現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > 【最新EV対決】後編 似て非なる3台 ニーズ次第でどれも勝者の可能性あり 実用性ならID.4

ここから本文です

【最新EV対決】後編 似て非なる3台 ニーズ次第でどれも勝者の可能性あり 実用性ならID.4

掲載 更新 12
【最新EV対決】後編 似て非なる3台 ニーズ次第でどれも勝者の可能性あり 実用性ならID.4

高級感に勝るポールスター

text:Simon Davis(サイモン・デイヴィス)

【画像】写真で見る最新EV 全23枚

photo:Luc Lacey(リュク・レイシー)

充電中の3台を観察していて、おもしろいことに気づいた。まず、これは予想できたことだが、ポールスターは高級感という点で、ほかの2台と比べものにならないということだ。

テスト車は4000ポンド(約56万円)のオプションである淡色のナッパレザーと端材を再構築したウッドパネルを装着してはいるものの、標準仕様でもラウンジのようなクールさは変わらない。

収納スペースも十分に備えている。ただし、標準装備されるパノラミックグラスルーフは鉱石の頭上スペースを侵害している。また、内燃エンジン主体のボルボ製プラットフォームがベースなので、センタートンネルが後席中央のスペースを、小さな子どもでないと窮屈なくらいに狭めている。

対照的に、マッハEのキャビンは、いかにもフォードらしい雰囲気だ。いってしまえば、マテリアルの上質さやデザインの大胆さと魅力で、ほかに勝るところはない。テスラのような大画面のタッチ式センターディスプレイを装備して、好ましいハイテク感を加えてさえ、どこかパッとしないのだ。

ただし、前席はポールスターほど安楽ではないものの、後席に座っても頭上にルーフの圧迫感を覚えることはない。明らかに広さでは上回っている。

実用性が光るID.4

だが、高級感と広さのバランスが最も優れているのはID.4だ。

硬い手触りのプラスティックが多用されているので、ポールスターほどの豪華さは感じられない。しかし、フォルクスワーゲンがID.4のキャビンをデザイン面で魅力的に仕上げようとした努力は、フォードがマッハEに注ぎ込んだそれより上だと思うはずだ。

ファーストエディションは、グレーとブラウンのシートや内装トリムを標準装備。派手ではないシャレた見栄えで、鮮明なホワイトのステアリングホイールなどとのコントラストもいい感じ。ただし、汚れがつかないよう常に気をつけたくなりそうではあるが。

もっともキャビンが広く感じさせるのも、これまたフォルクスワーゲンだ。後席に座るとマッハEと大差ないが、荷室に目を移すと、ID.4の優位性が際立つ。

ウインドウの高さまでで543Lという容量は、ポールスターの446LとマッハEの402Lのいずれをも上回る。ファミリーカーとしての使い勝手では、フォルクスワーゲンがトップだ。

フォルクスワーゲンらしい完成度

そうこうしているうちに、50kW充電につながれた3台のバッテリーが90%ほどチャージされた。プラグを抜いて、走りはじめよう。ロンドンからここまではマッハEに乗ってきたので、ID.4に乗り換えることにした。

高速道路では、走り出してすぐ、リラックスしてスムースに動くクルマだと感じられる。マッハEがクルーズ時でも少々やぼったくノイジーだったのに対し、ID.4はすべてが穏やかだ。

パッシブダンパーと20インチという大径ホイールでありながら、すばらしく落ち着いていてしなやか。硬いがサポートに優れるシートは、ややシートバックが足りないフォード のそれよりはるかにいい出来だ。ロングドライブする際にどちらかを選べるなら、ID.4のキーに手を伸ばすだろう。

フリットウィックでM1を降り、ミルブルックを横切り、曲がりくねった細い道も通りながらベッドフォードへたどり着く道のりでも、ID.4が馬脚をあらわすようなことはなかった。声高に走りの楽しさを訴えるようなところは見出せなかったが、ここまでのルートでは十分に速く、ステアリングは楽で安心感があり、フォルクスワーゲン全車に通じるものが感じられる。

まじめで、やるべきことをやるといったキャラクターの運動性なのはたしかだが、はじめて乗って走らせてみると、きわめてたやすく馴染める。個人的にはかなり好ましい。

やはり楽しいマスタング

次に、マッハEへ乗り換えた。高速道路を離れてみると、このフォードにはフォルクスワーゲンよりやや多くギミックを用いているのが明らかなのに、不思議なことにすんなり操作することができない。慣れが必要なクルマといった感じだ。

