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FRPボディにV6エンジンのキットカー 期待以上のギルバーン・ジェニーとインベーダー 後編

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FRPボディにV6エンジンのキットカー 期待以上のギルバーン・ジェニーとインベーダー 後編

フォードの部品を全面的に流用したMk III

中期型となるギルバーン・インベーダー Mk IIをMk Iと見分けるポイントは、トライアンフ・スタッグと同じドアハンドルと、ボンネットに切られたエアベントの形状。パワーウインドウが標準装備になり、シャシーは剛性が高められ操縦性も改善していた。

【画像】FRPボディに3.0L V6 ジェニーとインベーダー 少量生産された独自モデルは他にも 全115枚

Mk IIの生産数は約300台といわれており、100台はステーションワゴン。150ポンドを追加すれば、折りたためるリアシートと大きなテールゲートを装備することもできた。

1972年にはインベーダー Mk IIIを発表。フロントグリルが大きくなり、肉厚なタイヤに小径のホイールが組まれ、オリジナルのジェニーからコンセプトは大きく変化していた。

すべてのMk IIIは工場生産されており、ステーションワゴンも存在しない。フロントサブフレームはフォード・コルティナ用で、サスペンションはダブルウイッシュボーン式。カプリに積まれるV6エンジンが載り、オーバードライブが標準装備となった。

リアアスクルはコルティナ用で、幅の広いトレッドに対応するため、リアフェンダーは拡大。ホイールは13インチと小さいものの、ブレーキはサーボで増強されていた。

テールライトはフォード・エスコート用で、ステアリングラックはコルティナ用。ルーフは、当時流行したブラック・ビニールで仕立てられている。

この背景にあったのは、自動車に掛けられた一律10%の購入税。キットカーに対しても適用されることになり、生産を合理化する必要性があった。価格競争力を高めるため、部品は全面的にフォードへ頼ることになった。

ジャガーXJ6に並ぶ価格という現実

その頃にはディーラー数が27箇所へ増え、Mk IIIは約220台が売れている。生産期間は1年程度だったから、かなりの人気だったといっていい。

1973年、戦争をきっかけに原油不足のオイルショックが世界を襲う。燃費の良くないギルバーンは、コアなファンによって支えられていた。それでも、ジャガーXJ6に並ぶ価格という現実から、逃れることはできなかった。

販売を北米や中東へ拡大する計画があったものの、実現しなかった。インベーダーのロング・ホイールベース版や、ミドシップのT11といった新モデルの計画も、夢に終わった。

受注リストに希望者の名前が残るなか、新しい投資家は見つからず、ギルバーンは1974年3月に生産を停止している。それでも、オーナーに友好的だった同社の姿勢もあって、今も熱心なファンが英国には残っている。

オーナーズクラブの設立は1969年。公道やサーキットで、自らのマシンのポテンシャルを発揮したいという人にも、ギルバーンは積極的に協力してきたという。その結果、ジェニーやインベーダーで改造されていない例は少ない。そもそも生存台数も少ないが。

今回、オーナーズクラブの会長を務めるブライアン・ゲント氏は、オリジナルに近い4台を集めてくれた。ゲント自身も、ホワイトのインベーダー Mk Iを持ち込んでくれた。

レッドのジェニーは、ウィン・ジョーンズ氏がオーナー。バーガンディのステーションワゴンは、ガレス・フランコンブ氏のインベーダー Mk IIで、シルバーのMk IIIは、マーク・ジョーンズ氏の愛車だ。

往年のマセラティのような雰囲気

4台を並べると、ジェニーはベルトーネ社が手掛けたアルファ・ロメオ 105シリーズのクーペとイメージが重なるようで驚いた。落ち着いて眺めると、往年のコーチビルダー、ヴィニャーレ社の手掛けたマセラティのような雰囲気を、どれもが放っている。

ステーションワゴンは、リアから見るのがベスト。サイドウインドウが不自然に垂れているから、サイドビューが美しいとはいいにくい。それでも、ハイスピードで走れるワゴンとして、インベーダー・エステートには訴求力がある。

