デザイン面に留まるフェイスリフト
text:James Disdale(ジェームス・ディスデイル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
観音開きのバックドアを備えるミニ・クラブマンがフェイスリフトを受けた。フォルクスワーゲン・ゴルフのライバルでもある。先日ジョン・クーパー・ワークス(JCW)版の試乗をしたが、今回はクーパーだ。
エンジンまで変わったJCWと異なり、変更は控えめ。魅力を高めるために、ボディ内外でデザイン変更を受けたことが中心だ。装備やオプションの変更も加えられた。気づくのは、ミニ・クラブマンを以前から好きだった人に限られるかもしれない。
フロントグリルは大型化されより主張が強くなった。リアバンパーやドアミラーのデザインも変更を受け、フォグライトには丸いコロナリング状のランニングライトを内蔵。テールライトにはユニオンジャックのグラフィックがあしらわれている。
新しいボディ色とアルミホイールも追加になった。トリムグレードとしては、英国の場合はエクスクルーシブとクラシック、スポーツが用意される。試乗車はエクスクルーシブで、18インチのアルミホイールを履いている。
インテリアでの変更は、内装材に変更を受けたほか、印象的なユニオンジャックの装飾がヘッドレストに追加できるようになった。全体的に見た目の品質も良くなり、仕立てのソリッド感も高められている。
依然として丸み帯びたやや扱いにくいボディ形状のクラブマン。だが前回試乗したホットなJCW版よりも、上質でよくまとめられているように感じた。
エンジンは従来どおり1.5Lの3気筒
このクラスとしては、広々としたハッチバックというわけではないものの、車内空間は充分に広い。観音開きのバックドアを開けば、使いやすい形状の360Lの荷室が現れる。
クラブマンをオーナーの好みで内外装を組み合わせていくと、無限とも呼べそうな選択肢が用意されている。従来どおりのオプション数は多彩だが、もはやミニにとっては半ば当たり前。
ボディ色やホイールの変更はもちろん、数種類のファブリックやエキゾチックなレザー内装も用意。アダプティブ・マトリックスLEDヘッドライトも今回選択できるようになった。
オプションを選び出すと、思わず夢中になってしまう。ミニ・クラブマン・クーパーの価格は2万4850ポンド(330万円)だが、試乗車には少なくないオプションが装備され、価格は3万5000ポンド(465万円)近くにまでなっていた。
ボディの内側に搭載されるエンジンは、従来どおり135psの1.5L 3気筒ガソリン。見た目以上に変更点は小さい。英国の場合6速MTが標準装備で、前輪駆動となるが、試乗車にはオプションの7速デュアルクラッチAT(DCT)が組み合わされていた。日本では7速DCTが標準となる。
新しいクラブマンだが、運転した感覚としてはフェイスリフト前と比べて驚きはない。Cセグメント・カテゴリーに属するファミリー・ハッチバックとしては少し異質。普通とは異なるスタイリッシュで楽しい選択肢として、しっかり個性的な存在感を保っている。
比較的おとなし目のエンジンを搭載したクーパーという印象はあるが、ラインナップの中でも最もバランス良くまとまっている。クーパーと聞くとスポーティなイメージを想像する読者も多いと思うが、活発ではあるものの、俊足ではない。
ミニらしくレスポンスの良いコーナリング
3気筒ガソリンエンジンは鋭く吹け上がるタイプではないが充分にスムーズで、回転数を上げていくと心地よいサウンドを聞かせてくれる。低速トルクも充分にあり、MTなら1速飛ばしでシフトアップしていっても、充分な加速力を引き出す力がある。
一方で7速DCTは、良いところだけではない。基本的には変速は素早く滑らかだが、バイパスのジャンクションや交差点を抜けてアクセルペダルを踏み込む際、稀に期待通りの変速をしてくれないことがある。
マニュアルモードで変速すれば、それも解決する。シフトノブを手前に引けばシフトアップ、奥側に倒せばシフトダウンで、モータースポーツでは一般的な向き。シフトダウン時には、エンジンの回転数を自動的に合わせてくれるブリッピング機能も付き、スムーズな走行を助ける。
シャシー周りも特に変更はなく、コーナリングは得意科目。ステアリングの操舵感はクイックで重みもしっかりあるタイプ。時折キックバックとトルクステアを感じ取る場面もあるけれど。
クルマは即時に向きを変え、ドライバーのお尻を中心に回転していくような印象がある。リアタイヤもうまく負荷を受け持ってくれる。車重はそれなりにあり、フロントタイヤが鳴き出してアンダーステア気味になる領域には意外とすぐに到達する。
グリップ抜けは漸進的で、スロットルを僅かに戻せばフロントノーズをラインに戻すことも難しくはない。だがフォルクスワーゲン・ゴルフやフォード・フォーカスのように、コーナーを流れるように抜けていくクルマではない。
クーパーはクラブマンのスイートスポット
ステアリングに伝わるやや粗さが残る感触と、硬めのサスペンションは過度に活発なドライビング体験は、いかにもミニらしいともいえる。ドライバーの気分と道路とのフィーリングが合えば、楽しくクラブマンを走らせられるだろう。
18インチのホイールを履いていることもあってか、乗り心地も従来どおり。舗装状態が酷いと落ち着きがなくなり、跳ねるような場面がある。酷いくぼみなどでは、サスペンションからドスンと響くことすらある。
反面、滑らかな高速道路のような路面では、落ち着いた乗り心地を示してくれる。メカニカルノイズや風切り音もしっかり遮音できており、上質に仕上がっていると感じた。
フェイスリフト前にクラブマンを見送ったドライバーが、フェイスリフト後に考え直すほどの変更は受けていない。ゴルフ並みの堅実性はないし、路面を選ばない洗練性や落ち着きも備わっていない。
だがミニ・クラブマンはゴルフのように合理性で選ぶタイプではない。他にはない個性的なデザイン、無数の組み合わせが用意されたオプション。ファミリーカーとしての利便性も備え、それだけで契約書にサインする理由としては成り立つだろう。
素のクーパーの魅力的な価格とエッジの穏やかな走りは、クラブマンに飛び込みたいと考える人数を増やすのに充分な内容だろう。
ミニ・クラブマン・クーパー・エクスクルーシブのスペック
価格:2万4850ポンド(330万円)
全長:4253mm
全幅:1800mm
全高:1441mm
最高速度:204km/h
0-100km/h加速:9.2秒
燃費:18.5-18.8km/L(WLTP複合)
CO2排出量:120-122g/km
乾燥重量:1350kg
パワートレイン:直列3気筒1499ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:135ps/4500-6500rpm
最大トルク:22.3kg-m/1580-4100rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック(DCT)
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