電動化、そしてBEV(電気自動車)を積極的に展開しているメルセデス・ベンツ。ついにフラッグシップBEVのEQSが本国でアンベールされ、欧州で試乗の機会が設けられた。ドイツ車に精通する、元ドイツ在住の国際モータージャーナリスト竹花寿実が、スイスの山岳地帯をドライブして感じたものとは?
今までのBEVとは完全別モノ
メルセデス・ベンツは、ヨーロッパの一部の国でワクチン接種がある程度進み、新型コロナウイルスの感染状況が改善したことを受け、ついに国際取材イベントを解禁。7月に第1弾としてスイス・チューリッヒで新型バッテリーEVであるEQSの国際試乗会を開催した。
【画像ギャラリー】インパネの大部分を占める巨大スクリーンに驚き! メルセデス・ベンツ EQS(全16点)
EQSは、メルセデスの電動化モデルに特化したサブブランド「EQ」におけるSクラスに相当する最上級ラグジュアリーサルーン。これまでにもEQCやEQA、EQB(日本未導入)といったBEVをリリースしているが、これらとEQSの間には、大きな違いがある。
それは、「ICE(エンジン)搭載モデルとプラットフォームを共用していないEV」である点だ。EQSは、「MB・EA」と呼ばれる新開発の電気自動車向けモジュラーアーキテクチャーを初めて採用したモデルなのである。
「V297」のコードネームを持つEQSは、BEV専用プラットフォームを使用することから、現時点でもっとも理想的なBEVを目指して開発されたことがわかる。ICE車ベースのBEVも、EQCなどに乗ってみるともちろん悪くはないのだが、パッケージングや衝突安全性、車両重量、エアロダイナミクスなどさまざまな面で妥協しなければならない部分が出てくる。BEVにはBEVの理想の設計手法があり、メルセデスはEQSでそれを追求したのだ。
インパネ一面スクリーン!結果、EQSは3210mmという長いホイールベースの間に107.8kWhもの大容量リチウムイオンバッテリーを搭載。車両重量は約2.5トンに抑え、Cd値は量産車過去最高の0.20を実現。WLTPで最大780kmもの航続距離を達成したのである。780kmというと、東京から西方向なら広島県まで行ける距離だ。
チューリッヒで話を聞いたエアロダイナミクス担当エンジニアによれば、航続距離の拡大はもっとも重要なミッションだったそうだ。軽量化とドラッグ低減は必須で、そのためにもBEV専用プラットフォームは欠かせなかったという。
こうして生み出されたEQSは、見た目からとても個性的だ。「ワン・ボウ(ひと張りの弓)」と呼ばれるモノフォルムのファストバックデザインは、5ドアボディという点も含めてラグジュアリーカーとしては異質だが、実車は大型なボディサイズもあってかなり重厚感がある。
インテリアは、Sクラスと呼ぶにふさわしい高級な仕立て。シートはSクラスよりサイドサポートが小さめで、座面も若干小ぶりな印象だが、座り心地はとても上質。ヘッドレストにはフワフワなクッションも付いている。後席は十分に広いが、ホイールベースがSクラスロング並みに長いわりにはそれほどでもない。
開放感は抜群だ。長いフロントウインドーとメルセデス初の片側5枚のサイドウインドー、パノラミックスライディングルーフ(オプション)のおかげで室内はとても明るく、良好な視界を実現。この点ではSクラスより上かもしれない。
もっとも目を引くのはインパネ全体に広がる巨大スクリーンだ。これは「MBUXハイパースクリーン」と呼ばれる最新世代のインフォテインメントシステムで、ドライバー正面の12.3インチTFTディスプレイと、中央の17.7インチOLED(有機EL)タッチディスプレイ、助手席正面の12.3インチOLEDタッチディスプレイを1枚のゴリラガラスで覆って一体化させたものだ。
MBUXのシステム自体も、AIによる高度な学習機能により、必要な機能が必要な時に表示される「ゼロレイヤー」を実現。完全に無階層ではないが、中央のディスプレイに必要に応じて各機能が必要なときに表示されるので、とても直感的に使える。運転中でも操作に迷うことがなく、もちろん「ハイ、メルセデス」の一声で起動する会話形式の操作も優秀。現時点で世界最高のインフォテインメントと言っていい。
あのSクラスより静か
今回は2022年秋に日本導入予定の後輪駆動モデル、「EQS 450+」をメインに試乗したのだが、まさにラグジュアリーサルーンと呼ぶに相応しい上質な走りが堪能できた。
伝統のコラム式シフトセレクターをDレンジに入れてアクセルペダルを踏み込むと、高級車らしくジワッと、それでいてスゥーっと軽くクルマが転がり出す。低速域では毛足の長い絨毯のように極めて優しい乗り心地で、ステアリングフィールも軽くビロードのような滑らかさ。これぞメルセデスの最高級モデルといった運転感覚が味わえる。ホイールベースは長いが、後輪が最大10度(標準仕様は4.5度だが、購入後でもOTA※で10度に変更可)切れるリヤアクスルステアリングのおかげで、取りまわしはまったく苦にならない。
※Over The Air=無線通信
アウトバーンではとてもフラットな乗り心地で直進性は抜群。優れた空力性能が風切り音を低減し、静粛性はSクラス以上と感じた。その分、ブルメスター サラウンドサウンドシステムのクオリティの高さを、かつてないほど楽しむことができた。これを目当てにEQSを選ぶ人がいてもまったく不思議ではないと思えるほどだ。
ワインディングロードでは、後輪駆動モデルらしくスッキリとしたステアリングフィールを感じながら、車重が2480kgもあるクルマとはおよそ思えないパワフルで軽快な走りが楽しめる。ハンドリングはさすがにややゆったりだが、一貫して弱アンダーステアなので、正確に狙った走行ラインをトレースできる。
走行モードをスポーツにすると、標準装備のエアサスペンション「AIRMATIC」に組み合わされるADS+ダンパーが引き締まり、電気モーターやリダクションギア、デフをひとまとめにした、リヤアクスルに備わる電動パワートレイン「eATS」が、333馬力/568Nmをフルに発揮しダイナミックな加速を披露。シフトパドルで3段階に調整出来る回生ブレーキを駆使すれば、スポーティな走りも楽しめた。
2日間、約400kmを試乗して、EQSは「最善か無か」というメルセデスの哲学を体現した、極めて完成度の高いラグジュアリーBEVだと感じた。テスラはもちろん、電動化を進めている世界の自動車メーカーは、その出来映えに驚くはずだ。
<文=竹花寿実>
■450+欧州仕様(後輪駆動・ー)
主要諸元
【寸法・重量】
全長:5216mm
全幅:1926mm
全高:1512mm
ホイールベース:3210mm
車両重量:2480kg
【モーター・性能】
種類:永久励起同期電動機
最高出力:245kW(333ps)
最大トルク:400Nm(40.8kgm)
駆動用バッテリー種類:リチウムイオン
駆動用バッテリー電力量:107.8kWh
一充電走行可能距離(WLTP基準):780km
最小回転半径:6.0m
乗車定員:5人
【諸装置】
サスペンション:前後マルチリンク
ブレーキ:前後Vディスク
タイヤ:前後265/40R21
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みんなのコメント
こんな高いEV車は乗らない方が良い。
品質向上と共に生産性が上がり価格が
落ち着いてからが良い。
いま買っても数年後には必ず後悔する。
車重が2.6トンにも達していること