもMスポーツサスペンションや19インチタイヤ&ホイールやMスポーツ・ディファレンシャルなどを装着した、いわゆるよりスポーティな乗り味に仕立てるためのオプションが惜しげもなく投入されている仕様だった。
この試乗車もMスポーツではあるものの、タイヤ&ホイールが18インチであることとMスポーツ・ディファレンシャルや電子制御式ダンパーが装着されていない点などが、これまでとは異なるポイントとなる。
ランフラットタイヤの標準装着に見切りをつけたメルセデスCクラスに対して、3シリーズは依然としてランフラットタイヤを採用し続けている。乗り心地よりもスポーティな走りを好むオーナーなら、ランフラットタイヤ特有のたてばね剛性の高い乗り味も寛容に受け入れてくれるだろうということかもしれない。
自分はどちらかと言えばそれが気になるほうで、19インチを履いた仕様では乗り心地がもう少しマイルドだったらいいのにと思っていた。 だから18インチ仕様には少なからず期待していたのだけれど、やはり18インチのほうが乗り心地はよかった。
ばね上の細かい動きが完全に収束しきれないのは電制ダンパーを装着していないことによるものだと推測できるが、全体的な乗り心地は悪くない。ただし、Mスポーツサスペンションとの相性という観点では19インチのほうがしっくりくるように思う。タイヤとサスペンションの組み合わせは本当に難しい。
6気筒神話を覆す4気筒ツインターボ
2リッターの直列4気筒ディーゼルエンジンは、過給機のシステムが刷新されている。これまではシングルターボだったものがツインターボとなり、低圧用ターボと高圧用ターボを効率的に使うことにより、エンジン回転数の全域で十分なトルクの発生と、レスポンスの向上が図られている。
400Nmの最大トルクの発生回転数は1750-2500rpmだが、どの回転域でスロットルペダルを踏み込んでも力強い加速が得られるだけでなく、過給機によるサポートをほとんど感じさせないスムーズな吹け上がりが気持ちいい。
1680kgの車体を動かすには余りあるパワーであり、その瞬発力と加速力には驚かされた。本国で6気筒ディーゼルターボを搭載したツーリングに乗って「やっぱり6気筒はいいなあ」と知ったような口を叩いてしまったことがちょっと恥ずかしい。これなら4気筒でもまったく不満はない。
ディーゼルの捲土重来
ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの違いは燃料以外にも、空気と燃料の混合気をシリンダー内へ送り込むガソリンに対して、空気を送り込んで圧縮した後に燃料を噴射するディーゼル、点火プラグによる火花着火のガソリンに対して自己着火のディーゼルなどといった違いが挙げられる。
加えて、ディーゼルのほうが一般的に燃費がいいとされる理由が空燃比の違いである。空燃比とはシリンダー内に供給された空気の重さをシリンダー内に供給された燃料の重さで割って求めるもの。つまりこの数値が大きいほど使用燃料が少なく燃費がいいことになる。 ガソリンの空燃比はおよそ13-18と言われているが、ディーゼルは15-160。15は高負荷時で160は低負荷時である。
発進時や加速時などの高負荷時のディーゼルの空燃比はガソリンと大差ないが、一定速度による巡航時などの低負荷時にはガソリンのわずか12%ほどの燃料で走っている計算になる。 空気をギリギリまで圧縮して少ない燃料で大きな爆発力を得ることで効率的なパワーを得る。
これがディーゼルエンジンの特徴だけれど、大きな爆発力と熱に耐えうる頑強で耐久性のあるシリンダーブロックが必要だし(=重量増)、窒素酸化物(NOx)の処理もしなくてはならない(320dはアドブルーを使用)。
ディーゼルにまつわるさまざまな問題は、技術革新によって黒煙を吐き出していた頃に比べれば飛躍的に改善されていまに至っている。ドライバビリティやパワーはガソリン並みで排出ガスもきれいになり、何よりランニングコストに長けているため、日本でもディーゼルがもてはやされるようになった。確かに320dのディーゼルユニットなら、日常の使い勝手もいいだろう。
4WDでも濃密な“BMW(FR)らしさ”
これまでMスポーツ・ディファレンシャル装着車しか試乗してこなかったが、それがなくてもハンドリングは予想通り悪くない。シャシーの素性がいいことは分かっていたし、FRらしいコーナリングが楽しめる。
ただし、このクルマはxDriveであり、日本で3シリーズのディーゼルを買おうとしたら4WDしか選べない。 BMWのFRを楽しみにしている方にとっては残念かもしれないが、xDriveは前後の駆動力配分を随時可変するシステムで、通常は前後がほぼ0:100の駆動力配分となる。必要な時だけフロントにトラクションをかけるので、4輪駆動であることを常に意識させられることはない。
そもそもフルタイム4WDにしなかったのは、燃費の向上以外にもBMWがオーナーの趣向や要望をきちんと理解していたからという理由もある。
ディーゼルエンジンとはいえレスポンスよく軽々と回り、4WDでもFRのような走りが堪能できる320d xDriveは、BMW好きの期待を裏切らない乗り味になっている。
REPORT/渡辺慎太郎(Shintaro WATANABE)
PHOTO/北畠主税(Chikara KITABATAKE)
【SPECIFICATIONS】
BMW 320d xDrive M スポーツ
ボディサイズ:全長4715 全幅1825 全高1440mm
ホイールベース:2850mm
車両重量:1680kg
エンジン:直列4気筒DOHCツインターボ
総排気量:1995cc
ボア×ストローク:84.0×90.0mm
最高出力:140kW(190ps)/4000rpm
最大トルク:400Nm/1750?2500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:4WD
タイヤサイズ:前225/45R18 後255/40R18
車両本体価格(税込):641万円(テスト車:735万3000円)
【問い合わせ】
BMW カスタマー・インタラクション・センター
TEL 0120-269-437
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