360モデナのメンテナンスをフェラーリ横浜サービス・センターに依頼するようになってから、都度、記事化している。自己負担であるからこそ伝えられる、正規ディーラーのリアルな情報を知って欲しいからだ。
とはいえ、どれほどの反響があったのか? 担当の高橋忠久工場長に訊くと「先日、記事を読まれたオウナー様のF430が入庫されましたよ」とのこと。さらに、「そのオウナー様は、練馬で銭湯を経営されています」と、述べる。
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【前回のふりかえり】Vol.37 半年間の通信簿と今後の不安
車検整備などを依頼しているフェラーリ横浜サービス・センターは、BMWなどのディーラーで有名なニコル・グループが運営する。“銭湯”と“フェラーリ”の組み合わせはとても興味深い。また、ボクの記事を読んで下さっていることへのお礼も述べたい。高橋さんに、取材出来ないものか訊ねると、「今、お客様に確認してみますね」と言い、その場で連絡された。
ボクがフェラーリ横浜サービス・センターを気に入っている理由はフットワークの軽さとアットホームな点だ。きっと、接点の薄いディーラーであれば取材のお願いなんかとても出来ないはず。高橋さんとは、クルマのことからたわいもない話まで、あれやこれや話せる。フェラーリの正規ディーラーなんぞ、とんでもなく敷居が高いのでは? と、はじめはボクも思っていたが行くたび、“誤った先入観だったなぁ”と、思う。思い込みは怖い。
フェラーリ横浜サービス・センターの高橋忠久工場長。長年、BMWのメカニックとしてもご活躍されてきた。なんと、BMWジャパン以前のバルコム・トレーディング時代からBMWに携わっていたという。約5分後、「『ボクなんかでいいの?笑』と、おっしゃられていますが、お引き受けいただけるそうです!」と、嬉しい結果が。「ポルシェ 911(997)ターボを購入しようと思っていたそうですが、ご縁がありF430をご購入されたそうです。人生初のフェラーリだそうです」とのこと。ボクとおなじく、フェラーリ・ビギナーでいらっしゃるようだ。
【前回のふりかえり】Vol.37 半年間の通信簿と今後の不安
997ターボと迷った結果10月末、指定された地下駐車場に向かった。なかに入ると真っ赤なF430があった。
「はじめ、997ターボ(中古)を購入しようと考えていました。中古車サイトで調べていたとき、ちょっと気になる997ターボがあったのですが、その個体を販売するショップにF430もあったんです」
360モデナの後継モデル「F430」(2004~2009年)。オウナーの村山晃一さんは話す。村山さんはご結婚前、911(930)SCのターボルックに乗られていたそうで、その思い出もあったため、当初はポルシェを購入するつもりだったという。
「997ターボの運転席にすわったとき、懐かしさが込み上げてきました。やっぱりこのポジションだね、と。でも、フェラーリの運転席に座ったら感動がこみ上げてきました。フェラーリは子どものときから憧れのクルマでしたが、触れる機会はほとんどなかったですし……」
【新連載:2桁ナンバー物語 Vol.1 春日部33のブガッティ EB110(前編)、(後編)】
「まさかフェラーリを購入するとは思ってもいませんでした」と、話すオウナーの村山晃一さん。村山さんは、俗に言う“スーパーカー世代”である。幼少期、自身のカメラでたくさんのスーパーカーを写真に収めていたという。また、漫画『サーキットの狼』の作者・池沢早人師さんが近所に住んでおり、サインをもらったこともあったという。スーパーカーのなかでもとりわけ、フェラーリが憧れのブランドだった。
「997ターボの方が、価格は少し安かったです。ただ、F430も購入可能な金額だったので思い切って買いました。購入した個体は、F1マチックのクラッチが交換されたばかりで、コンディションは良好でした。それにF430なら、カムシャフトの駆動がタイミングチェーン方式(360モデナやF355はタイミングベルト)だから交換する必要もほぼないので安心です」
