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ベルリンのトラバント博物館 マニア垂涎の展示内容 希少車、変態車との出会い

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ベルリンのトラバント博物館 マニア垂涎の展示内容 希少車、変態車との出会い

希少車から奇妙なワンオフ車まで

トラバントを製造した会社はもう存在しないが、その遺産はベルリンの中心部にある小さな個人所有の博物館で保存されている。

【画像】マニア垂涎のトラバント博物館【Trabi Museum Berlinの展示車両を写真で見る】 全8枚

一般公開されているこの博物館(Trabi Museum Berlin)には、トラバントの原型となったAWZ P70をはじめ、歴史的に重要なモデルや、一風変わったワンオフモデルが展示されている。

AWZ P70(1955~1959年)

トラバントの家系図には載っていないようだが、AWZ P70はその設計に多大な影響を与えた。国営企業であるアウトモービルヴェルケ・ツヴィッカウがデザインし、セダン、ワゴン、そして希少なクーペ(写真)の3つのボディスタイルが用意された。

1955年に発売されたセダンは、木製フレームに「デュロプラスト」というプラスチックの一種を使ったボディパネルが採用されている。金属ではなく複合素材を使うという発想は、1950年代には極めて革新的なものであり、この技術を習得した自動車メーカーはほとんどなかった(多くのメーカーが挑戦していた)。

P70のエンジンは排気量690ccの2気筒2ストロークで、最高出力は22ps。1939年発売のDKW F8をベースに開発されたIFA F8のエンジンを発展させたものである。エンジンはキャリーオーバーのため製造コストを抑えることができたが、デュロプラスト製パネルは高くついた。

1959年に引退したP70を「成功」と評価する人はほとんどいなかった。しかし、このクルマで得られた教訓は、初代トラバントにも受け継がれている。それは、デュロプラストを金属の代わりとして量産車に使用すれば、経済的に採算が取れるということであった。

トラバントP50(1958~1962年)

1958年に発売されたP50は、「東ドイツといえばトラバント」と言われるルーツとなったクルマである。東ドイツ政府が国民のための自動車を作ろうとしたため、開発費、製造費、維持費が安価であることが要求された。BMWイセッタのような、いわゆるバブルカーを作る計画は早い段階で断念されている。

また、軽量化と金属不足の回避のため、早くからプラスチック製ボディパネルの採用が決定。キャビンを広くするために前輪駆動とされた。

1958年7月、P50の生産が開始された。トラバントの名はすぐに定着したが、P50の生産はホルヒ工場とアウディ工場が合併してできたザクセンリング・アウトモービルヴェルケ・ツヴィッカウという国営の自動車メーカーで行われている。

搭載された排気量499ccの空冷2気筒2ストロークエンジンは、当初17ps程度の馬力しかなかったが、後に若干パワーアップしたものがリリースされた。1960年にはワゴンタイプもラインナップに加わり、1962年には生産が終了している。

トラバントP60(1962年~1965年)

トラバントの第二進化型は1962年に発売された。595ccの空冷2気筒2ストロークエンジンを搭載し、最高出力は23psとP50よりわずかに、しかし確実に向上している。エンジンは引き続き横置きとされ、4速MT、前輪駆動方式を採用。価格も上昇した。

開発・製造コストの抑制が重要課題であったため、スタイリングを大きく変えることはなかった。見た目はP50とほぼ同じだが、トランクリッドにはエンジンが大きくなったことを示す固有のエンブレムが装着されている。セダンとワゴンがラインナップされ、商用バンタイプも用意されたが、生産台数はごくわずかだった。

P60セダンの生産は1964年に終了し、代わりに601の生産がスタート(その後30年近く生産され続けた)。ワゴンとバンはこの年に小さな改良を受け、1965年まで生産された。トラバントの初期型は、後期型に比べてはるかにレアな存在である。

フォルクスワーゲンのエンジンを搭載したトラバント

ドイツ統一後、旧東ドイツ国民は、安価でモダンな西側車に殺到するようになる。特に怪しげな通貨を有利なレートで西のドイツマルクに交換できたため、トラバントの販売は崩壊した。

トラバントは601の販売を維持するため、当時フォルクスワーゲンがポロに搭載していた水冷1.1L 4気筒の製造ライセンスを購入、従来の2気筒2ストロークから置き換えたのである。写真の601は、「1.1」の名を冠し、フロントのデザインを一新した最終進化型である。

1990年に生産が開始されたが、販売台数が激減し、翌年には生産が終了した。1990年当時、たとえ比較的新しいエンジンを搭載したとしても、トラバントを買おうという人はそれほど多くはなかったのだ。トラバントの生産台数は310万台弱とされている。

パンツァートラビ(The Panzertrabi)

