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地道な進化とは? 新型スバル インプレッサ スポーツ試乗記

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地道な進化とは? 新型スバル インプレッサ スポーツ試乗記

2019年10月、スバルの国内主力モデル「インプレッサ」と、そのインプレッサをクロスオーバーSUVに仕立てた派生モデル「スバルXV」が同時にフェイスリフトを受けた。発売はどちらも11月半ばの予定だったけれど、日本列島を襲った台風19号の影響で出荷が遅れ、販売店でのフェアに間に合わなかった。師走になって、ようやく国内の全拠点に試乗車の配備が完了し、仕切り直しということで、プレス向けの試乗会を開いたのだった。

ここでは、東京タワーの麓から横浜みなとみらい地区まで、首都高速を含む一般道およそ40kmの往路で試乗したインプレッサSPORT 2.0i-S EyeSight AWDについての印象を述べたい。

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【主要諸元(2.0i-S EyeSight AWD)】全長×全幅×全高:4475×1775×1480mm、ホイールベース2670mm、車両重量1400kg、乗車定員5名、エンジン1995cc水平対向4気筒DOHC(154ps/6000rpm、196Nm/4000rpm)、トランスミッションCVT、駆動方式4WD、タイヤサイズ225/40R18、価格270万6000円(OP含まず)。インプレッサには1992年にデビューした初代以来、4ドア・セダンと5ドア・ハッチバックの2種類のボディがあり、それは2016年に登場した現行モデル、第5世代のインプレッサもおなじだ。前者は「G4」、後者は「スポーツ」と呼ぶ。

エンジンは生産中の自動車用ユニットとしては世界でオンリーワンの水平対向4気筒、別名“フラット4”の自然吸気で、1.6リッターと2.0リッター直噴の2種類があり、ギアボックスはリニアとロックと呼ばれるCVTと組み合わせられる。駆動方式は2WD(前輪駆動)とAWD(全輪駆動)の2種類がすべてのグレードに用意されている。

試乗車は車名が示すごとく5ドア・ハッチの2.0リッター、AWDで、Sは18インチのタイヤ&ホイールを履いたスポーティ仕様であることを表す。車両価格は270万6000円で、インプレッサにおける最上級モデルということになる。

インプレッサは5ドア・ハッチバックの「インプレッサ スポーツ」と、4ドア・セダンの「インプレッサ G4」が選べる。3年目のフェイスリフト、まずは外観がチラッと変わった。と、筆者なんぞは思ってしまうけれど、オーナーのかただとものすごく雰囲気が変わったと受け取られるかもしれない。ビフォアは左右、真ん中と独立していた3つのバンパー下部の開口部が、アフターは水平基調のラインでつながり、たいへんスッキリし、安定感が増した。

ヘッドライトのデザインは変わっていないのに、目元までスッキリした印象を受けるのは筆者だけかもしれないけれど、より機能主義的で、よりモダンになった、といえるのではあるまいか。鎖がまが回転しているみたいな18インチ・ホールのデザインも新しい。

最上級グレードのアルミホイールは18インチ。ほかのグレードは16~17インチ。インテリアではダッシュボードの表皮の面積を増やしたり、液晶ディスプレイ周辺のデザインを見直したり、シート表皮の材質を変えたりしている。目的はもちろん品質感をあげるためだ。たいへん地道な変更で、これまた前期型モデルのオーナーだったら、ちょっと悔しい思いをするかもしれない。

目玉のひとつは、2016年の発表時に全車標準化されたアイサイトver.3がその最新バージョンのアイサイト・ツーリングアシスト付きに進化した点である。ステレオカメラだけで認識するスバル独自の運転支援システム、アイサイトの後ろにツーリングアシストの文字が合体すると、0~120km/hの範囲でアクセル、ブレーキ、ステアリング操作をアシストする。ようするに自動運転的なことをしてくれる。渋滞時にも、先行車をカメラが認識して、ストップ&ゴーに対応してくれる。

インテリアはインパネやシート表皮などが見直された。デザインはほぼおなじ。安全装備面ではアダプティブドライビングビームと呼ばれる、夜間のハイビームとロービームの自動切り替えシステムや、運転席のシートポジションメモリー機能等が新たに装備されている(グレードによって改良内容は異なるのでご注意ください)。

万能ファミリーカーじつは筆者、この型のインプレッサに乗るのは初めてでありまして、正直その乗り心地のよさと駆動系のスムーズさ、静かさに驚いた。5代目インプレッサの最大の特徴は、“SGP”と略称される新プラットフォームを初採用したことで、当時のスバルのプレスリリースは誇らしげにこんなふうに書いている。

「動的質感では、新プラットフォームを採用しボディとサスペンションの剛性が大幅に向上したことで、不快な振動騒音が無く、思い通りに走り、快適な乗り心地を実現しました」