ボディデザインはピニンファリーナが手がけた。搭載するエンジンは4.3リッターV型8気筒DOHC。最高出力490ps、最大トルク465Nmを発揮する。取材時の走行距離は1万9832km。訊くと、F430は村山さんの“趣味車”という。しかも、約30年ぶりの趣味用クルマである。
「結婚を機に、趣味車は封印しました。子供が4人おりますので、そのあいだは、トヨタ『ハイエース(ロングボディ)』のキャンピング・カーやスズキ『ランディ』など、日本製のワンボックス・カーを乗り継いできました」
結婚前はポンティアック「トランザム」やフォード「サンダーバード」、メルセデス・ベンツ「450SL」(ロリンザー仕様)、そして911SCなどに乗っていたという。
「当時は、クルマのために働いていましたね。それに父とは、『30歳になったら家業(銭湯)を継ぐ』と約束していましたので、それまではがむしゃらに働いてお金を稼ぎ、とことん趣味のクルマに費やそうと決めていました。仕事ですか? 佐川急便のドライバーでした。当時、ドライバーのクルマ好き同士でメディアの取材を受けたのが懐かしいですね」
ボディは2ドア・クーペのほか「スパイダー」と呼ぶオープンモデルの2種類。約30年ぶりに趣味車を復活したきっかけは、子どもたちの独立だ。
「末の息子が就職し、子育てがひと段落したので趣味車の購入を決めました。家族も、とくに反対はしませんでしたね。とくに末の息子は、ボクの影響か、すっかりクルマ好きになってしまい、今、アウディ池袋で新車セールスをしています」
F430の購入を、クルマ好きのご子息様はさぞよろこんだかと思いきや、「『フェラーリではなくアウディを買って欲しい』と、言っていました(笑)。ただ、私がフェラーリを所有していることで、お客様との会話が弾むケースもあるそうですから、営業には若干役立っているようです」とのこと。
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フェラーリも魅力的だけど銭湯も魅力的!せっかくの機会なので、村山さんが経営する銭湯「豊宏湯(とよひろゆ)」に場所を移し、話を訊いた。豊宏湯は西武池袋線「石神井公園駅」から徒歩5分のところにある。
村山さんが経営する銭湯「豊宏湯(とよひろゆ)」。西武池袋線「石神井公園駅」から徒歩圏の路地裏にある(住所:東京都練馬区石神井町3-14-8)。「私で3代目になります。祖父がはじめた豊宏湯は元々、浅草近くの三ノ輪にありました。しかし、第2次世界大戦の空襲で消失したため、ここ(石神井)を居抜きで購入し、経営を再開。現在にいたります」
なかに入ると、「これぞ銭湯!」ともいうべきレトロな雰囲気が漂う(現在の建物は1963年に建造)。番台には「普段、私の母や妻が交代で座っています。家族経営です」とのこと。天井の高い脱衣所には長年使われているマッサージ機やお釜型のドライヤー(女湯)もある。
脱衣所はレトロな雰囲気が漂う。昔ながらのマッサージチェアは今なお動く。お釜型のドライヤー(女湯)も問題なく使える。浴場の壁には立派な富士山(男湯)が描かれている。
「今はだいたい5年ごとに描き直しています。なぜなら、浴槽水に入れた塩素が気化し、壁絵が傷むからです」と、村山さん。以前は、塩素を入れる必要がなかったため、壁絵は傷まなかったという。衛生法が厳しくなった近年の影響だ。
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富士山が壁に描かれた男湯。浴場は天井が高く広々している。桶は富士めぐみ製薬が販売する頭痛薬「ケロリン」のロゴ入り。ただし、現在は無料ではなく有料という。浴場は隅々まで綺麗だ。訊くと、1963年以来、ほぼそのままという。なぜこれほど綺麗なのか? 村山さんは、「営業終了後、すみずみまで夫婦2人で掃除しているからですよ。ほかのメンバーですか? いいえ、いつも私ひとりです。人を雇っていてはとても経営が成り立ちません(笑)」と、述べる。ちなみに、使用する水は井戸から汲み上げたもの。お湯はガスではなく薪で沸かすという。
「井戸水を使ったり薪でお湯を沸かしたりする銭湯は、だいぶ少なくなってきましたね。だから、取材をうける機会もそれなりにあります。また、ファッション誌の撮影で使われることもあります。でも、クルマの取材で撮影されるのは初めてです(笑)」