この博物館に展示されている車両の中で、最も無名のものの1つがパンツァートラビだ。こちらは、BTR-152と呼ばれるソ連の六輪装甲兵員輸送車の縮小レプリカで、ザクセンリング・アウトモービルヴェルケ・ツヴィッカウ社がトラバントのプラットフォームを改造し、ホイールベースを大幅に延長して製作したものである。2台が製作され、陸軍で新兵の訓練に使用されたという。

戦車のような車体には、エンジン、トランスミッション、ブレーキシステムなど、トラバントの既製部品が隠されている。後部に追加された2軸目の車軸も601のものを流用している。フォルクスワーゲン・ゴルフとほぼ同じ長さにすることで、9人乗りのスペースは確保されたが、その分、重量は大幅に増加した。トラバントの615kgに対し、パンツァートラビは約801kg。速度はかなり遅かったと思われる。

トラバント・キューベルワーゲン

東ドイツ国家人民軍では、トラバントベースの派生型がいくつか使われていた。1966年に登場した「キューベルワーゲン」は、4枚の脱着式ドアとソフトトップを備え、リアエンドのデザインを変更したオープントップモデルである。

エンジンなど中身は標準的なトラバントと同じ。1978年には「トランプ(Tramp)」と呼ばれる民間向けモデルが生み出されたが、500台未満しか製造されなかったと言われている。

601の心臓部

1964年から1990年まで生産された601は、そのシンプルさが長寿の理由の1つであった。搭載される排気量595ccの空冷2気筒2ストロークエンジンは、コンパクトで頑丈、かつ洗練されていない。初期型の最高出力は約23psだったが、1969年には26psにチューンアップされた。横置きに搭載され、前輪を駆動する。4速MTのシフトノブはダッシュボードから突き出ている。

フェラビ(The Ferrabi)

この601に惑わされてはいけない。「フェラビ(Ferrabi)」というユーモラスな名を持つこのオープンカーは、フェラーリ512 TRを模したボディキットを装着したワンオフモデルである。

トラバントと現代のフェラーリ・モデルの共通点は、少なくとも「入手に時間がかかる」ことだろう。601の新車購入では、納車まで何年も待たされることもあった。

世界最速のトラバント

スーパーカーを思わせる見た目のフェラビだが、決して速いわけではない。栄誉ある「世界最速のトラバント」の称号は、レース用に大改造された601に与えられている。2気筒エンジンは約80psにチューニングされ、最高速度は約196km/hに達する。これは無改造トラバントの約2倍の最高速度である。

巨大なウィングや空力特性に優れたドアミラーを装着し、軽量化のために内装を剥がすなど、数々の改造が施された。また、ロールケージも装備されている。シュテフェン・グロスマン(Steffen Grossmann)という人物がこのマシンでラリーに参戦し、トラバントの最高速度記録を打ち立てた。

グロスマンの601はサーキットの内外で評判となり、玩具メーカーのレヴェル(Revell)社によってスロットカーとして商品化もされている。しかし、彼の記録は破られた。2010年には、愛好家のマイクとロニー・アーランドが601を改造し、235km/hを記録したのだ。

トラバントに関する数々のジョークの1つに、そのブレーキを揶揄するものがある。「トラバントを止めるものは何もない、ブレーキでさえも」……両名のために、それが真実でないことを祈りたい。

世界で最も高価なトラバント

2022年現在、601はコレクターズアイテムとして広く認知されているが、価値は比較的低いままである。写真のカラフルなユニバーサルモデルは、その数少ない例外の1つだ。

2001年、ドイツのテレビ番組の司会者カイ・フラウメ(Kai Pflaume)は、当時のフォルクスワーゲンCEOフェルディナント・ピエヒ(1937-2019)に、1980年代半ばに新車のトラバントを注文したのに、まだ受け取っていないことを告げる。その証拠に、注文書が残っていたのだ。ピエヒは、必ず納車すると約束した。

伝えられるところによると、ピエヒは低走行距離で水冷式の個体を購入し、ヴォルフスブルクのフォルクスワーゲン工場で直させたという。そして、この模様を描いたのはアーティストのクリストフ・ベルヘン。ピエヒは約束通り、自らトラバントをフラウメに贈ったのだ。

色とりどりのトラバントはドイツ国内を巡業し、その後オークションで4万2500ユーロという額で落札。世界で最も高価なトラバントとなった。このオークションの収益は、「A Heart for Children」というチャリティー団体に寄付されたという。

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みんなのコメント

4件
  • 紙でボディが出来てると言われてたし信じてたけど今ググったらFRPだと
    ただし、グラスファイバーでは無く綿ファイバーだったとのこと
    どっちにしても衝突安全なんかはほぼ無いわな
    この時代では当たり前だとも思うけど
  • 東ドイツ時代には「男の子が生まれたら注文しろ」と言われる程
    購入手続きから納車まで時間がかかったと言われている。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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