第3世代に進化したKTMの「1290スーパーアドベンチャー」の「S」に田中誠司が試乗した。ライバルのドゥカティ「ムルティストラーダV4 S」と比べた印象もリポートする。
90%の部品を新設計
オーストリアのモーターサイクルブランド「KTM」から、『究極のハイパフォーマンスアドベンチャーバイク』を標榜する「1290スーパーアドベンチャーS」の新型が日本市場に導入された。
ロングツーリングに対応できる安定した走行性や積載能力、大容量の燃料タンクを備え、オフロードでの走行も可能なアドベンチャータイプのモーターサイクルは、ヨーロッパやアメリカで以前から高い人気を博してきた。
日本ではライダーの体格が違うことや、高速道路の法定速度が乗用車より低く、有料道路のふたり乗りが認められず、また400cc以上の2輪免許取得が難しい時期が続いた影響もあり、ロング・ツーリングとオフロード走行を組み合わせる文化はなかなか育まれてこなかったが、最近ではアウトドアを楽しむ人々が増えたこともあって、今後の成長が期待されるカテゴリーだ。
1290スーパーアドベンチャーSは、従来型に対して90%の部品を新設計とする抜本的な改良をおこない、フレームやスウィングアーム、リアサブフレームなどを改めた。スイングアームを延長して加速時の安定性を高めると同時に、シート高を11mm低くし、ハンドルやステップの位置を調整可能とするなど、小柄な体型のライダーにもフィットする改良が加えられている。
ボッシュと共同開発されたアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)の標準搭載も大きなトピックだ。基本的には少し前に報告したドゥカティ「ムルティストラーダV4 S」のそれと同じシステムだが、晴天だった前回とは異なり、今回は幸か不幸か大雨が降るテストコースで試すことができた。
ACCの完成度はいかに
KTMに搭載されるACCは、左手ハンドル手元のスウィッチ群の頂点にシステムオン/オフのボタンがあり、グリップを握る親指の部分に加速(+)、人差し指の部分に減速(−)のスウィッチが備わっている。起動と速度の調整はとても簡単だ。
降りしきる雨の中、ヘッドライト下に埋め込まれたレーダーシステムがしっかり機能するのかという不安もあったが、高速道路を模したテストコースの周回路では、先行する乗用車との距離を常に適切に保ってくれた。急に隣の車線から割り込まれるような状況でも適切にブレーキをかけてくれるので、一瞬たりとも不安を覚えるシーンはなかった。
こういう電気じかけは、100分の1秒でも不安があれば「やっぱり機械に頼らず自分で運転しよう」と、怖気づいてしまうものだが、このシステムであれば天候を問わず安心して任せられると思えた。ギアが2~6速に入っていて、車速が30~150km/hにあることが作動の条件だ。
車間0.9秒から2.0秒まで5段階で選べる車間距離や、コンフォートとスポーツのふたつが設定された作動モードなど、細かいことはファミコンのコントローラー状の十字ボタンで設定できる。
コンフォートモードでは、車体の傾きなどを検知してカーブにさしかかったと判断すると減速するのに対して、スポーツモードにおいてはそれが働かず、あくまで前の車両を追従する。この設定は他メーカーのバイクにない、KTMならではのモードであるという。
電子制御システムの恩恵
こうしたACCの設定の細やかさからも想像できるように、1290スーパーアドベンチャーSはパワーユニットとサスペンションの挙動のすべてを十字ボタンで設定できるサイバー・バイクである。
第2世代に進化したというWP社製の前後セミアクティブ電子制御サスペンションは、ストリート/スポーツ/コンフォートの3種類からダンパー減衰力を選べる。リアのプリロードも0%から100%まで11段階で選択可能だ。
“サスペンションプロ”というオプション装備をくわえると、さらにオート/オフロード/アドバンストというモードが加わり、自動的な最適設定も、サスペンションをフロントとリアで個別に設定することも可能になる。
最高出力160ps、最大トルク138Nmという強力なVツイン・エンジンの出力特性は、もちろんこれらの走行モードと連携している。
試乗会では雨天にもかかわらず、いきなり舗装路向けのタイヤのままダート・コースを走らせることになり、職場放棄して逃げ出そうかと思ったが、きわめて精巧なトラクション・コントロール・システムが備わるため、コーナーで車体がある程度出口のほうを向いたと思ったら、勇気を持ってスロットルを開けてやりさえすればバイクは勝手に加速して安定してくれることに気がついた。
相当の上級者であっても、車重200kgを超える大型アドベンチャーバイクを悪路で制御するのは気を遣うらしいし、舗装路向けのタイヤを履いたまま不意に悪路に出くわす可能性もあるわけで、電子制御システムがタイヤの性能を100%近く引き出してくれることは大きなアドバンテージといえる。
ライバル、ドゥカティとの違い
前回、ドゥカティ・ムルティストラーダV4 Sを試したときとはまったく異なるコンディションだったので、両者を比較しての印象をくわしく述べることはむずかしい。
しかしエンジンについて言及すると、やはりドゥカティの1158cc 4気筒とKTMの1301cc 2気筒の違いは明白で、スタートした瞬間のトルクの豊かさではKTMに軍配があがる。
エンジンをトップエンドまでまわしたときの刺激性や、そこへ至るサウンドやトルク特性が変遷する面白さでは170ps V4エンジンのドゥカティが勝る。KTMは、「このエンジンは本当に160psもあるのかな」と思うくらい、高回転まで安定的にトルクを供給してくれるので、雨天でも恐怖を覚えなかった。
足まわりについては、モード変更にともなうサスペンションの挙動の変化幅は、KTMのほうがドゥカティより明白であるように思われた。
シート高849mmのKTMは172cm/70kgのライダーで両足のつま先が着く程度であり、シート高810mmのドゥカティと足つき性はさほど大きく変わらなかった。
それぞれ1時間程度、コンディションも異なる試乗で2車の優劣を見極めるのはまったく困難であるものの、4気筒高回転型エンジンをアルミフレームと組み合わせたドゥカティ(288万円~)と、排気量で勝る2気筒エンジンを鋼管フレームに搭載して価格的に優位(233万円)なKTMを、もしも直接比較できたならば、シーンごとにさまざまな違いが発見できて面白いことだろう。
文・田中誠司 写真・安井宏充(Weekend.)
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