雪降る青森でボルボのフラグシップSUV「XC90」に小川フミオが試乗した。雪上ドライブの印象はいかに?
ユーザーの不安を解消へ
“脱・内燃機関”を精力的に進めているボルボが、2020年12月の冬の青森で、XC90 Recharge(リチャージ)プラグインハイブリッドT8 AWDをテストする機会を設けた。日本で売られるボルボのSUVのなかでもっとも大きなモデルである。
ボルボの製品の特徴として、前輪はエンジン、後輪はモーターで駆動するというハイブリッド4WD のシステムがある。今回のモデルも、かつては「ツインエンジン」とも呼ばれたこのシステムだ。
ボルボ・カー・ジャパンが、青森の雪のなかでの試乗会を開いたのは「バッテリーを使いきったら、4WDがいきなり2輪駆動になってしまうのでは?」というユーザーの懸念に答えるためという。もちろん、それは間違いだ。エンジンパワーを活用してバッテリーを充電、それによってモーターを駆動するので4WDは維持される。
Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiXC90のPHV(プラグ・イン・ハイブリッド)システムは、基本的には、まずピュアEVモードで走り、EV走行用のバッテリーがなくなったらエンジンを始動、という仕組みだ。なお、EV走行用とエンジン用のバッテリーはそれぞれある。
比較的容量のおおきなバッテリーを搭載するものの、PHVだから電動走行可能距離は40.6km。山道の上りなど負荷がかかるドライブでは、航続距離はもっと短くなってしまう。
今回の試乗では、まず青森市内を出発して、八甲田山方面へ103号線を通る約30kmをドライブした。青森ではみぞれだったものの、山の入り口はすでに白一色の世界へと変わっていた。
Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasui素晴らしい足まわり
はたして、雪道での不安はまったくない。アクセルペダルへの反応はややゆっくり、しかし鈍感でない。操舵への反応も同様だ。さすが、10月から4月初旬まで雪に見舞われるスウェーデンで生まれたクルマだけある、と、言いたくなる。
変速機に「B」ゲートが設定されているのも、このPHVモデルの特徴だ。ブレーキを強めにかけてそのときの力で電気を起こしバッテリーへと充電するモードである。たしかにアクセルペダルを離したときの減速感が強い。
Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasuiさらに、シフトレバーをBから左右に動かすとで、ブレーキングの強さを手動でコントロール出来るのもありがたい。雪道の下り坂ではたいへん便利だった。
もちろん、EV走行だけがこのクルマの長所ではない。2.0リッターターボエンジンが発する240Nmのトルクにくわえ、モーターがさらに160Nmを上乗せ。したがって5mちかい大きさと、2.3tという車重をまったく意識させないスムーズな加速力だ。
Hiromitsu YasuiHiromitsu Yasui強い硫黄の匂いが温泉好きの心をつよく惹きつける酸ヶ湯では、一瞬止まっただけで、すぐに来た道へとUターン。そのあと、青森から八戸まではドライ路面での高速道路など、XC90をさまざまなシチュエーションで試せた。
青森のドライブでは大きな発見があった。XC90の足まわりのすばらしさだ。道路の段差や道の凹凸などを、ふわりふわりとこなしてしまう。サスペンションシステムに使われているブッシュ類のクオリティゆえだろうか。むかしのプジョー「504」やジャガー「XJ6」を思わせる、私の大好きな乗り心地なのだ。
Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasui素晴らしい乗り心地にくわえ、好きな音楽を聴きながら(乗ったクルマのバウアーズ&ウィルキンス・ブランドのオーディオの音はとてもよかった)のドライブは、間違いなくいい体験になるはずだ。
今回のドライブはかなりの寒さのなかであったものの、強力なシートヒーターやステアリング・ヒーターのおかげで終始快適だったことも見逃せない。上質なナッパレザーを使ったフロントシートには、圧の強いマッサージ機構もあるから、至れり尽くせりだ。
XC90 RechargeプラグインハイブリッドT8の価格は1139万円。決して安くはないものの、メルセデス・ベンツ「GLE」やBMW「X5」などの1000万円オーバーのSUVに引けを取らない魅力的なSUVだった。
Hiromitsu Yasui文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)
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みんなのコメント
シートヒーターも、レベル2で充分身体の芯が暖まります。
タッチパネルも手袋したままで使えるし、滑りやすい路面の走破性も高く安心して踏めます。
是非寒さに強いバッテリーでも世界をリードしてほしい。