モータースポーツの「歴史」に焦点を当てる老舗レース雑誌『Racing on』と、モータースポーツの「今」を切り取るオートスポーツwebがコラボしてお届けするweb版『Racing on』では、記憶に残る数々の名レーシングカー、ドライバーなどを紹介していきます。今回のテーマは、全日本GT選手権(JGTC)を戦ったトヨタ・セリカ(ST202)です。
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『ニッサンR89C』最強のCカー誕生の礎となった専用設計モデル【忘れがたき銘車たち】
シリーズ発足間もなかった、1990年代後半の全日本GT選手権(JGTC/現スーパーGT)GT300クラス。この頃のJGTC GT300クラスは、現在に引けを取らないほど車種のバリエーションが豊富に揃い、オリジナリティに溢れるマシンが競い合っていた。
そんなJGTC GT300クラスに、現在『TGR TEAM WedsSport BANDOH』としてGT500クラスで『WedsSport ADVAN GR Supra』を走らせるレーシングプロジェクトバンドウが初めて参戦したのは、1997年のことだった。まだチーム代表が現・GTアソシエイション代表の坂東正明氏だった頃の時代である。
バンドウは、1997年にGT初参戦ながらニッサン・シルビア(S14型)で見事にシリーズチャンピオンを獲得する。その翌年1998年は、ディフェンディングチャンピオンとして、新たなマシンでGT300クラスへと挑んだ。そのニューマシンがトヨタ・セリカ(ST202)である(注:ST202型のセリカでGT300に参戦したチームは、バンドウ以外にもいるのだが、ここではバンドウのウェッズスポーツセリカを中心に話を進めさせていただく)。
セリカをベース車に選択したのは、トヨタ車でGTをやりたかったこと、当時並行して参戦していた全日本ツーリングカー選手権(JTCC)のエクシヴに使われていたエンジン、トランスミッションなどのパーツ、さらにノウハウを活用できるという理由があった。
その言葉の通り、JTCCの技術を活用してマシンは製作されたが、サスペンションはエンジンが運転席側に寄っていて、ライトヘビーな傾向が強いセリカに合わせて、エクシヴの流用ながらもその後、独自で開発が進められたものだった。
ボディカウルは、ライバル車の良いポイントを取り入れた坂東正明氏オリジナルのデザイン。FFのST202ベースでありながら、フロントマスクだけは4WDのセリカGT-FOUR(ST205)のものを使用していた。
そんなセリカ(ST202)は、1997年のチャンピオンドライバーである織戸学と、前年までにBPR GTやFIA GT選手権に参戦経験のあったマッシミリアーノ・アンジェレッリのふたりが駆り、1998年のシリーズ第4戦富士スピードウェイでデビューする。
このレースでは、ホイールが間に合わずエクシヴ用のホイールを流用せざるを得なかったため、本来の性能を発揮できなかったことなどもあり、7位フィニッシュとなった。
しかし、第5戦もてぎではホイールがデビュー戦のJTCC用8.5Jから9J幅のホイールとなり、前後230幅のタイヤを履けるようになって本領を発揮する。
このレースで、2位表彰台を獲得すると、第6戦MINEでも連続で2位表彰台に登壇。さらに最終戦SUGOにおいても3位に入り、全4戦の参戦ながら3戦でポディウムフィニッシュ、シリーズ2位というリザルトを残した(最終戦はアンジェレッリの代役として山本勝巳が搭乗したため、2位は織戸のみ)。
参戦2年目となる1999年は、さらなる飛躍を見せる。ウエットレースとなった開幕戦の鈴鹿で、繰り上がりながら初優勝を記録すると、シーズンを通してチャンピオン争いを展開。最終的にはわずか3点差でタイトルを逃したが、ランキング3位でシーズンを終えた。
その後、バンドウのセリカは2000年シーズンまで参戦。同年も1勝をマークするなど高い戦闘力をを誇ったまま、ニューマシン、MR-Sへと主力機の座を譲ることとなったのだった。
実はセリカは型を変えて、MR-Sの後にもう一度GTへと登場するのだが、それはまた別の機会に……。
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