フォード・パフォーマンスのファクトリードライバーで、デイトナ24時間の総合優勝とル・マン24時間でのクラス優勝経験を持つジョーイ・ハンドが『Sportscar365』にてコラムを執筆。7月上旬にスポット参戦したNASCARカップシリーズのシカゴ戦と、65号車フォード・マスタングGT3のドライバーとしてレギュラー参戦するIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権におけるシリーズ唯一のカナダ・ラウンド、モスポート戦を振り返った。
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初代大会覇者SVGがまさかの脱落第1号、ボウマンが雨絡みのシカゴで80戦ぶり勝利/NASCAR第20戦
■マスタングNASCAR仕様とGT3カーの違い
シカゴのストリートコースでNASCARカップレースを走るのは簡単なことではなかったが、決して忘れられない経験になった。フィールドを走り抜け、ステージを制し、一時はリードを守り、最終的に4位でフィニッシュできたのは最高だった。それは僕にとっては大きな出来事だった。
カップシリーズの『フォード・マスタング・“ダークホース”』は、我々の『フォード・マスタングGT3』とはかなり違う。(NASCARのクルマは)パワーがあり、ダウンフォースが少なく、(電子制御による)アシストも少ない。シーケンシャルギアボックス、つまりパドルシフトの代わりにレバーを使うドライビングスタイルもGT3カーのドライブとはまったく異なる。
僕はこれまで、F1以外のあらゆるタイプのクルマを運転してきたため、それを理解し素早く適応することができたと自負している。今回はすべてがうまくいっていた。
あのようなパフォーマンスはドライバーとしても、チームとしても気分が良くなるものだ。フォード・パフォーマンスとマルチマチック・モータースポーツが、NASCARとRFKレーシングとのベンチャー・プログラムで僕をサポートしてくれたことは大きな意味があった。それは多くのことが物語っている。
■モスポートで「JOEY HAND」の名前が「BIG DOG」に
レース終盤、シカゴのトラックの路面が乾いてきたとき、クルーチーフが無線で「ウエットタイヤで走り切るのか、それともピットインしてドライタイヤに履き替えるのか」と聞いてきた。もしピットインしていたら25番手くらいまで後退していただろう。この時点では僕はレースをリードしていたから、「いいや、ビッグドッグに喰らわせよう」と言ったんだ。
その音声がRFKレーシングとNASCARからソーシャルメディアに投稿されたのを見て驚いたよ。
そこからの展開、モスポート(カナディアン・タイヤ・モータースポーツ・パーク)で見たものはシュールだった。フォードはマスタングGT3に記された僕の名前を“ビッグドッグ”に変えていたんだ。
また、パドックでは多くの人々からそのように呼ばれたし、「ヘイ、ビッグドッグ、シカゴはいいレースだった!」と叫んでいる人もたくさんいて驚いたものだ。NASCARからIMSAへのつながりはクールで、フォードはそれをとても楽しんでいた。
クルーたちは、僕の家族のようにハラハラしながら(NASCARを)見ていたと言っていた。圧倒的なサポートは僕にとって大きな意味がある。興奮を感じることができ、それがモスポートに持ち込む勢いになったんだ。
■競争力を増していく新型マスタングGT3
IMSAでは予選で最大限のパフォーマンスを発揮するために、新しいことを試し続けている。そして実際には、チャート上で示されたものよりもはるかに良いクルマを手にすることができた。ただ、最終コーナーでライバルが後退したために、2回の好ラップを阻まれてしまった。
僕の良いラップは両方とも邪魔されてしまったが、それでもレースに向けてマシンの強さには自信を持っていた。だから、僕はスタート直後から前に行く気でいた。もし誰かが僕に対してディフェンスしようとしたら、何らかの方法で切り抜けるつもりだと伝えていたんだ。
レース序盤はすぐに多くのマシンをパスして集団の中に入っていった。ただ、イエロー(フルコース・コーション)が出る前にピットインするタイミングを逃してしまった。その後はまたライバルたちを追い抜かなければならなかったが、それはうまくいったと思う。
終わってみれば、僕たちがより「レーシー」だったということだ。ファステストラップは出せなかったが、かなりの数のマシンをパスすることができたので、今後に期待が持てる。
モスポートはコミットメントの高いサーキットだ。4速か5速で丘を越えてターン1、2、4、8へと入っていく。本当にハッスルできるクルマが必要で、このクルマは今年乗ったなかでもっとも快適なクルマのひとつだった。このデータがあれば、来年も本当に戦えると思う。
メカニックの皆もタイヤ交換で14.8秒という今年最速のピット作業をやってのけた。これは本当に早いピットストップだ。これらのデータは長期的に僕たちの役に立つだろう。
■世界に広がるマスタングの足跡
ディルク(・ミューラー)と僕は、ロード・アメリカのような、何度も一緒に優勝しているサーキットに合ったマシンを目指して作業を続けている。僕らはそこを世界で一番好きなレーストラックと呼んでいる。長いストレートとドライバビリティが要求されるこのトラックは、レースで最高のラップを楽しめる場所なんだ。
いまこの瞬間は、フォード・ドライバーになるには最高の時代だ。マスタングGT4が世界的に成功し、キャメロン・ウォーターズがRSCレプコ・オーストラリア・スーパーカーで成功を収めるのを見ながら、ふたつの異なるシリーズでマスタングをドライブするのは感動的ですらある。フォード・パフォーマンスの一員であることを誇りに感じるよ。
そんな大きな会社から、僕たちはトップダウンで多くのサポートを受けている。我々は皆レースに情熱を持っている。フォード創業家、ジム・ファーリー(フォード社CEO)、経営陣、そしてフォードで働く人々でさえも。
フォード・マスタングの足跡は世界中に広がっており、どこに行っても誰かがこのブランドと何らかの密接な関係を持っている。
年式やモデルは関係なく、僕たちはフォードとマスタングの多くのファンに、世界中で僕たちを応援する機会を与えているんだ。
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