まず、ブレーキの効きがかなり唐突だ。次に、ステアリングはID.4に比べてシャープでクイックなのに、手応えは軽い。前輪の状態を手元に伝えてくれないのだが、慣れてしまえば今回の顔ぶれの中でもじつに楽しく速いEVとなる。

重量を完全に隠し切れてはいないが、走りはかなり熱い。グリップに優れ、しかもトラクションコントロールを切れば、コーナー出口でわずかながらもテールを振ってくれる。

フロントにV8を積んだマスタングに比べれば、その凶暴さは足元にも及ばないが、そこそこヤンチャなところを見せてくれる。これも悪くない。

価格差が気になるポールスター

ポールスターは、その2台の中間といったところだ。直線加速では2台のライバルを寄せつけず、ルーフはおよそ14cmほど低いことを考えると、これはなかなか興味深い。

マッハEのように、ステアリングは軽めだ。しかし、レスポンスのスポーティさはそれほどでもないので、どんな風に走れるのか攻めてみたい気にはならない。

といっても勘違いしないでほしい。ポールスター2はハンドリングに優れるクルマだ。前後にモーターを積んでいるおかげで、ボディコントロールもトラクションも上々。だが、走らせ甲斐があるかといえば、そうでもないのだ。

走行風景の撮影を終えて、ロンドンへ戻る前に、ふたたび充電するべくミルトン・ケインズへ引き返す。道すがら、ポールスターを走らせながら、あれこれ思いを巡らせた。これはよくできたクルマだ。速く、コンフォートで、造りはよく、仕上げも見目麗しい。

とはいえ、今回テストした仕様のマッハEやID.4と比べたら、選びたいEVはこれではない。おそらく、ライバルたちのよりハイパワーで航続距離の長いバージョンが比較対象なら話は違ってくるのだろうが、今回の3台の中では価格が高すぎる。

万人受けしそうなID.4

マッハEは、ほかより運動性を重視したテイストが好ましいいっぽうで、ダルいキャビンや、ときとしてゴツゴツする乗り心地には魅力を感じられない。じつのところ、これは3台中でもっとも効率に優れ、テスト中の航続距離は360kmと、ID.4の348kmやポールスター2の303kmを上回った。

それでも、この3台の中から1台だけを選ぶなら、それはこのクルマではない。

消去法の結果、残るのはID.4だ。たしかに、この中ではもっとも遅く、お堅いクルマだ。しかし同時に、みごとなまでの完璧さや円熟味は、まさしくフォルクスワーゲンらしい。ちょうど、バッテリー動力のティグアンといったところで、だとすれば多くのひとびとにウケるに違いない。

最終的には、どのクルマを選ぶかは、自分がどこにプライオリティを置くかによって決まる。どれも堅実で、価格設定も納得できる。また、スタイルはそれぞれ異なるが、ファミリーカーとして使いやすい電動クロスオーバー、いずれをとってもじつに好意的に受け入れられる。

個人的にどれを選ぶかは決まったが、その選択が必ずしも絶対ではないと思う。ひとによって答えは違うだろう。ただし、どれを選んだとしても、電動化されたパーソナルな移動手段の未来は、すでに用意ができているのだと思わせてくれるはずだ。願わくは、充電インフラの整備に、車両の進化へ追いついてもらいたいものだ。

