貯蔵・展示品からもメーカー「らしさ」が垣間見える
前回はトヨタ(グループ)が運営する博物館を紹介したシリーズ・国内にある、国産メーカーが運営している自動車博物館ですが、今回は日産、ホンダ、三菱、マツダの4社が運営する自動車博物館を紹介します。この4メーカーは、それぞれ得意とする(してきた)ジャンルが少しずつ異なっていますが、それぞれが運営する自動車博物館も、その特徴を表していて、微妙に雰囲気が違ってきているのも興味深いところです。それでは、日産が運営する座間のヘリテージコレクションから紹介していきましょう。※コロナウィルスの影響により、記事公開時点では休館となっている会場もあります。来場の際は事前に確認下さい
「1日1基しか作れないV10」「打倒タイプRの日産の意地」! 技術屋の魂がこもった市販車の「名エンジン」とその伝説
長い歴史を反映してか、収蔵車両数は国内でも屈指のヘリテージコレクション
日産の座間事業所(座間工場)内に日産の自動車博物館(企業博物館)がは併設されています。ここはかつて日産の座間記念庫と呼ばれ、日産の歴代市販モデルや競技車両を数多く保管していた“保管庫”でした。旅行雑誌には『困ったときの京都・小京都』といって、企画に困ったときは京都や、国内各地にある小京都を特集するケースが多いと聞いたことがありますが、自動車雑誌でも『困ったときのGT-R』というのがあって、ネタに困ったら日産のGT-R特集を組むことが少なくないようです。 ですから、自動車雑誌の編集諸氏にはお馴染みとなっている座間の保管庫でしたが、日産が、広くクルマファンにも公開しようと考えて博物館に整備して誕生したのが日産ヘリテージコレクションです。国内メーカーの中でも屈指の長い歴史を持っている日産だけに、旧くは戦前のダットサンから最新の電気自動車まで、ヘリテージコレクションに収蔵されているクルマの数は約400台と膨大なものになっています。 そしてそのうちの約300台が常時展示されています。競技車両が数多く収蔵展示されているのもヘリテージコレクションの大きな特徴です。 それも60年代の日本グランプリを制した日産R380~383、全日本耐久選手権やル・マン24時間レースで活躍した日産R85V~R92CP、R390GT1/R391など歴代のレーシングスポーツカーだけでなく、サファリやモンテカルロなど世界のラリーで活躍し“ラリーの日産”を印象付けたブルーバードSSSや240Z、バイオレットGT、240RS、パルサーGTI-Rなどのラリー車も数多く展示され、レースファンやラリーファンにとってはある意味聖地となっています。
しばらく訪れてなくて、まだ現車にはお目にかかれていないのですが、個人的には、愛知機械のコニー・グッピーをベースに日産がほぼハンドメイドで製作、こどもの国のアトラクションとして登場したダットサン・ベビイに興味をひかれています。 現在の軽自動車規格よりも二回りほど小さなボディは端正で、2ドアクーペ……気取って言うならフィクストヘッドクーペとしての王道を行くデザインでまとまっています。これ、本当に欲しいなぁ。
【日産ヘリテージ・コレクション(座間記念庫)/Nissan Heritage Collection】◆入館料:無料(ただしWebにて基本1週間前までに要事前予約)◆開館時間:10:00~12:00(40名まで)/14:00~16:30(40名まで)◆休館日:Web申し込み画面のカレンダー参照◆神奈川県座間市広野台2-10-1※入口は「2地区正門」より◆tel:046-298-4355https://nissan-heritage-collection.com/
世界的にも珍しい、歴代のエンジンを集めた日産エンジンミュージアム
各国自動車メーカーの多くが、自社の製品を集めた企業博物館を運営しています。その多くがクルマだけでなくエンジンや諸々のメカニズムを紹介しているのですが、エンジンだけを収蔵展示する博物館は、ちょっと他では見当たりません。そのくらい珍しい存在となっているのが日産の横浜工場のゲストホールに整備された日産エンジンミュージアムです。
横浜工場の一角にあり、1934年(昭和9年)に建築された建屋は、68年(昭和43年)に本社機能が東京・銀座に移転するまで、本社事務所として使用されていた由緒あるもので、2002年(平成14年)に横浜市から「京浜臨海部の発展の歴史を物語る貴重な歴史的建造物として、また07年(平成19年)には経済産業省から「近代化産業遺産」として認定されています。その由緒ある建屋の1階、エントランスホールには1935年式のダットサン14型ロードスターと、それに搭載されていた7型直列4気筒エンジンが並べて展示されていました。
