3年を費やして完成したGTS8555ツインスーパーチャージ仕様!
難攻不落のECU制御を1年以上かけて克服
「300キロ巡航を楽にこなすツインスーパーチャージャー仕様のRC F!」高速周回路でR35GT-Rと比較試乗!
2016年のRC F納車直後からスタートした、OPTION誌のR35GT-Rキラー計画。程なくステップ1仕様の600ps仕様は完成、続いてステップ2仕様のGTS8555ツインスーパーチャージャー仕様として、800psに耐えられるエンジンやチャージャーレイアウト、そしてミッションの強化策は2017年の早い時期にカタチになっていた。
しかし、エンジン始動こそ問題なかったが、エアフロメーターのセンサー位置変更による吸気脈動などから純正ECUはエラー信号を認識。さらには、セーフティモードでスロットルが完全に開かないという問題にまで直面。エラーの原因を検証しつつ海外のエンジニアにも協力を要請し、ECUのやりとりを何度も行う日々。この作業は決して楽なものでなく、気がつけば機械的な部分の完成から1年半近い時間を費やしてしまったという。
最終的には、見事エラー発生の回避に成功。メインの直噴インジェクターを活用しながら、足りない燃料を純正のサブインジェクターで制御(F-CON iSでマッピング)することで、ツインスーパーチャージャーの性能を開花させることを可能としたのだ。
そこから、セッティングを重ねながらデバック作業をする中で市販品で構築した排気系のキャパ不足を確認、その対策も施しほぼ完成の領域に到達したのは2018年の秋のこと。ツインスーパーチャージャー仕様のRC Fは、丸3年を費やした長期プロジェクトの末に完成したというわけだ。
早速、車両を高速周回路に持ち込み、唯一無二であろうGTS8555ツイン仕様のフィーリングチェックを敢行。ドライバーはDaiこと稲田大二郎。時速300キロ領域の異次元インプレッションをお届けだ。
なお、300キロ巡航テストということもあり、高速安定性を高めるためにフロントにはトムスのリップスポイラーを加工してアンダーパネルを装備。リヤにもディフューザーを追加している。足回りは、HKSハイパーマックスダンパーの試作モデル、タイヤには19インチのアドバンネオバAD08Rをチョイスした。
●稲田大二郎 VS RC Fツインスーパーチャージャー仕様
「300キロ領域での“ゆとり”はこれまでに経験したことがないレベルだ」稲田大二郎
走り出して感じることは、静かでゆったりと安定した乗り心地、パワフルなのにスピード感を全く感じさせない。しかし、GPS計測器のメーターを見て驚いた。バンクを出ると、すでに時速300キロあたりを指そうとしているではないか! 正直言って、体感的には高速道路を100~150キロくらいで流している程度の感覚しかない。300キロという領域で国産車を走らせるなら、R35GT-Rの右に出るものはいないと思っていたが、負けてない。このツインスーパーチャージドRC Fの安定性は特筆ものだ。
この安定感の源は、800ps、90キロ以上という出力。それをターボではなく2基のスーパーチャージャーで引き出しているからなのだろう。とにかく、低中速域からグングンと加速していく。ターボみたいに急激なトルク特性ではないから、スピード感のないまま気がついたら300キロオーバーに達している。
そして、高速領域で加速や巡航を続ける中での軽快なフィールは、ターゲットにしてきたGT-Rに勝るとも劣らない。なんともゆとりがある300キロというのが印象的だった。この安定感と軽快感は、重量級ボディによる荷重と、そのボディを柔らかく支えるサスペンションチューンが絶妙にマッチしているからだと思う。
比較対象として用意されたR35GT-R(2018年モデル)は、トランスアクスルを軸にしたミッドシップパッケージと電子制御4WD、そしてVR38DETTの驚異的なパワーなどが絡み合い、アグレッシブに攻めると圧倒的に速い。しかし、超高速クルーズとなると話は別。いやはや、良くできたチューンドだ。
僕がこれまで多く経験してきた最高速チューンドと同軸上にあるR35GT-Rと、全く異なる性格だがトップエンド(実際にはまだまだ余裕があるが)で驚くほどの安心感を与えてくれたレクサスRC F。開発に費やした3年間は決して無駄ではないと思うよ。この技術がユーザーのクルマに活かされ、チューニングが進化していくのだから。
最後に。最新のトヨタやレクサスのエンジンは、チューニングすればするほどECU制御の壁に当たると言われて多くのチューナーが目を背ける中、ここまで仕上げてきたJ&K神保さんの執念には敬服するしかない。本当に見事だ。
●取材協力:J&K 千葉県山武郡九十九里町真亀629 TEL:0475-76-2714
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