スバルは基本的に1989 年発表の初代レガシィを起源とするプラットフォームをおよそ30年、正確には27年にわたって、軽自動車を除く、あらゆるモデルに使ってきた。改良の積み重ねで、いわばツギハギだらけで、重くなってもいた。それが一新された。その効果がもっともストレートに出ているのがインプレッサだろう。そう筆者は直感した。

JC08モード燃費は15.8km/L。駆動方式はFWD(前輪駆動)と4WDが選べる。搭載するエンジン(直噴システム付き)は1995cc水平対向4気筒DOHC(154ps/6000rpm、196Nm/4000rpm)。SGPはインプレッサよりも大きくて重いフォレスターそのほかのスバル車の骨格にも使われることが想定されている。そのなかで、インプレッサは1番小さい。同じ骨格であれば、ボディはちっちゃい方が、もちろんパワートレインとの相性もあるにせよ、少なくともより骨太になるはずである。

じつはシャシー面の改良も、3年目のフェイスリフトではおこなわれている。SGPの改良点はどこか? ひとつは、サスペンションの取り付け部のクロスメンバーの溶接方法を変えるというシブい手段によって剛性をあげている。それに合わせてスプリングとダンパーも変えている。ダンパーそれ自体は、製品はおなじだけれど、特性を最適にしているという。

最小回転半径は5.3m。トランスミッションは全グレードCVT(リニアトロニック)のみ。電動パーキングブレーキは標準。225/40 R18の「ヨコハマ・アドバン・スポーツ」というスポーツと名のつくタイヤを履いているにもかかわらず、乗り心地はしなやかで、ドッシンバッタン、まったくしない。いや、1度だけ、首都高速羽田線のトンネルのなかで、路面の凸凹を拾ってドシンというショックを伝えた。そのことを開発責任者の布目智之さんに立ち話で申し上げると、布目さんは落ち着いたまま、こう言った。

「限界はあります。そのときに大切なのは収束を早くすること」

なるほどシルバー・メタリックのインプレッサは、そのあと何事もなかったかのように走り続けたのだった。

ステアリング・ホイールには運転支援およびオーディオ用スウィッチ付き。メーターはアナログ。インフォメーション ディスプレイはフルカラー。ステレオカメラを使った運転支援技術「アイサイト」は全グレード標準。衝突被害軽減ブレーキや全車速追従機能付きクルーズコントロールなどを含む。ただし、Sの文字がつくにもかかわらず、いわゆるスポーティ・カーではない。1995cc直噴フラット4は最高出力154ps /6000rpm、最大トルク196Nm/4000rpmと、トルク重視の実用エンジンである。印象的なのは、水平対向4気筒特有の完全バランスから生まれるスムーズさ。そのスムーズさはCVTとの組み合わせと、SGPなる新プラットフォームによってより強調されている。

乗り心地とエンジンのスムーズさはもちろんつながっている。少なくとも、エンジンがスムーズであると乗り心地もスムーズになるのは自明だ。くわえて、フラット4ならではの低重心とAWDによる安定感。室内も荷室も広いし、雨や雪にも強い。3年を経たいまも、インプレッサはVWゴルフ・クラスの万能ファミリー・カーとして、世界で唯一無二の相棒になってくれるだろう。

しかもスバルは、WRCで3度マニュファクチャラーズ選手権を制し、3人のドライバーをチャンピオンに輝かせた、ニッポンの宝石のようなブランドである。

前席は8ウェイ電動調整機能付き。リアシートはセンター アームレスト付き。レザー表皮はオプション。ラゲッジルーム容量は通常時385リッター。リアシートのバックレストは40:60の分割可倒式。パナソニック製のカーナビゲーションはディーラーオプション。個人的には、ステアリングのレスポンスがもうちょっとクイックだったらなぁ……と、思ったので、そう布目さんに申し上げると、こんな内容の答が返ってきた。

「インプレッサは初心者からマニアまでユーザーの幅が広い。どこを目指すべきか、社内で検討するために、STI社がダンパーのチューニングを手がけて応答性をあげたハンドリングのベンチマークとなるクルマをつくった。それを今回、持ってきているので、ぜひ乗って、ご意見をお聞かせください。」

ごめんなさい。結局、筆者は乗る機会を逸してしまいました。逸したのに書いたのは、スバルの開発陣は、謙虚に前に進もうとしている、ということをお伝えしたかった。くわえて、インプレッサSTI の可能性も。

文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.)

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みんなのコメント

3件
  • JC08モード燃費だけじゃなくて新しい基準も併記してくれたら良いのに。
  • 水平対向4気筒は直列4気筒より振動は少ないけど完全バランスじゃない。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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