無実の息子を助ける！ ドイツ“オカン”の実話に基づく『ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュ』

母の愛はいかなる障害も越える！

　悪名高きグアンタナモに収監された無実の息子を取り戻すために闘ったドイツの母の実話を元に描き、第72回ベルリン国際映画祭で銀熊賞2冠（主演俳優賞、脚本賞）を受賞したのが『ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュ』です。

　2001年、アメリカ同時多発テロのひと月後。ドイツのブレーメンに暮らすトルコ移民一家の母ラビエ・クルナスは、長男のムラートが旅先で“タリバン”の嫌疑をかけられ、キューバのグアンタナモ湾にある米軍基地の収容所に収監されてしまったことを知ります。

　無実の息子を救うために奔走するラビエでしたが、警察も行政も動いてくれません。藁にもすがる思いで、電話帳で見つけた人権派弁護士ベルンハルト・ドッケの元を訪れたラビエは、アドバイスを受けアメリカ合衆国最高裁判所でジョージ・W・ブッシュ大統領を相手に訴訟を起こすことになります……。

　監督を務めたのは、『グンダーマン 優しき裏切り者の歌』(18)などで知られるドイツの俊英アンドレアス・ドレーゼン。5年にもおよぶ収監の体験を綴ったムラート・クルナスの著書を読んだドレーゼン監督は、訴訟も裁判もないまま収容所に送り込まれ、5年も出られなかったという事実に憤りを感じ映画化を計画。しかし、あまりにも悲惨な内容に二の足を踏んでいました。そんな中で出会ったムラートの母ラビエ・クルナスの一癖も二癖もある天真爛漫なキャラクターに魅せられ、作品の方向性が決定。ドイツのコメディアンであるメルテム・カプタンが主演を務めたことで、シリアスなテーマにもかかわらずコメディタッチで軽妙な快作が誕生することになりました。

　ドイツのバイクメーカーといえば四輪も手がけるBMWをまず思い出す人も多いのではないでしょうか。四輪は手堅くまじめな印象がありますが、バイクでは他のメーカーにないユニークなテクノロジーを投入するなど、意外と挑戦的な姿勢を見せてくれます。重いテーマにコメディの要素を組み込んだ本作と同様、ドイツのならではのチャレンジングスピリッツなのかもしれませんね。

『ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュ』は、2024年5月3日（金・祝）より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショーです。