軽自動車マーケットの中核化
日本独自の車両規格である軽自動車は、狭い道路幅や入り組んだ街路、限られた車庫スペースといった日本特有の環境に適応した車種だ。新車販売台数ランキングの上位には軽自動車が並び、国内マーケットの中核を占める存在になっている。
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軽自動車は物流分野でも活躍している。特に軽貨物車は小回りが利く輸送手段として、都市部のラストマイル配送を支える主役の役割を果たしている。
普通車や大型車を用いた貨物輸送では、5台以上の車両を揃え、運行管理者の有資格者を配置するなど、多くのハードルをクリアする必要がある。一方、軽貨物は個人が1台の車両を持ち、適法な手続きを踏めば許認可を取得できる。この
「オーナードライバー制」
は軽自動車に限って認められてきた。その結果、独立開業を目指す中高年者など幅広い層に門戸を開き、業界の裾野を広げてきた。
しかし、軽貨物運送にも変化の波が押し寄せている。物流環境の変化にともない、制度疲労も顕在化しているのだ。
かつては専業の軽貨物ドライバーが組合に加入し、業務を受注する形態が多く、業界内の結束が強かったため、価格水準は比較的安定していた。だが近年は、ネットを介したマッチングが増え、業界構造は流動化している。その結果、副業として配送に携わる
「ギグワーカー」
が増え、大手荷主がドライバーに直接発注するケースも目立つようになった。
規制強化の継続
環境変化によって軽貨物の需要は増大している。しかし
・運賃水準の低迷
・交通事故の発生
など、課題への懸念も高まっている。そのため、国は軽貨物運送に対する規制強化を進め、各種制度変更を行っている。
まず安全規制の強化が進められている。近年の法改正では、
・安全講習の受講
・管理者の選任
・事故報告
などの義務が導入された。
次に焦点となるのは荷主や元請けとの取引適正化だ。なかでも運賃の適正化は重要で、適正運賃の確保は安全運行の前提ともいえる。
取引適正化の規制は多岐にわたる。例えば2025年に改正されたトラック法では、「適正原価」を下回る運賃での受託を制限する規定が追加された。この規定は普通車に加え軽貨物も対象であり、業界に一定の影響を与えると予想されている。
国に加え、業界団体の取り組みも加速している。全国軽貨物協会は適正取引ガイドラインを策定しており、報道によれば
「ドライバーの拘束1時間当たり収入の目安を3000円とする」
といった方針を示している。
規制強化と現実との矛盾
運賃引き上げの動きは歓迎すべきどころか、むしろ遅すぎたくらいだろう。ただ、軽貨物業界の課題を踏まえると、その実現は容易ではない。軽貨物の問題のひとつは、
「積載量の少なさによる生産性の低さ」
である。軽貨物車の積載量は最大でも350kgだ。荷室の制限があると、さらに積載量は低下する。一般的にパレット1個に載るケース数は30個程度だが、軽貨物車では同程度に留まる場合も多い。さらに、安全や品質向上のために車両に各種装備を追加すると、積載重量はさらに削られてしまう。
生産性向上が難しい軽貨物の特性を考えると、「適正原価」を確保するには運賃水準を相当程度引き上げる以外の選択肢は乏しい。この点で、軽貨物の運賃引き上げは普通車以上に困難である。
現状で軽貨物輸送が成り立っている背景には、長時間労働かつ比較的低い収入水準で働く人々がいることも大きい。さらに、近年のギグワークの隆盛も影響している。ギグワークとは、昼間は別の仕事に従事し、休日や夜間のスキマ時間に配送を行う働き方を指す。昼間の仕事で基礎的収入が確保される労働者にとって、副業としての軽貨物配送は安価でも成り立つ。
この働き方自体に問題はない。しかし、ギグワークのドライバーの増加によって、従来のプロドライバーの収入にマイナス圧力がかかることは大きな問題である。
労働者権利保護の不十分さ
もうひとつの問題は、
「労働者権利保護の不十分さ」
である。普通車や大型車に乗るドライバーは、一部の例外を除き、トラック会社に雇用された労働者だ。一方、軽貨物のオーナードライバーは、荷主や元請けと業務委託契約を結ぶ場合がほとんどで、雇用関係は存在しない。
そのため、労働者に認められるさまざまな権利を行使できない。また、通常のサラリーマンが受けられる社会保障や労災補償、福利厚生などのメリットも、かなり限定された形でしか享受できない。
逆にいえば、オーナードライバーを使う企業側には大きなメリットがある。企業は通常、給料の2~3割に相当する福利厚生費を負担する。しかし、ドライバーを業務委託で済ませれば、その分のコストを削減できる。
そのコストカットのしわ寄せはドライバーにかかる。同時に、運賃の低下によって、適正な労働条件で働きたい他のドライバーにも影響が及ぶ。
根本的な問題は参入規制の緩さ
誤解を避けるために述べると、個人事業者という働き方自体が問題なわけではない。個人の裁量で必要な収入や体力の余裕に応じて仕事を選ぶライフスタイルは、高齢化が進む日本社会にも適した働き方だ。
運輸業界で個人事業といえば、個人タクシーのドライバーが思い浮かぶ。個人タクシーでは多くの高齢者が活躍しており、柔軟な働き方が労働者のニーズに合致した結果だと考えられる。
ただし、個人タクシーのドライバーと軽貨物ドライバーには重要な違いがある。それは
「市場への参入規制」
だ。個人タクシーには非常に高い参入ハードルが設けられており、容易に許認可を得ることはできない。
一方、軽貨物のオーナードライバーは、軽車両購入などの初期投資を除けば、現状では目立った参入障壁がない。日本は資本主義社会である以上、価格は原則として需要と供給で決まる。そのため、参入障壁を低く保ったまま運賃を適正化するのは容易ではない。
今後、ネット通販による宅配需要は増加し、ギグワークのような柔軟な働き方もさらに活性化する見込みだ。しかしラストマイル配送の担い手である軽貨物運送は、長年の制度疲労により大きな曲がり角に差し掛かっている。以上の課題を踏まえると、
「抜本的な制度見直し」
が必要な時期に来ていると考えられる。(久保田精一(物流コンサルタント))
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みんなのコメント
それならば、普通に運送会社へ就職した方が よっぽど良い。