「浴場を綺麗に保つのは大変ですが、やはりお客様に喜んでいただきたいので、徹底した清掃は毎日欠かせません」と、村山さん。外には湯沸し用の薪が積まれている。接点ができたことで次なるステップへ!?話を村山さんのF430に戻そう。フェラーリ横浜サービス・センターに愛車を預け入れたエピソードを訊いた。
「購入した直後の車検整備は、購入先の中古車ショップに依頼しました。ただ、1度は正規ディーラーに愛車を診てもらいたい! と、思っていました」
村山さんのF430は、社外カーナビゲーションが装着されている。メーターパネルのデザインは360とほぼおなじ。ただし、回転系のカラーはイエローに変わる。最初、フェラーリ横浜サービス・センターではなく、べつの正規ディーラーに依頼しようと考えたものの、「いきなり行っても相手にされないのでは……」と、不安がよぎり、やめたという。ほかのオウナーはどうしているのか気になり、おなじ駐車場にF355を停めている、見ず知らずの人に「整備はどこに出されていますか?」と、訊いたところその人は正規ディーラーではなかった。
「やはり正規ディーラーは敷居が高いのかな……」と、思っていた矢先、ボクの記事を発見したという。
【前回のふりかえり】Vol.37 半年間の通信簿と今後の不安
「まさか正規ディーラーにF430の整備を依頼するとは考えてもいませんでした」と、村山さん。「記事を読んで、フェラーリ横浜サービス・センターの存在を知りました。その記事内容を知人に話したら、ニコル・グループに知り合いがいるとのこと。その縁あって、高橋工場長を紹介いただき、F430のオイル交換を依頼しました」
はじめてフェラーリ横浜サービス・センターに行った感想はいかに? 「やっぱり緊張しましたね(笑)ここに入って大丈夫!? と。でも、対応はとても丁寧でしたから安心しました。ただ、見積もりがくるまでは緊張しました(笑)」
ステアリング・ホイールには走行モード「マネッティーノ」の切り替えスウィッチ付き。革張りのシートは360モデナのものとデザインは若干異なる。F430は、加速性能を高める「ローンチコントロール」付き。気になるオイル交換の費用は約3万円。想像より安価だったという。さらに、タイヤの劣化を指摘されたため、オイル交換とは別日に新品へ交換した。
「ミシュラン社製のタイヤに交換しました。タイヤ交換も、商品代含め想像より安価でした。しかも対応が素早く、消費税率アップまで期間がほとんどないなか、増税前にタイヤを用意し、交換してくれました。そのとき、購入時から気になっていた異音についても、原因が特定され、解決(部品交換)しました」
交換後の差は歴然で、「あまりにも走りが良くなったので、首都高速道路を意味もなく1時間30分も走ってしまいました」と、村山さんは話す。
「フェラーリ横浜サービス・センターの対応には大変満足しています。正規ディーラーにメンテナンスを依頼し、本当に良かったです。整備風景の様子を見学出来たのも、クルマ好きとしては嬉しいですね」
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次回車検整備もフェラーリ横浜サービス・センターに依頼する予定という。新たな出会いによって、F430を長く乗り続けられるはずだ。と、思いきや……、
「F430を長く乗り続けるかどうかは未定です。というのも、人生で1回は新車のフェラーリを購入したいからです。したがって、F430の整備を通し、フェラーリの正規ディーラーと接点を持てたのは、大きな意味を持ちます」
村山さんもボクとおなじく、正規ディーラーとの出会いによって、フェラーリ・ライフが充実したようだ。そういえば村山さん、「タイヤ交換のとき、こんな資料をもらってしまったんですよね(笑)」と、センター内に展示されていた、認定中古車(カリフォルニアT)の見積書を見せてくれた。
フェラーリの可能性を大いに拡げる正規ディーラー。まだ「敷居が高い!」と、思われている読者も、足を運べば “フェラーリ観”が大きく変わるかも。
文・稲垣邦康(GQ) 写真・安井宏充(Weekend.)
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