インベーダー Mk IIIは、ギルバーンの苦難の時代に生まれた。大径ホイールで見栄えするジェニーやMk IIと比べると、年老いている。シルバーのボディで着飾っていても。

ワイヤーホイールと、シンプルなクロスとレザー張りのダッシュボードを備えるレッドのジェニーは、4台で特に魅力的。オーナーのジョーンズは、1960年代に友人が買ったキットの組み立てを手伝って以来、ギルバーンに好意を抱くようになったという。

きれいにトリミングされたドアの内装パネルや、オリジナルのレザー巻ステアリングホイール、クロームメッキ・リングの付いたスミス社製メーターなど、ディティールの良さを彼が説明する。マセラティのようだとも話す。

インベーダー Mk IとMk IIの内装にも見るべき点は多いが、Mk IIIのセンターコンソールはパッド入り。メーターには控えめなカウルが付いている。安全性に配慮されたスイッチ類も並び、他の3台にはない高級感が漂う。

ギルバーンの運転は期待以上に楽しい

運転してみると、13インチ・ホイールが支えるインベーダー Mk IIIは、1番コンパクトな印象を受ける。エンジンはたくましく、高回転域まで回したり、こまめに変速する必要はない。

ドライな3.0L V6エンジンのノイズとともに、威勢よく速度が増す。アクセルレスポンスは鋭い。

ルーフを支えるピラーは細く、運転席からの視界は良好。Mk IIIには背もたれの高いスポーツシートが備わり、着座位置も低められている。ステアリングホイールのリムは太く、意外にも洗練された走りを味わえる。乗り心地も良好だ。

シフトレバーは、後ろ側から伸びる中折れ式がギルバーンの特徴だが、Mk IIIは一般的なもの。想像よりシフトフィールは滑らかで、3速から2速へのシフトダウン時に若干癖があるものの、すぐに慣れてしまった。

V6エンジンの太いトルクを活かし、変速をサボっても問題ない。3速と4速で選べるオーバードライブに入れて、ゆったり流すこともできる。

全長4039mm、全幅1651mmという小柄な見た目から想像する以上に、ステアリングホイールは重い。そのかわり、ハイレシオで回頭性はクイック。アンダーステアは適度に抑え込まれ、コーナーを滑らかに旋回できる。

正確なアクセルレスポンスとステアリングフィール、挙動を感じ取りやすいシートとの組み合わせで、シャシーの能力をしっかり探れる。ギルバーンの運転は、期待以上に楽しいものだった。

強い独自性を湛えるスペシャル・モデル

4シーターの凸型ボディが与えられたジェニーやインベーダーは、スポーツカーではないし、洗練されたグランドツアラーでもない。スペシャル・モデルとしては優れていたが、同時代の4シーター・クーペと比べて、価格は手頃でもなかった。

1960年代には、フォードのV6エンジンを搭載したFRPボディのスペシャル・モデルが複数存在した。それぞれが個性的といえたが、特にギルバーンは強い独自性を湛えている。

振り返ってみると、ギルバーンは若干荒削りなブリストルと呼ぶことができそうだ。位置付けは曖昧だったかもしれないが、走りは楽しく維持もしやすい。クラシックとなった現代においては、それで充分に思える。

協力:ギルバーン・オーナーズクラブ、ブライアン・ゲント氏

ギルバーン・ジェニー/インベーダー(1966~1974年/英国仕様)のスペック

英国価格:2046ポンド(1966年)/2万ポンド(約334万円)以下(現在)
販売台数:803台(合計)
全長:4039mm
全幅:1651mm
全高:1308-1321mm
最高速度:193km/h
0-97km/h加速:8.6秒
燃費:6.4-7.8km/L
CO2排出量:-
車両重量:930-1080kg
パワートレイン:V型6気筒2994cc OHV自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:143ps/4750rpm
最大トルク:24.9kg-m/3000rpm
ギアボックス:4速マニュアル

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