マツダらしい容姿 旋回性を高めるG-ベクタリング
多くの自動車メーカーとは異なる、独自路線を選ぶ傾向があるマツダ。中型ファミリーSUVのCX-5も、例外ではない。実用性に優れ、英国でも複数のトリムグレードを用意するが、パワートレインのラインナップはライバルと一線を画す。
【画像】「独自路線」ゆえの魅力 マツダCX-5 競合サイズにあるSUVと比較 全150枚
英国市場に用意されるのは3種類。164psの2.0Lか196psで2.5Lの自然吸気ガソリンと、186psで2.2Lのターボディーゼルだ。2024年では、珍しい3択といっていい。
初代CX-5の登場は2012年。SUVブームの波にうまく乗り、6年間で150万台という大ヒットを記録した。そのため、2017年に登場した2代目への期待は大きい。プラグイン・ハイブリッドが設定されないにも関わらず。
英国での主なライバルは、フォルクスワーゲン・ティグアンやトヨタRAV4、フォード・クーガなど。セミプレミアム・ブランドのポジションが狙われつつ、お手頃な価格設定が強みといえる。
スタイリングは、現在のマツダらしいもの。ヘッドライトは細く、クロームメッキのフロントグリルが表情を引き締める。無駄がなく、滑らかにカーブを描く面構成が、高級感を漂わせる。
CX-5の電子技術で触れたいのが、Gベクタリング・コントロール。エンジンとトランスミッション、シャシーを統合制御し、ボディの傾きやエンジンの出力に調整を加えることで、滑らかなコーナリングを実現するというもの。
自動的に荷重移動が生まれると、マツダは説明している。その結果、グリップやステアリング、スタビリティが最適化されるそうだ。
価格以上に内装は上質 トルクフルな2.2ディーゼル
ドアを開き運転席へ座ると、座面の位置はこのクラスのSUVらしい高さ。シートの調整域は広く、快適な姿勢を探しやすい。
ダッシュボード上部には、10.25インチのインフォテインメント用モニター。ライバルと比較するとサイズは小さく、グラフィックにはやや旧世代感が漂う。それでも、メニュー構造は合理的。アップル・カープレイとアンドロイド・オートには対応する。
ミドルグレードを選ぶと、ボーズ社製の10スピーカー・オーディオが実装される。駐車時に有用な360度カメラは、トップグレードのみの設定だ。センターコンソールは、肘掛けにちょうどいい高さ。内装の素材は、価格から想像するより上質だろう。
リアシート側の空間は、フォルクスワーゲン・ティグアンより僅かに長いホイールベースが活かされ、大人でもゆったり過ごせる。2段階にリクライニングできる、背もたれもうれしい。荷室容量は、トノカバー下で506Lある。
さて、発進させてみよう。スカイアクティブGを名乗る2.0L 4気筒ガソリンは、CX-5にはやや物足りない。活発に加速させるには、しっかり右足を傾けることになり、パワートレインの最有力にはならないだろう。自然吸気で回転は滑らかだが。
SUVにはトルクが欲しいとお考えなら、186psの2.2Lターボディーゼルが好適。2000rpmで45.8kg-mを発揮し、粘り強く頼もしい。ディーゼルの割にサウンドも目立たず、高負荷時にはスポーティな唸りを響かせてくれる。
操縦性に重点 回頭性は驚くほど精彩
2.5Lの4気筒ガソリンがトップユニットになるが、ノイズがやや目立つ。6速ATのギア比がもう少し長ければ、巡航時の洗練度を高められるように思う。CVTを積むライバルより、加速時の車内はずっと穏やかだけれど。
2.0Lと2.2Lの英国仕様には、6速マニュアルが用意されている。クラッチペダルは重めながら、シフトレバーはショートストローク。時代遅れの選択かもしれないが、英国編集部では推さずにはいられない。
ステアリングホイールやペダルといった操縦系の重み付けには統一感があり、反応は正確。マツダは「人馬一体」を掲げているが、操縦性に重点が置かれていることは間違いないだろう。
全高があり車重も小さくない中型SUVでありながら、CX-5の回頭性は驚くほど精彩。シャープとまではいえないものの、ステアリングの反応速度や精度で、多くのライバルより優れている。
乗り心地は、このクラスでは硬め。速度域の低い市街地や大きめの隆起部分を通過すると、もう少ししなやかでも良いかな、と感じるドライバーはいるだろう。それでも、高速走行時の減衰特性は良好で、細かな入力もしっかり吸収してくれる。
可変式ではないダンパーで、巧みなコーナリングと悪くない乗り心地を両立できている。絶妙な落とし所といえるが、アダプティブダンパーが支えるティグアンの方が、全体的な快適性で優れることも否定はできない。
燃費も悪くない 周囲とは少し違う魅力
高速コーナーへ突っ込んでみると、サスペンションがボディロールを抑え込む。しかし限界領域へ近い速度域では、高めの重心位置と小さくない質量にこらえきれず、大きく傾いてしまう。
その間、タイヤの負荷も高まるが、スタビリティ・コントロールはボディの大きな動きへ対応しきれない印象。トラクション・コントロールは、完全なオフにはならない。大きな荷重移動で旋回性が急激に高まる場面があるため、妥当な設定といえる。
同じ条件下での安定性では、ティグアンの方が上手だ。CX-5の方が、サイズは僅かに大きいが。
燃費は、2.2Lディーゼルで、今回の試乗の平均値が19.1km/L。かなり優秀な数字といっていい。2.0Lガソリンは、高速道路を巡航すれば15.9km/L程度を得られる。平均でも13.5km/L前後で、車格を考えれば悪くない。アドブルーを補充する手間もない。
登場から7年が過ぎた、2代目CX-5。この間にライバルは次期モデルへ交代するなど、取り巻く環境は厳しいといえる。だが、周囲とは少し違うチョイスを好むなら、まだまだ魅力的なファミリーSUVだといっていい。
確かに、クラス最高の完成度とはいえない。それでも、特にターボディーゼルはエネルギッシュだし、正確な操縦性は好ましい。
◯:高級感があり、ゆとりある車内空間 軽快で積極的な動的特性 ガソリンの前輪駆動も、ディーゼルの四輪駆動も選べる
△:走行時のCO2排出量は小さくない 稀に良くない乗り心地 ライバルたちの方が新しい
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