高級感に勝るポールスター
text:Simon Davis(サイモン・デイヴィス)
photo:Luc Lacey(リュク・レイシー)
充電中の3台を観察していて、おもしろいことに気づいた。まず、これは予想できたことだが、ポールスターは高級感という点で、ほかの2台と比べものにならないということだ。
テスト車は4000ポンド(約56万円)のオプションである淡色のナッパレザーと端材を再構築したウッドパネルを装着してはいるものの、標準仕様でもラウンジのようなクールさは変わらない。
収納スペースも十分に備えている。ただし、標準装備されるパノラミックグラスルーフは鉱石の頭上スペースを侵害している。また、内燃エンジン主体のボルボ製プラットフォームがベースなので、センタートンネルが後席中央のスペースを、小さな子どもでないと窮屈なくらいに狭めている。
対照的に、マッハEのキャビンは、いかにもフォードらしい雰囲気だ。いってしまえば、マテリアルの上質さやデザインの大胆さと魅力で、ほかに勝るところはない。テスラのような大画面のタッチ式センターディスプレイを装備して、好ましいハイテク感を加えてさえ、どこかパッとしないのだ。
ただし、前席はポールスターほど安楽ではないものの、後席に座っても頭上にルーフの圧迫感を覚えることはない。明らかに広さでは上回っている。
実用性が光るID.4
だが、高級感と広さのバランスが最も優れているのはID.4だ。
硬い手触りのプラスティックが多用されているので、ポールスターほどの豪華さは感じられない。しかし、フォルクスワーゲンがID.4のキャビンをデザイン面で魅力的に仕上げようとした努力は、フォードがマッハEに注ぎ込んだそれより上だと思うはずだ。
ファーストエディションは、グレーとブラウンのシートや内装トリムを標準装備。派手ではないシャレた見栄えで、鮮明なホワイトのステアリングホイールなどとのコントラストもいい感じ。ただし、汚れがつかないよう常に気をつけたくなりそうではあるが。
もっともキャビンが広く感じさせるのも、これまたフォルクスワーゲンだ。後席に座るとマッハEと大差ないが、荷室に目を移すと、ID.4の優位性が際立つ。
ウインドウの高さまでで543Lという容量は、ポールスターの446LとマッハEの402Lのいずれをも上回る。ファミリーカーとしての使い勝手では、フォルクスワーゲンがトップだ。
フォルクスワーゲンらしい完成度
そうこうしているうちに、50kW充電につながれた3台のバッテリーが90%ほどチャージされた。プラグを抜いて、走りはじめよう。ロンドンからここまではマッハEに乗ってきたので、ID.4に乗り換えることにした。
高速道路では、走り出してすぐ、リラックスしてスムースに動くクルマだと感じられる。マッハEがクルーズ時でも少々やぼったくノイジーだったのに対し、ID.4はすべてが穏やかだ。
パッシブダンパーと20インチという大径ホイールでありながら、すばらしく落ち着いていてしなやか。硬いがサポートに優れるシートは、ややシートバックが足りないフォード のそれよりはるかにいい出来だ。ロングドライブする際にどちらかを選べるなら、ID.4のキーに手を伸ばすだろう。
フリットウィックでM1を降り、ミルブルックを横切り、曲がりくねった細い道も通りながらベッドフォードへたどり着く道のりでも、ID.4が馬脚をあらわすようなことはなかった。声高に走りの楽しさを訴えるようなところは見出せなかったが、ここまでのルートでは十分に速く、ステアリングは楽で安心感があり、フォルクスワーゲン全車に通じるものが感じられる。
まじめで、やるべきことをやるといったキャラクターの運動性なのはたしかだが、はじめて乗って走らせてみると、きわめてたやすく馴染める。個人的にはかなり好ましい。
やはり楽しいマスタング
次に、マッハEへ乗り換えた。高速道路を離れてみると、このフォードにはフォルクスワーゲンよりやや多くギミックを用いているのが明らかなのに、不思議なことにすんなり操作することができない。慣れが必要なクルマといった感じだ。
まず、ブレーキの効きがかなり唐突だ。次に、ステアリングはID.4に比べてシャープでクイックなのに、手応えは軽い。前輪の状態を手元に伝えてくれないのだが、慣れてしまえば今回の顔ぶれの中でもじつに楽しく速いEVとなる。
重量を完全に隠し切れてはいないが、走りはかなり熱い。グリップに優れ、しかもトラクションコントロールを切れば、コーナー出口でわずかながらもテールを振ってくれる。
フロントにV8を積んだマスタングに比べれば、その凶暴さは足元にも及ばないが、そこそこヤンチャなところを見せてくれる。これも悪くない。
価格差が気になるポールスター
ポールスターは、その2台の中間といったところだ。直線加速では2台のライバルを寄せつけず、ルーフはおよそ14cmほど低いことを考えると、これはなかなか興味深い。
マッハEのように、ステアリングは軽めだ。しかし、レスポンスのスポーティさはそれほどでもないので、どんな風に走れるのか攻めてみたい気にはならない。
といっても勘違いしないでほしい。ポールスター2はハンドリングに優れるクルマだ。前後にモーターを積んでいるおかげで、ボディコントロールもトラクションも上々。だが、走らせ甲斐があるかといえば、そうでもないのだ。
走行風景の撮影を終えて、ロンドンへ戻る前に、ふたたび充電するべくミルトン・ケインズへ引き返す。道すがら、ポールスターを走らせながら、あれこれ思いを巡らせた。これはよくできたクルマだ。速く、コンフォートで、造りはよく、仕上げも見目麗しい。
とはいえ、今回テストした仕様のマッハEやID.4と比べたら、選びたいEVはこれではない。おそらく、ライバルたちのよりハイパワーで航続距離の長いバージョンが比較対象なら話は違ってくるのだろうが、今回の3台の中では価格が高すぎる。
万人受けしそうなID.4
マッハEは、ほかより運動性を重視したテイストが好ましいいっぽうで、ダルいキャビンや、ときとしてゴツゴツする乗り心地には魅力を感じられない。じつのところ、これは3台中でもっとも効率に優れ、テスト中の航続距離は360kmと、ID.4の348kmやポールスター2の303kmを上回った。
それでも、この3台の中から1台だけを選ぶなら、それはこのクルマではない。
消去法の結果、残るのはID.4だ。たしかに、この中ではもっとも遅く、お堅いクルマだ。しかし同時に、みごとなまでの完璧さや円熟味は、まさしくフォルクスワーゲンらしい。ちょうど、バッテリー動力のティグアンといったところで、だとすれば多くのひとびとにウケるに違いない。
最終的には、どのクルマを選ぶかは、自分がどこにプライオリティを置くかによって決まる。どれも堅実で、価格設定も納得できる。また、スタイルはそれぞれ異なるが、ファミリーカーとして使いやすい電動クロスオーバー、いずれをとってもじつに好意的に受け入れられる。
個人的にどれを選ぶかは決まったが、その選択が必ずしも絶対ではないと思う。ひとによって答えは違うだろう。ただし、どれを選んだとしても、電動化されたパーソナルな移動手段の未来は、すでに用意ができているのだと思わせてくれるはずだ。願わくは、充電インフラの整備に、車両の進化へ追いついてもらいたいものだ。
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みんなのコメント
トヨタはこのレベルには2025年まで出せないみたいだし。
ホンダやマツダの関係者は理解できないんだな