こんな記事も読まれています

軽だけど広い! フラットスペースが魅力のスズキ エブリイがベースの軽キャンパー
軽だけど広い! フラットスペースが魅力のスズキ エブリイがベースの軽キャンパー
月刊自家用車WEB
えぇ!? 攻めたワゴンの高級車!? 懐かしきホンダ[アヴァンシア]
えぇ!? 攻めたワゴンの高級車!? 懐かしきホンダ[アヴァンシア]
ベストカーWeb
豊田章男会長、トヨタの大逆転王座に歓喜。戦友ヒョンデへ「来年もいい勝負しましょう!」/ラリージャパン後コメント全文
豊田章男会長、トヨタの大逆転王座に歓喜。戦友ヒョンデへ「来年もいい勝負しましょう!」/ラリージャパン後コメント全文
AUTOSPORT web
ラリージャパン主催者に対し2400万円の罰金通告。FIA/WRCがSS12一般車進入事案のさらなる詳細を発表
ラリージャパン主催者に対し2400万円の罰金通告。FIA/WRCがSS12一般車進入事案のさらなる詳細を発表
AUTOSPORT web
ベストカー三人衆に内乱勃発!? 国沢さん、なぜ[ランクル300]じゃなく250にしたんですか!!
ベストカー三人衆に内乱勃発!? 国沢さん、なぜ[ランクル300]じゃなく250にしたんですか!!
ベストカーWeb
くるまりこちゃん OnLine 「バックブザーの音」第124回
くるまりこちゃん OnLine 「バックブザーの音」第124回
ベストカーWeb
「君はその一瞬一瞬すべてにふさわしい」レッドブル代表がフェルスタッペンの戴冠を称賛。懸命に作業に取り組んだクルーにも感謝
「君はその一瞬一瞬すべてにふさわしい」レッドブル代表がフェルスタッペンの戴冠を称賛。懸命に作業に取り組んだクルーにも感謝
AUTOSPORT web
[ダイハツ]に期待しかないよ!? 今後作ったらアツい[クルマ]を語ってみた
[ダイハツ]に期待しかないよ!? 今後作ったらアツい[クルマ]を語ってみた
ベストカーWeb
フェルスタッペン、王座確定のため、マネジメントモードで5位フィニッシュ「自分のレースを心掛けた。最高の気分」
フェルスタッペン、王座確定のため、マネジメントモードで5位フィニッシュ「自分のレースを心掛けた。最高の気分」
AUTOSPORT web
HRC/ホンダ渡辺社長がフェルスタッペンを祝福「4連覇をサポートし続けられたことは誇り。さらなる高みを目指し支援する」
HRC/ホンダ渡辺社長がフェルスタッペンを祝福「4連覇をサポートし続けられたことは誇り。さらなる高みを目指し支援する」
AUTOSPORT web
角田裕毅9位、選手権6位争いにおいて価値ある2点を獲得「強力なレースペースを示せた。シーズン最後まで全力で戦う」
角田裕毅9位、選手権6位争いにおいて価値ある2点を獲得「強力なレースペースを示せた。シーズン最後まで全力で戦う」
AUTOSPORT web
サイズも価格も近い禁断の兄弟対決!! [ランドクルーザー250]と[ランドクルーザー300]の違いって??
サイズも価格も近い禁断の兄弟対決!! [ランドクルーザー250]と[ランドクルーザー300]の違いって??
ベストカーWeb
【ポイントランキング】2024年WRC最終戦ラリージャパン後
【ポイントランキング】2024年WRC最終戦ラリージャパン後
AUTOSPORT web
無冠の帝王が汚名返上。苦節13年で初王者のヌービル「本当に長かった。大変な努力へのご褒美だ」
無冠の帝王が汚名返上。苦節13年で初王者のヌービル「本当に長かった。大変な努力へのご褒美だ」
AUTOSPORT web
フェルスタッペンがドライバーズ選手権4連覇【正式結果】2024年F1第22戦ラスベガスGP 決勝
フェルスタッペンがドライバーズ選手権4連覇【正式結果】2024年F1第22戦ラスベガスGP 決勝
AUTOSPORT web
古さと新しさが同居した天才的デザインに仰天!! ディフェンダーの「貫禄」にシビれた!!!【テリー伊藤のお笑い自動車研究所】
古さと新しさが同居した天才的デザインに仰天!! ディフェンダーの「貫禄」にシビれた!!!【テリー伊藤のお笑い自動車研究所】
ベストカーWeb
ドリキンが自腹購入したホンダ「シビックタイプR」でチューニング指南! 無限×ヤマハコラボの「パフォーマンスダンパー」は買いです
ドリキンが自腹購入したホンダ「シビックタイプR」でチューニング指南! 無限×ヤマハコラボの「パフォーマンスダンパー」は買いです
Auto Messe Web
【F1第22戦決勝の要点】 岩佐歩夢が分析するメルセデスの速さの秘密「マシン特性の不利を覆すほどのいい仕事」
【F1第22戦決勝の要点】 岩佐歩夢が分析するメルセデスの速さの秘密「マシン特性の不利を覆すほどのいい仕事」
AUTOSPORT web

みんなのコメント

12件
  • ここに早くアリアが加わってほしいものだ。日産のEVに期待したい。唯一、これらと五分以上の性能はしばらくはこの車しか無いだろうから。
    トヨタはこのレベルには2025年まで出せないみたいだし。
  • 車って実用性が無いとね!いくら口でノガキやキレイごと言ってもね
    ホンダやマツダの関係者は理解できないんだな


※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村