10月9日、2021シーズンFIM世界耐久選手権(EWC)の全4戦を戦い抜いたヨシムラSERT Motul(グレッグ・ブラック/チャビエル・シメオン/シルバン・ギュントーリ組)がシリーズチャンピオンを獲得した。今季ル・マン24時間とボルドール24時間で2勝を挙げたヨシムラSERT Motulのタイトル争いを振り返る。
ヨシムラSERT Motulは、オートバイの部品・用品の開発、製造販売を行っている傍ら、レース活動も行っている日本の名門チーム『ヨシムラ』と、1980年に設立されたフランスのEWCレギュラーチームである『Suzuki Endurance Racing Team(SERT)』がタッグを組み誕生した新チームであり、2021年からEWCに参戦している。
ヨシムラSERT Motulがチャンピオン獲得。BMWモトラッドは初優勝、YART-YAMAHAは0.070秒差で2位/2021EWC第4戦モスト6時間
スズキのファクトリーチームとして立ち上げられ、体制も一新されたことでタイヤはダンロップからブリヂストンにスイッチ。ゼッケンはSERTが昨シーズンにタイトルを獲得したため『1』を掲げるが、SERTのマシンは引き継がずにヨシムラに所属する渡辺一樹が開発したスズキGSX-R1000Rを使用した。
また、ダミアン・ソルニエ氏がチームマネージャー、加藤陽平氏がチームディレクターを務め、ライダーはブラック、シメオン、ギュントーリの3人がレギュラーライダーとしてチャンピオンを目指して戦った。
開幕戦は6月12~13日にフランスのル・マン-ブガッティ・サーキットで行われた第1戦ル・マン24時間耐久ロードレースだ。ポールポジションはYART - Yamaha Official Team EWC(YARTヤマハ)に奪われたものの、2番手からスタートを切ると約10時間経過時点までYARTヤマハと同一周回のバトルを繰り広げる。
しかし、YARTヤマハがエンジントラブルでリタイアする。その戦いがなくともスタートから約5時間から24時間の約19時間もの間トップを譲ることなく、8時間と16時間終了時点での中間ポイントも含め決勝で獲得できるフルポイントを獲得。完全勝利を収めてヨシムラのマシンが24時間耐久で戦えることを証明して見せた。
これで、ヨシムラSERT Motulは64ポイントを獲得しチャンピオンシップリーダーとなる。また、48ポイントのWEBIKE SRC KAWASAKI FRANCE TRICKSTAR(SRCカワサキ)とは16ポイント差、44ポイントのBMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM(BMWモトラッド)とは20ポイント差、36ポイントのF.C.C. TSR Honda France(TSRホンダ)とは28ポイント差、32ポイントのVRD IGOL EXPERIENCESとは32ポイント差をつけた。
続く戦いは7月17日にポルトガルのエストリル・サーキットで行われた第2戦エストリル12時間耐久ロードレースだ。この大会では3番手からスタートすると、ホールショットを奪い上位争いを演じる。
スタートから約2時間30分には首位を奪うが、20分後にギュントーリが転倒してポジションダウン。7時間が過ぎると5番手まで順位を回復させたが、次はシメオンが他車に追突して転倒を喫する。2度の転倒で順位を落とし、中間ポイントは獲得できずに総合17位(EWCクラス12位)でフィニッシュした。
予選の3ポイントと決勝の9ポイントの合計12ポイントを獲得したものの、トップは87ポイントのSRCカワサキ、2番手は82ポイントのTSRホンダ、3番手は80ポイントのBMWモトラッド、そしてヨシムラSERT Motulは76ポイントで4番手に後退、VRD IGOL EXPERIENCESが61ポイントで5番手となった。
第3戦は9月18~19日にフランスのポール・リカール・サーキットで行われた第3戦ボルドール24時間耐久ロードレースだ。ヨシムラSERT Motulはここで初めてのポールポジションを獲得する。
決勝ではライバルたちとレース折り返しの12時間目までトップ争いを繰り広げるが、ランキングトップのSRCカワサキ、BMWモトラッド、ERC Endurance Ducati、TSRホンダ、YARTヤマハなどが続々とトラブルでリタイアしていく。
しかし、ヨシムラSERT Motulは一度転倒がありながらもレース後半はラップリーダーを維持して2度目の24時間レースで勝利。予選はトップ、決勝は8時間と16時間終了時点でもトップだったため中間ポイントも含め、週末を通してフルポイントを獲得した。
3戦終了時点で、141ポイントを稼いだヨシムラSERT Motulは一気にリードを広げた。そして、最終戦では予選と決勝で最大50ポイントとなるため、チャンピオン争いは105ポイントで2番手のVRD IGOL EXPERIENCESとの2チームに絞られた。そして、3番手からは89ポイントのTSRホンダ、87ポイントのSRCカワサキ、84ポイントのBMWモトラッドとなり、こちらは王者獲得の資格はなくなった。
10月9日にチェコのオートドローム・モストで迎えた最終決戦となる第4戦モスト6時間耐久ロードレースでは、3番手からスタートすると常に上位を維持。シメオンがあわや転倒寸前になる場面もあったが、常に3番手付近を走行して3位でフィニッシュした。
そして、ヨシムラSERT Motulは全4戦のレースで総走行距離は10,138km、2171ラップを走破して、合計175.5ポイントで初となるチャンピオンを獲得した。タイトル獲得は、Suzuki Endurance Racing Team(SERT)としては2連覇で通算は17度とEWC最多、スズキとしては通算20度目となった。
また、総合2位は133ポイントのBMWモトラッドで42.5ポイント差、総合3位は115.5ポイントのSRCカワサキで60ポイント差、VRD IGOL EXPERIENCESはトラブルに見舞われたため105ポイントでシーズンを終えている。
1978年に初開催された鈴鹿8耐の第1回大会と、1980年、2007年、2009年の4度の優勝を経験したヨシムラ。1983年にEWCのタイトルを初めて獲得し、2019-2020シーズンにも制覇してシリーズ最多の16度のチャンピオンチームであるSERT。その2チームが提携を組み、ヨシムラSERT Motulとして初年度の2021年にEWCタイトルを奪取したのだ。
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