階段を昇って2階の展示ホールに入っていくと、そこはもうクルマ好きにとってはワンダーワールド。グロリアに搭載された国産初の直6OHCのG7型やプレジデントに搭載されていた日産初のV8となったY44E型といったエポックメイキングなエンジンから、スカイラインに搭載されて多くの伝説を作ったS20型やFJ20ET型、RB26DETT型。 さらにはモータースポーツで頂点を目指したR380用のGR8型やグループCカーに搭載されたVRH35Z型やVRT35型。その1基、1基全てにドラマがあり伝説が語り継がれてきた名機たちが、所狭しと展示されています。中にはカットモデルもあり、動弁機構やクランクなどのメカニズムが一目瞭然となるのも確かですが、一ファンとしては、珠玉の名機を切り刻むことに背徳の念を禁じえなかったことを告白しておきましょう。
ちなみに、最近の日産が得意科目としている電動化に関してもMR20DD+RM31型ハイブリッド・ユニットや電気モーターなども展示され、技術の日産をアピールしています。
【日産エンジンミュージアム/Nissan Engine Museum】◆入館料:無料◆開館時間:10:00~16:00(入館は15:30まで、工場非稼働日除く)◆休館日:土曜日、日曜日、GW、夏季休暇、年末年始、祝日は閉館の場合あり◆横浜市神奈川区宝町2 日産自動車株式会社 横浜工場 ゲストホール内◆tel:045-461-7090https://www.nissan-global.com/JP/PLANT/YOKOHAMA/
F1マシンからスクーター、発電機に至るまでホンダのDNAが詰まった博物館
1998年にホンダが創立50周年記念事業の一環として、栃木県茂木町に建設したツインリンクもてぎの一角にオープンしたホンダの企業博物館がホンダコレクションホール。 運営はホンダの子会社で、鈴鹿サーキットの運営も行っているモビリティランドが担当。収蔵品は、以前は鈴鹿サーキット内に保管されていたホンダ製の2輪と4輪に加えて、同社の営業の柱の一つであるパワープロダクツ(汎用製品)も含めて収蔵展示していて、ホンダならではの博物館となっています。
また、基本的に全車を動態保存しているというのもコレクションホールの大きな特徴となっています。一般車両でも動態保存はハードルが引き上げられることになりますが、コレクションホールで多くが収蔵されている競技車両、特に最近のF1マシンは機械部分よりも電子制御の部分が大きく、ホンダの技術者だけでは動態確認テストが難しいという一面も出てきています。それでも多くの収蔵車両を動態保存し、定期的に動態確認テストを行っていますが、このテストも人気コンテンツの一つとなっています。
またこれはトヨタや日産、マツダといった他社の博物館にも協力を仰ぎながら、レーシングカーや市販モデルにスポットを当てた企画展を数多く実施しているのも、コレクションホールの活動の柱となっています。エントランスホールには、4輪のF1GPや2輪の世界GPで勝利を収めたグランプリカーや、ライトウェイトスポーツのホンダSと、生産販売台数で世界最大となったスーパーカブなど、本田宗一郎が開発を指揮したクルマやバイクを背に、彼が残した『夢』の揮毫をあしらったボードが入館者を迎えてくれるから、本田宗一郎に心酔するファンにとっては紛れもない聖地となっています。
個人的には、これまで所有し乗り継いできたクルマたちに想いは募るのですが、中でも一押しは、常設展示ではないのですが、S800をベースに、空力的なオープンボディを架装したコニリオです。元は我が家にいたS800が、突然レーシングスポーツに生まれ変わったものだから、その驚きは半端なかったことを今でも鮮明に覚えています。ホント、びっくりしましたよ。
【ホンダ・コレクション・ホール/Honda Collection Hall】◆入館料:無料(ツインリンクもてぎの入場料・駐車料は必要)◆開館時間:季節や曜日により異なる(要H.P確認)◆休館日:年末年始など除外日あり(要H.P確認)◆栃木県芳賀郡茂木町桧山120-1◆tel.0285-64-0341http://www.honda.co.jp/collection-hall/
砂漠の王者へと続く三菱の歴史に浸る
愛知県岡崎市にある三菱自動車の技術センター内に設置されている三菱オートギャラリーは、同社初のクルマとして1917年(大正6年)に登場した三菱A型から最新モデルまでのクルマとスクーターなど、主要製品を収蔵展示する、三菱自動車の自動車博物館(企業博物館)です。 1989年(平成元年)に開館し、2017年(平成29年)に大幅にリニューアルされました。それまではホール全面に、フォーミュラからパジェロやギャラン、ランサーなどのレーシングカーも含めて多くのクルマやエンジンが展示されていましたが、このリニューアルを機に一角に喫茶スペースを設けるなど、より楽しめる博物館へと進化しています。
