VABチューンの新定番“GTIII-RSタービンキット”の魅力とは?
EJ20の決定的な弱点、それは排圧が高いこと
「WRX STIにワンランク上の速さを与えるGTIII-RSタービンの魔力」HKSが推奨するEJ20の2ステップチューニングの全容!
刺激的な加速感を味わうために欠かせない、飛び道具ともいえるビッグタービン。しかし、今やMTモデルを設定するターボ車はめっきり少なくなった。話題を集めている新型スープラでさえMTグレードは用意されていない。そういった意味でもWRX STIは走り好きにとって貴重な存在だ。
それは日本を代表するチューニングメーカー、HKSにとっても同様である。だからこそ重要車種のひとつとして捉え、発売当初から意欲的にパーツ開発に取り組んできた。そんなHKSがEJ20ユニットの弱点として指摘するのが、排気の抜けの悪さだ。
「タービン直後に触媒があるため排圧が上昇しやすいんです。ブーストアップをするとさらに排圧が高まり、エンジンへの負担も増加します。これはVABについても変わりません」と、HKS広報担当の近藤さん。純正触媒のまま無闇に過給圧を高めていくと、エンジンブローに至るケースもあるというから恐ろしい。
HKSではそうしたEJ20特有の弱点を克服すべく、内部のセル数やサイズを最適化したスポーツキャタライザーを開発。これにより排圧に余裕を持たせることで、安心してブースト圧を高められる環境を整える。その上でフラッシュエディター(フェイズ2)を使って燃料補正を行うことで、全域パワーアップを体感できる。
なお、HKSではメタルキャタライザーとフラッシュエディター(専用データ入り)を同梱した「エキゾースト&ECUパッケージ FOR WRX STI」を18万5000円で販売している。
エンドマフラーについては、上記パッケージと組み合わせるならメイン75φのストレート構造を採用するスーパーターボマフラー(2本出し:16万3000円/4本出し:20万4000円)がベスト。保安基準適合モデルとは思えないほど高い排気効率とクリアなサウンドを実現した製品だ。
これがHKSの推奨するブーストアッププランで、過給圧は1.5キロまで高められる。もちろんその効果は抜群だが、EJ20の本領を発揮し切っているとまではいかない。なぜならパワーを絞り出す上で、純正タービンの容量がネックとなってくるから。
パワーチェックグラフを見てもそれは明らか。ブーストアップ(緑線)では4000rpm以降のトルクが大きく落ち込んでいる。高回転では純正タービンが飽和状態となり、過給圧は1.0キロ程度までタレてきてしまうのだ。
ポン付けターボらしからぬ圧倒的な加速力が味わえる
そこで、HKSが次なるステップとして提案するのがタービン交換。コンプレッサー容量に余裕を持たせることで、EJ20エンジン本来のパフォーマンスを最大限に発揮してやろうという寸法だ。
タービン交換と聞くと、敷居が高いメニューと感じる人も多いと思うが、HKSのGTIII-RSキット(29万8000円)は純正エキマニを使用するポン付けモデル。それゆえ、コストパフォーマンスにも優れる。燃料ポンプやインジェクターといった周辺環境さえ整えれば期待馬力は約390psと、ブーストアップとは比にならないほどの加速力が手に入る。
MHI製センターカートリッジを採用するGTIII-RS。最新の流体解析を駆使して開発されており、高出力&高レスポンスながら、サージングの発生を抑え込んでいるのも特徴だ。ハウジングはHKS製のオリジナルで、専用の強化アクチュエーターも付属する。
これほど一気にパワーを上乗せするとなるとエンジンへの負担が気になる所だが、タービン容量に余裕があるので排圧も抑えられる方向。テスト車両の場合、最大過給圧は1.4キロ程度で、これが高回転までほとんどタレずに持続している。つまりパワーも狙えるし、エンジンにとっても優しいタービンというわけ。
さらに特筆すべきは、低速トルクが犠牲にならないこと。削り出しのビレットブレードを採用するGTIII-RSはレスポンスよく過給が立ち上がるため、低回転域でもトルクの細さを感じることはない。それでいて、ハーフからアクセルを踏み返すような状況で出がちなサージングも解消されている。だからリニアに加速していくし、街中でも扱いやすい。
ひと昔まえのタービン交換というと、速さと引き換えに何かしら犠牲を伴うのが常であった。しかしHKS開発陣の並々ならぬ努力と技術の進化により、そうしたネガ要素は払拭されている。もはやGTIII-RSタービンに死角は見当たらない。これを選ばない手はないだろう。
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