ボンネット越しの眺めが壮観な300 SEL
今回ご紹介するゴールドのジェンセンFFは、マーティン・リッチー氏がオーナーの1969年式Mk I。15年前に初代オーナーから購入し、コンクール・コンディションが保たれている。
【画像】6.3L V8エンジン メルセデス300 SEL 6.3とジェンセンFF 同時期の名車 ミウラと2002も 全71枚
他方、右ハンドルのメルセデス・ベンツ300 SEL 6.3は約700台が生産された。今回のクルマは1970年式で、コストの掛かるエアサスペンションのリビルドを最近受けている。SLショップという、英国のクラシックカー・ディーラーが販売中だ。
運転席に座ると、FFはドライバーを取り囲むように心地いい。まさに、着る感じ。300 SEL 6.3は後ろに長く、1人で乗っていると少し寂しい。どちらもインテリアは豪華で、ガラスエリアが大きく前方だけでなく全方向の視界に優れる。
300 SEL 6.3のボンネット越しの眺めは壮観。巨大なステアリングホイールの奥に、端正なダッシュボードが配され、フロントガラスの両サイドからワイパーが伸びる。右膝にあるレバーは、エアサスの車高調整用だという。
FFのダッシュボードやセンターコンソールは飛行機的。ランボルギーニ・ミウラもこんな雰囲気だった。沢山のスイッチが並び、8トラック・カセットデッキが時代を物語る。中央の丸いセレクターは、後期型では省かれたリアサスペンションの調整用。
パワーウインドウは両車に装備されるが、エアコンは300 SEL 6.3だけ。FFは四輪駆動のトランスファーがあり、センタートンネルが大きい。
今でも猛烈に感じる勢いで加速する
300 SEL 6.3のボンネットを開くと、巨大な6.3L V型8気筒エンジンが姿を現す。前端に見える小さなポンプは、エアサスのもの。素晴らしい乗り心地を叶えているものの、メカニズムとして弱点でもあった。
FFのフロントに載るのは、クライスラー社製の6.3L V型8気筒。4バレル・キャブレーターを覆う、大きなエアクリーナー・ボックスで殆ど見えないけれど。アイドリング時は驚くほどスムーズで、メルセデス・ベンツのユニットより上品。
ゆっくりレバーを傾けDを選ぶ。クリーミーに3速ATがギアをつなぎ、FFは勇ましく加速する。カタログ上の最高出力は253psに対し329psでジェンセンが勝るが、200km/h前後までの加速は3秒ほどメルセデス・ベンツに遅れる。確かに若干マイルドだ。
車重が約100kg重いことや、四輪駆動システムの内部抵抗などが関係している。ドイツ人の馬力計測が、より正直だったということも大きいと思う。
サウンドも個性的。300 SEL 6.3は威圧的で金属音が大きい。FFはドロドロと内蔵に響く低音が強い。
300 SEL 6.3の4速ATは、発進時に2速が選ばれる。ドライブトレインを保護するためだろう。アクセルペダルを完全に倒すと1速へ落とせる。高価なミシュランXWXタイヤから、僅かに白煙が立ち上がる。
レブリミットは5100rpmと低いものの、ボッシュ社の機械式インジェクションが盛大にガソリンを噴霧するから、アクセルレスポンスは想像以上に鋭い。3速へキックダウンさせると、今でも猛烈に感じる勢いで速度を上げる。
四輪駆動が生む優れた旋回性とトラクション
きついカーブでは、リアタイヤのトラクションを失わせるだけのトルクが湧き出る。乾燥路でも、雷鳴を轟かせながら派手なテールスライドを披露する。4速ATの変速も軽快。華奢なセレクターを操作すれば、3速を選んでエンジンブレーキもかけられる。
操舵感も、300 SEL 6.3は想像以上に好ましい。コーナーへ突っ込むとボディがロールし、フロントの重さが伝わってくるが、エアサスペンションのセルフレベリング機能が効果的に水平を保とうとしてくれる。ブレーキのバランスも良い。
メルセデス・ベンツらしく、身のこなしは洗練されている。FFのフロントがコイルでリアがリーフというスプリングの組み合わせでは、叶えようがない。といっても、乗り心地が悪いわけではない。肉厚なタイヤと車重が功を奏し、安定している。
FFで印象的なのが、自慢の四輪駆動システムがもたらす優れた旋回性とトラクション。操縦性にまとまりがあり、余計なクセも感じられない。
正確に反応するステアリングホイールを回しアクセルペダルを傾けると、リアタイヤがフロントタイヤへ追従し、グリップ力にも余裕を感じる。操舵感は軽すぎるものの、慣れれば目的地まで安楽に飛ばせるだろう。1967年のモデルとして、感心するほど。
車載技術が急速に進むなかにあって、当時の自動車評論家は、公道用モデルに複雑なメカニズムを採用することへ疑問を呈した。FFは最後まで認められなかった。
抗し難い英国車としての重要性や希少性
ジェンセンのFFとメルセデス・ベンツの300 SEL 6.3は、異なる技術的な哲学で設計されている。同時に、大人4名が安全で高速に長距離を移動できるという能力で共通している。スタイリングやドアの枚数は違っていても。
1960年代後半から1970年代初頭にかけての、傑作といっていい。近年の取引価格が近似しているという事実は、同等に価値が評価されていることを示している。状態の良い例も、同等に少ない。
25年ほど前までは、300 SEL 6.3は安かった。あまり冴えない状態なら、2000ポンドで購入することができた。とはいえ、今回の例のように仕上げるには、小さくない予算と手間が必要になったことも間違いなかった。
もし充分な予算を準備できるなら、今の筆者はジェンセンFFの魅力に抵抗し難い。英国車としての重要性や希少性を、無視することはできないだろう。
協力:SLショップ、ポール・ルイス氏、ジェンセン・オーナーズクラブ
メルセデス・ベンツ300 SEL 6.3とジェンセンFF 2台のスペック
メルセデス・ベンツ300 SEL 6.3(1968~1972年/英国仕様)のスペック
英国価格:7273ポンド(新車時)/10万ポンド(約1650万円)以下(現在)
販売台数:6526台
全長:5080mm
全幅:1808mm
全高:1408mm
最高速度:215km/h
0-97km/h加速:7.1秒
燃費:5.3km/L
CO2排出量:−
車両重量:1724kg
パワートレイン:V型8気筒6332cc自然吸気SOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:253ps/4000rpm
最大トルク:50.9kg-m/2800rpm
ギアボックス:4速オートマティック
ジェンセンFF(1967~1971年/英国仕様)のスペック
英国価格:6857ポンド(新車時)/10万ポンド(約1650万円)前後(現在)
販売台数:320台
全長:4851mm
全幅:1778mm
全高:1346mm
最高速度:210km/h
0-97km/h加速:7.7秒
燃費:3.9-5.0km/L
CO2排出量:−
車両重量:1820kg
パワートレイン:V型8気筒6276cc自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:329ps/4600rpm
最大トルク:58.6kg-m/2800rpm
ギアボックス:3速オートマティック
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