もっとも、スペースが狭くなり、さらに展示スペースをゆったりと確保したことで、展示車両の台数が少なくなったのは少し残念ですが、それでも三菱の源流とされる1917年式A型や35年式に誕生した国内初のフルタイム4WDのPX33などのレプリカやシルバーピジョンと命名された戦後のスクーター、さらに初期の3輪軽トラック、そして4輪乗用車として初の量販車となった三菱500まで、三菱自動車の前身だった新三菱重工業(中日本重工業から改名)が三菱日本重工業(東日本重工業から改名)や三菱造船(西日本重工業から改名)と合併する以前の、三菱自動車の黎明期の、製品は展示されていました。
さらに三菱のモータースポーツを象徴するラリーレイドに関しては、ベースとなったパジェロや、それをベースに仕立てられた競技車両など数多くの展示車両が並び、三菱ファンやパジェロ・ファンにとっては必見の博物館となっています。個人的には、リニューアル以前に展示してあったコルトF2がお気に入りでした。またいつの日か、入れ替えリニューアルを楽しみにしています。
【三菱オートギャラリー/Mitsubishi Auto Gallery】◆入館料:無料◆開館時間:9:00~12:00/13:30~16:30(要予約)◆休館日:土曜日、日曜日、5月・8月・年末年始に連休あり◆愛知県岡崎市橋目町字中新切1番地◆tel.0564-31-3100https://www.mitsubishi-motors.com/jp/corporate/aboutus/facilities/autogallery/
工場見学の一環で訪れるマツダの自働車博物館
広島市のお隣、府中町にあるマツダ本社工場の一角に設けられ、工場見学とセットで訪れることができるマツダの自動車博物館(企業博物館)がマツダミュージアムです。
本社工場のエントランスでツアーバスに乗り込み、ツアーコースに沿って工場を見学。そしてツアーはその後、全員でマツダミュージアムを訪れる行程となっています。ツアーの出発を待つ間に、本社工場のエントランスに展示されているクルマ……以前訪れた時にはコスモスポーツがエントランスホール中央に展示してありましたが、こちらは時期によって適宜、展示車両は変更になるようです。
さて博物館の紹介に戻りましょう。マツダは、まだ東洋工業を名乗っていた戦前にオートバイを経て3輪トラックで自動車業界に参入していますが、マツダミュージアムには1935年式3輪トラックの松田号も展示されています。 そして本格的に4輪進出を果たすことになったのは戦後からで、嚆矢となったのは1960年(昭和35年)に登場したR360クーペでした。モチロン、マツダミュージアムにも、ホワイトのボディにルーフがブルーに塗られたツートンカラーの1台が展示されていました。
またR360クーペから、より本格的な乗用車へと進化して1962年(昭和37年)に登場したキャロルですが、ミュージアムには600ccエンジンを搭載して普通車登録となったキャロル600で、63年(昭和38年)にマツダが自動車生産100万台を達成したことを記念した、ゴールドに塗られた記念車が展示されていました。他にもファミリアやカペラ、ロードスター、RX-7など市販のクルマが展示されるとともに、RX-8を使ってクルマのメカニズムを紹介する展示コーナーもありました。
個人的に最も刺さったのは71年式の3輪普通トラック、T2000でした。確か今世紀になってからでしたが、国道2号線を東広島から広島に向かう下り坂を走っていた時、現役で働いている(もしかしたらT1500 かT1100だったかも)を見た経験があるんです。1957年(昭和32年)の誕生ですからほぼ同い年で、頑張ってるなぁと感じたことを思い出したのが、ミュージアムでの最大の印象でした。
【マツダミュージアム/Mazda Museum】◆入館料:無料◆開館時間:日本語案内(13:30~)英語案内(10:00~)◆休館日:土曜日、日曜、GW、お盆、年末年始、企業休業日◆広島県安芸郡府中町新地3-1◆tel.082-252-5050http://www.mazda.co.jp/philosophy/museum/
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まだ置いてあるかは知らん。